デート①
メルが土井垣家に来て二回目の週末を迎えた。
先週と同様にメルは田中らとお風呂に入っていた。
休日テンションなのかイタズラにメルの胸を触ろうとする田中をメルは手で払い退けたりしていたのだが、そんな彼女に田中は勘繰りを投げつける。
「良いじゃない減るもんじゃないし」
「くすぐったいですし」
「まだ触っていないじゃない。もしかして、川澄くんにはもう触らせたの?」
「何でそうなるんですか」
メルは否定したが、傍目にはそう思われても不思議がない言動をメルはしていた。毎晩のように彼の部屋で聞き込み結果を纏めていたので、それを見ていた田中が逢い引きだと判断しても仕方がない。
「何もないのなら、毎晩ふたりでナニをしていたって言うのさ」
「ひゃ、やめれきらさい」
問い詰められて言い訳を考えている隙をついたのだろう。メルの薄い胸に届いた田中の指が彼女の木の実を弄んだ。
女の子みたいな甘い声で喘ぐメルを助けようと、鈴木と大洗は田中を止めた。羽交い締めにされた彼女の胸が揺れる姿はメルとは対照的であろう。
「やりすぎだぞ」
「悪ふざけにも程がある」
ふたりは田中を制すると、「お前が悪い」と彼女に反省を促した。
「だってさあ、隠す方も悪いじゃん」
「お察しのとおりナニするような関係だったら、それこそひけらかさないって」
「そうだぞ。みのりちゃんとは正反対のタイプなんだぞメルちゃんは」
「じゃあこれだけは聞かせて。明日は川澄くんとデートに行くの?」
「ええ、一応。なので皆さんとはご一緒できませんね」
「ほうら、やっぱり」
「それくらいにしろよ田中。まあ、そっちのことで相談があったら女鬼島さんもお姉さんにいつでも言ってくれ」
「それがいい。理恵ちゃんはカレシ相手にいろいろ経験済みだからな。そこにいる耳年増とちがって」
「その言い方は酷い~」
大洗がいう耳年増が田中みのりの事なのは言うまでもない。
彼女は関と恋人未満な関係であるが、表だってイチャイチャしたがる割には深い関係にはまだ至っていなかった。
この夜のやり取りで、他人には「自分と川澄が付き合っている」と受け取られていることにメルは初めて気がついた。
もっともそんな勘繰りをしているのは田中だけで、他は「伸展する可能性はあるが、関係が進まないにしても川澄ゆきのを引きずっていた以前よりは、川澄トモカズにはいい傾向」だと大人としてふたりの仲を見守るつもりでいた。




