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36話 確保


 倉之助が地下牢から出ていってしばらくした後。

 駆け込んできた侍はそばにいる侍に自然な形で歩み寄った。

 そのことに気づいた侍が口を開く。


「どうした……がっ!?」


 しかしその直後、駆け込んできた侍に側頭部を殴打されて地面に倒れた。

 周りにいた侍達が一斉にその侍に注目するが、次の瞬間には瞬く間にその侍に気絶させられていく。

 牢獄の中にいたサキとツバキはその様子を呆然として眺めていた。

 すると最後の一人を気絶させた侍がサキに目を向けた。

 サキがツバキの腕の中でビクリと体を震えさせる。

 するとそんな彼女に向かって、侍が口を開いた。


「サキ殿、大丈夫でござるか?」



 倉之助が外に出たタイミングとダイキチが店の前の地面に降りるタイミングは丁度同じだった。

 馬車の扉が勢い良く開かれ、中から綾斗が飛び出してくる。

 綾斗の後ろにはぬらりひょん、そして数多くの役人と続いた。

 綾斗は倉之助の前に進み出て、口を開く。


「倉之助、お前が人身売買をしていることは知っている。お前を捕まえに来た」


 綾斗は五平の家から見つかった手紙を広げて、倉之助に見せ付ける。

 しかし倉之助はそれを見ても顔色を変えず、平然としたままだ。


「ふん、なんだそれは? そんなもの書いた覚えがないな」

「なっ!?」


 倉之助が大人しく捕まるとは思っていなかった綾斗だが、こうも堂々と言い逃れされると思っていなかったため驚きを露わにした。

 倉之助が口を開く。


「そんな偽物を用意してまで俺を悪人に仕立て上げたいのか? ご苦労なことだな」

「なんだと? これは捕まえた五平の家から出てきたものだ。奴はお前の指示でやったと言っている!」

「五平? 誰だそれは?」

「ふざけるな!」


 とぼけるようにそう言う倉之助に、綾斗は激高した。


「お前のせいで村人達がどれだけ辛い思いをしたと思っているんだ! 明日も生きられるか分からないほど困窮し、絶望の日々を過ごしていたんだぞ!」

「はっ! だから何のことだか分からんと言っているだろう!」


 倉之助は綾斗に向かって嘲るように笑う。

 次に役人に向かって口を開いた。


「それより綾斗を捕まえるのが正しいんじゃないか? こいつは妖怪を使って悪事を働く極悪人だぞ」

「はあ!? なんだそれは!?」


 倉之助の言葉を聞いた綾斗は目を見開いた。

 綾斗の脳裏に綱吉に追いかけられたことが思い出される。


「まさかお前が……」


 倉之助の口がいびつに歪み、弧を描く。

 そんな倉之助の言葉を聞いた役人達は、決定的な証拠が無いため困惑していた。

 そして綾斗が妖怪を連れていることは事実であるため、一部の役人が倉之助の言葉を信じ始める。

 綾斗は悔しそうに奥歯をかみ締めた。

 すると倉之助の背後、店の奥から役人たちに向かって声がかけられた。


「倉之助の言うことは全て嘘でござる。綾斗殿はこうして捕われている捨て人達を必死になって助けようとしていたでござるからな」


 そちらに全員が目を向ける。

 するとそこには一人の侍がサキやツバキ、捨て人達を引き連れていた。

 倉之助の顔が一瞬で強ばり、ワナワナと口を震わせる。

 侍が口を開く。


「倉之助が人身売買をしていたのは事実でござる。こうして捨て人達が捕われていたのがまぎれもない証拠でござる」

「な、な……」


 倉之助は何か言葉を発しようとしているが、声が出ないようだ。

 すると役人の一人が口を開いた。


「金人商店の主人、倉之助を人身売買を行った罪で捕らえろ!」


 役人達が一斉に倉之助を捕らえにかかった。

 たまらず倉之助が大声を上げる。


「ち、違う! これは何かの間違いだ! 俺はそんな事はしてない!」


 それに対して綾斗が呆れたように口を開く。


「今頃そんな嘘が通じるわけないだろ」


 次に綾斗は侍に声をかけた。


「もしかしてお前、半蔵か?」

「そうでござる。侍に変装して忍び込んでいたのでござるよ」

「すごいな、声と口調でしか半蔵ってわからねえよ」


 綾斗が半蔵をまじまじと見ながら彼とそう話している横で、役人がぬらりひょんに向かって話している。


「ひょん爺、この捨て人達は本当に任せていいのかい?」

「もちろんじゃ。この者たちはワシらが責任をもって里で預かるぞい」


 そういってぬらりひょんは監禁されていた人々を馬車に乗せ始める。

 するとその時、彼らの下に侍の集団が駆けつけてきた。


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