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悪夢

 川澄ゆきのの月命日に朝帰りをして以来、サトルは毎晩悪夢にうなされていた。

 最初に出てきたのは小室という少女。自転車に乗る彼女を通り様に切り捨てて、フラフラと自転車が倒れる光景が脳裏をよぎっていた。

 次は鈴木の妹である知恵。脚立にのって作業をしている彼女を切り捨てて、糸の切れた人形のように倒れる彼女を眉ひとつ動かさずに眺めていた。

 そして三日目の三井に続いて問題の四日目、金曜日の夜にとうとうその日がやって来てしまった。


「サトルさん……」


 口から血を吐いて倒れる姿はあの日の記憶と相違無い。だがひとつ違うとすれば、記憶の中にある暴走車の影も形も無いところだろう。

 そして両手にはずっしりとのし掛かる妙な重み。先の三日間よりもそれは重くのし掛かった。


「ゆきのぉ!」


 心のなかでいくら叫ぼうともそれは音にならなかった。何度も繰り返される七陰四乃太刀「四つ肺」によって彼女が切り捨てられる光景に、サトルの心は折れていた。

 己が手で最愛の人を切り殺す幻影を繰り返されればこうもなろうか。サトルはこの日、ろくに睡眠を取れなかった。

 ようやく深い眠りについたのは土曜日の夜。五人目の肝付という少女を切り殺したときには、夢の中の彼は冷徹に肉の塊となったそれを突き放していた。


「サトル」


 そんな彼のうなされる姿を毎夜確認するひとつの影があった。その人物は彼がうなされるようになる前から彼の様子をうかがっていたのだが、それに気づくものはいない。


「きょうは軽いようだけれどこれで五日連続。どうやら記憶が戻りかけているようね。このままだと不味いわ。そろそろ六人目を急がないと」


 影は不穏な台詞をポツリと漏らしてから、サトルの部屋を立ち去った。

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