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44話 ホログラム

 ダイキチは峠の近くを上から見下ろしながら辺りを見回す。


「くそっ! 綾斗達が見あたらねえ! どこだ!?」


 眼下ではダイキチのことを敵とみなした兵達がこぞって弓を射ってくる。

 それを風で作った障壁で防ぎながらダイキチは辺りをゆっくりと走る。

 しかし綾斗達は見つからない。


「おい、清明! そっちはどうだ!?」


 ダイキチは自分の頭上に張り付いている鳥の形をした式紙にそう尋ねる。

 すると式紙から清明の声が発せられた。


「こっちもまだ見つからない! 他の式紙も総動員して探しているんだけどね!」

「くそっ! ここからそう遠くない場所にいるはずなんだがな!」


 彼らは綾斗達を見つけられないでいる。

 清明の声も当初とは違い、焦りを含んだものとなっていた。



 綾斗とサキは木が鬱蒼とした場所に逃げ込んだものの、複数の兵に追われていた。

 綾斗は息を切らせながらサキと大木の陰に隠れる。


「はあはあはあ」


(くそっ! さっきの奴らが応援を呼んできやがったのか! 大量に来やがる! 痛みが酷いし、めまいも……)


 するとサキが口を開いた。


「綾斗さん、大丈夫なの? ひどいけがなの。顔色も悪いし……」

「……大丈夫だ。これぐらい、なんともない……」


 サキにだけは心配をかけまいと、綾斗は笑顔でそう言った。

 しかしその顔には大量の脂汗が浮かんでいる。

 すると兵達の声が耳に入った。


「おい! あそこにいたぞ!」

「弓だ! 弓を射ろ!」


 その言葉を聞き、綾斗は内心で舌打ちする。


(ちっ! 弓がやっかいだから障害物が多いここに来たってのに!)


 綾斗とサキはその場から移動し、木の陰に隠れるながら逃げる。

 しかし子供であるサキを連れていることに加え、綾斗は手負いのため、彼らの足は遅い。

 すぐさま刀を持った兵達が追いついてきた。

 綾斗は痛む体を無視して全力で土を掬ったショベルアームを振りぬく。


「くそ! 目が!?」

「こしゃくな!」


 綾斗達はその隙に姿をくらますように大木の陰に隠れながら逃げる。

 すると別方向に弓を構えた兵達がいるのが見えた。


(やばい。射線が通ってる!?)


 そう気づいたと同時に矢が放たれた。

 綾斗は咄嗟にサキに覆いかぶさる。


「きゃっ!」


 するとサキが小さく悲鳴を上げた。

 その瞬間、綾斗の背中に、足に、複数の矢が突き刺さる。


「うぐっ!」


 たまらず綾斗は膝を折る。

 サキが叫んだ。


「綾斗さん! 離してなの! 死んじゃうの!」


 しかし綾斗は離さない。


(こうなったら、一か八かやるしかねえな。失敗したら更に大量の兵が押し寄せてくるが……)


 綾斗は必死にサキを守りながら口を開いた。


「死ぬつもりなんか、ねえよ……」

「でも、このままじゃ……!」


 サキは目に涙を浮かべる。

 そんな彼女を見ながら、綾斗はあらん限りの声を上げた。


「ホログラム、最大サイズで起動!」


 その瞬間、綾斗のスマートバンドから木々の上まで届くほど巨大なホログラムが空中に展開される。

 それを見て兵達は警戒心を更にあげた。


「き、気をつけろ!」

「何をしてくるかわからん! 早くあいつを殺せ!」


 その声に従って無数の矢が綾斗達に降り注ぐ。



 ダイキチ達は峠の辺りを見下ろしながら、未だに綾斗達を見つけられないでいた。

 するとダイキチの頭の上に乗っている清明の式紙が声を上げた。


「ダイキチ君! あれを!」


 式紙が飛んでダイキチの視線を誘導する。

 その先にはホログラムが宙に浮かんでいた。


「あれは!」


 ダイキチはそう叫ぶと同時に駆け出した。



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