僕は職を失うようです
「藤沢。お前にはうちを辞めてもらうことになった。」
「……へ?」
藤沢圭、人生最大のピンチです!
僕、藤沢圭は大手芸能事務所でマネージャーとして働いています。ずっと憧れてきたこの仕事もようやく板に付いてきたと思っていたのに…。
「何故ですか!?」
「実は…」
「俺の事務所にきてもらうからだ。」
「涼也さん!?」
いきなり現れたのは、僕が担当している斎藤涼也さん。彼は子役時代からずっと第一線を走り続けてきた、この事務所の看板俳優だ。幼い頃は天使のようだと言われていたルックスは、面影はあるものの、大人の色気に溢れていて、世の女性の心を鷲掴みにしている。主演作品も多くあり、見ない日はないと言われるほどの人気ぶりだ。
でも何で今涼也さんが?
「えっと、どういうことですか?
それに『俺の事務所』って…」
「実は涼也は俳優を辞めて事務所を設立することになったんだ。かねがね相談は受けていたんだが、話し合って今年いっぱいで引退という形になった。」
「え…」
「だからここ最近はドラマの仕事入れてなかったろ?」
「あ、そういえば…」
最近涼也さんの仕事内容が少し変わってきたとは思っていたけど、そんな理由があったのか。
「でも、それと僕がここを辞めなければならないことに何の関係があるんですか?」
「お前には俺の事務所で働いてもらうからな
」
……。
「…ふぇ?」
あ、間抜けな声が出た。
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