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42話 それぞれの行動

 ツバキは綾斗とサキがダイキチの馬車に乗って峠に向かったのを見送っていた。

 そしてその姿が見えなくなると、ぬらりひょんを探し、話しかける。


「ひょん爺さん、今お話してもよろしいですか?」

「おお、ツバキさんかい。どうしたんじゃ?」

「実は綾斗さんが埋蔵金を探している理由を知らないか聞きたくて……」


 ツバキはなるべく表情がこわばらないように質問する。

 ぬらりひょんはそれに気づかず答えた。


「ふーむ、それはワシも知らんのう。すまんのう」

「いえ、それなら別にいいんです。ありがとうございました」


 ツバキはそう言って頭を下げて歩き去って行った。

 残ったぬらりひょんはそんな彼女の背中を見ながらポツリと呟く。


「なんだか事情がありそうじゃが、あまり触れん方がよさそうじゃのう」



 その頃、綱吉は兵達を率いて妖怪が住むといわれる森の前にやって来ていた。

 そこには家々や畑といった村があるものの、人は一人としていない。

 見た感じ寂れた場所だが、ごく最近までここで生活していた後がある。

 その地に降り立った綱吉は怒りをたたえて口を開いた。


「おのれ……これも妖怪の仕業だ! ここにいた者達は皆妖怪に殺されたのだ! 倉之助の言う通りだ。夜な夜な一人村人を殺しているというのはやはり本当だったのか!」


 綱吉は倉之助から聞いた綾斗が行った悪行についての話を思い出す。

 そして森沿いにずらりと並ぶ兵達に命令を下した。


「皆の者! 森の中にある妖怪達の里を必ず見つけ出し、滅ぼすのだ!」



 綾斗とサキはダイキチと分かれてからツツジ探しを行っていた。

 しかしその辺りにはツツジがたくさん生えており、目的の木はなかなか見つからない。

 綾斗が口を開いた。


「少し休憩するか」

「わかったなの!」


 二人はそばにある木の下に座りこむ。

 するとサキが何かを見つけたのか上を見上げて、あっ! と声を上げた。

 綾斗は彼女と同じように上を向く。

 するとオレンジ色の果実が生っているのを見つけた。


「柿だな。こんなところにもあるのか」

「取ってくるの! 少し待っててなの!」


 サキはそう言うとするすると柿の木を登る。


「気をつけろよ」

「大丈夫なの!」


 その言葉通り、サキは二つの柿を持って降りてきた。

 彼女は笑顔で片方の柿を綾斗に差し出す。


「どうぞなの!」

「ありがとさん」


 綾斗は柿を受け取り、サキの頭を撫でる。

 そして二人はその場に座り、柿に少しかじりついた。


「渋くないな。サキのはどうだ?」

「甘くておいしいの!」

「二人とも渋柿じゃないのは運が良いな」


 そうして柿を食べながら、二人はのんびりと休憩を楽しんだ。



 サキがいた村から里までは数日歩かなければ着かない。

 しかし森は村のそばから西に向かってまっすぐに伸びている。


 綱吉が連れてきた兵達は数が多いため、森に沿って並んでいた。

 そんな彼らに森へ入るよう命令が下った。

 数多の兵達はなだれ込むようにして森の中に進入する。

 しかしその森の中で一点だけ霧が濃い場所があった。


「おい、なんでここだけ霧が深いんだ?」

「先が見えねえな。引き返すか?」

「そんなわけにもいかんだろ」


 彼らはそんな会話をしながら霧の中に足を踏み入れる。

 そしてしばらくすると霧の中から出ることができた。


「ふう。やっと出れたな」

「ああ。……って、ここはさっきいた場所じゃないか?」

「そんなわけ……本当だ」


 彼らが見つけたのはこの濃い霧の中で迷わないように傷をつけた大木だった。



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