第25話
「それで、フランシスコ・バーラはどこにいる」
「その前に、アルトゥーロ・フエルサ・ドミニクという男を知っているか」
武装社長への問いかけであったが、反応をしたのはマキシムと東部だ。
「ここまで案内してくれた人だ。どうした」
「そいつが場所を知っている。なにせ、裏世界とのつなぎ役だからな」
マキシムが武装社長へと、これまでのいきさつを話す。
「……つまりは、そのフエルサていう男が、ここまでおぜん立てをしたということか」
「そういうことになりますね。裏で糸を引いているのはその男かもしれません」
「なら、指令は変更するしかないようだな」
武装社長がその場で東部へと命令を伝達する。
「フランシスコ・バーラ、アルトゥーロ・フエルサ・ドミニクの両名に対する捕縛を命じよう。特にフエルサが鍵のようだ」
「でしょうな」
無視をされて少しイラついた様子のテレモトが、なにやらつぶやく。
「君の処遇については任してほしい。手野グループで世話をしよう。君の部下ともども。麻薬を売るということではない、世話をしてほしい。一つ一つ学んでいけば、ゆくゆくは君にルートを任しても構わないだろう」
「薬品会社が文句を言うのでは」
テレモトが聞く。
「いや、薬品会社も手野グループにはあるからな。医療用の麻薬類も育てている。私からの紹介だといえば、拒否はされまい。が、その前に再び麻薬密売をしないように見張りをつけ、教育を施す。裏の道で、いつ死ぬかと脅える生活はいやだろ」
「……あんた、聞いていたのとはずいぶん違うんだな」
「一羽の燕を見たからと言って、夏が来たとは限らないぞ」
そうスペイン語で言ってから、武装社長は回線を切った。
真っ暗になった画面を見ながら、テレモトは感慨深げに、一筋だけ、ただ涙を流していた。
「……救われたという人は多い。だが、救われたと思うのではまだまだだ」
それに、東部が近づいて言う。
「いつ救われるのだ、今のこの感覚でなければ、いつ」
「自ら信ずるものができればだな」
ポン、と肩を叩き、それからマキシムと話し合う。
「どうします、隊長らに話しますか」
「そうだな、できるだけ出力上げて、放送しよう」
電波妨害もなくなり、どうやら通信は通じやすくなったようだ。




