第6話
貴賓室では、ゆっくりと待つ羽目になった。
貴賓室では、外の飛行機を眺めるために、10メートルくらいある柱の間が一枚のガラスになっていた。
「確かに、贅を凝らして作られたようだな」
中家がボソッという。
誰が作らせたにせよ、もっと別に使うべきところがあるだろう。
そう言いたげだ。
どこかへ電話をかけていたフエルサは、それがどこかは言わなかった。
ただ部屋の中で、中家らを見張りつつ、大臣へと、おそらく電話をかけているのだろう。
時たま、大臣と名前を言わずに電話口で話しているのが聞こえた。
その声は、壁掛けの巨大なテレビによって時折遮られつつ、それでも断続的に中家には聞こえていた。
「皆さま、お待たせしました。小型機の準備が整いましたのでご案内します」
空港職員は、警備員のような制服だった。
ただ軍人らしく、胸には何かのメダルや勲章がつけられている。
「やっとか」
マキシム中尉は壁際で壁を背にして腕組みしたまま、眠るかのように目をつむっていた。
それが急に起きだして、ゆるゆると空港職員のところへと歩いていく。
「2機に分乗することになった。まずは組み分けをしたい」
マキシムを呼び止めるのは、今回の部隊長である中家だ。
「私が第一大隊、君が第二大隊のそれぞれ隊長とする。我々は5人だが、君らは10人だったな。君らから2人分けてもらいたい。それで第一大隊が7人、第二大隊が8人となるだろ。装置の類については君らのところで、他の荷物については我々でどうだろうか」
「多少の私物はこちらで。それに機中で必要なものも」
「いいぞ。それらは前提だ」
マキシムに中家がうなづいた。
「荷物は入れましたか」
二人そろって歩き出すと、さっそく空港職員に質問をした。
「いいえ。もうまもなく荷物の積み込みを開始します」
「見張りを何人か立てていたな。機内の確認もしていたはずだが」
今、貴賓室の中にはテック・カバナー総合軍事会社側が6名、手野武装警備側が3名だった。
北島、東部が機内確認を、テック・カバナー側と協同して行っている手はずだ。
「問題はないという報告を受けています」
マキシムがそう答えた。
「では職員さん、荷物の詰め込みが終わったら、また教えていただけますか」
「分かりました」
それでは、と敬礼して職員は出ていった。