エピローグ
「後処理は任せるわ」
武装社長はやはりちくわを食べつつ、別の出口から国防省を後にした。
中家は、持たされている携帯電話に通信が入っていることを確認すると、かけなおす。
「中家だ」
声に砂嵐のような雑音が入っている。
ジャミング装置が今も働いているからだ。
「北島です。そちらからの信号を受信しました。これよりジャミング展開を解除します」
「ああ、頼む」
少し、ほんの数秒ほど時間がかかり、それからクリアになった北島の声が聞こえる。
「展開終了。無事にジャミングの効果はなくなりました。また、テック・カバナー総合軍事会社の人員が保障占領の為に来ています。指示を請いていますが、マキシム中尉はいらっしゃるでしょうか」
「ああ、少し替わろう」
中家は近くでタバコを吸おうと場所を探しているマキシムに携帯を渡す。
「北島からだ。人員が保障占領のために来たから指示をしてほしいとのことだ」
「了解しました、替わります」
電話を受け取ると、玄関近くへと移動して、結局タバコを吸うのをあきらめたようだ。
「隊長、ですね。中家少佐」
国防大臣が、中家のところへと近寄る。
「今回はありがとうございました。ささやかですが、パーティーを企画しております。いかがでしょうか」
「お気持ちだけ受け取っておきます」
おや、という表情を大臣が浮かべる。
「いったん、仲間を連れてこないといけないので」
「ああ、そういうことでしたか」
断られたわけではない、と分かってホッとしたようだ。
「そうですね、2日後に伺うことでよろしいでしょうか。少なくとも手野武装警備側からは5人参加することになるでしょう。テック・カバナー側は聞いてみないと分かりませんが」
「何の話ですか」
中家が話をしているところにマキシムがやってきた。
「パーティーをしてくれるそうだ。どうする」
「仕事が立て込んでいるので、ここで失礼しようかと」
「仕方がないですね」
大臣が残念そうに言うと、それから大臣はSPに守られて歩いて行った。
その後、司法取引により罪を問われないこととされた条件として、メキシコから追放が命じられたバーラカルテルの残党は、手野グループの仲立ちによってテック・カバナーが運営している薬品会社へと連れていかれた。
彼らのうちテレモトに限っていえば、武装社長が直々に鍛えるといって日本へと連れていくこととなった。
麻薬カルテルの邸宅跡についてはいったん政府へと没収されたのち、テック・カバナー財閥が買い上げた。
ここに巨大な工場を立て、失業者や麻薬産業に従事している人らを雇い入れることにしたようだ。
1か月後、休暇も終わり、再び手野島の武装社長の社長室に、中家らはいた。
「前回は疲れただろう。休暇はしっかりとったか」
武装社長は、彼らとの特別会議室で、とりあえず冒頭ねぎらった。
「しっかりと取らせていただきました」
「そうか。では今回の仕事なんだがな……」
さっそく武装社長は話を始める。
これが彼らの日常。
武装社長の手足となって、世界中を旅している彼らの仕事。




