第20話
15分ほどでまず酸素発生機が、さらに45分かけてコンプレッサーができた。
先にできた酸素発生機で、どんどんとプールに溜まっていた水を酸素と水素へと分けていく。
水素はいらない上に爆発する危険があるため、空気中へとそのまま捨てる。
酸素は、貯めるために建物にあった巨大なドラム缶を使った。
これらをコンプレッサーが出来てから接続し、車のエンジンで一気に穴の奥へと吹き付けていく。
霧は穴から吐き出されていき、すぐに透明な空気となった。
「よし、ほぼ純酸素だ。これから空気と混合していくぞ」
中家が指揮をとりつつ、酸素の割合を少しずつ下げるように、空気と酸素をコンプレッサーで混ぜるような回路を作る。
栓を使って、その割合を調整し、酸素がおおよそ24%程度になるように調整した。
「もうとっくに気づいているだろうに、攻撃してきませんね」
北島が中家に言うが、そうだなと中家が答えた。
「中で手ぐすね引いて待っていることだろう。だからこそ、一瞬でまず戦闘力を奪う」
そのためには作戦が不可欠だ。
それもこれも、どうやったら地下へ入ることができるかというところにかかっている。
「隊長、発破準備ができました。いつでも突入可能です」
イヤカムを通してマキシムが連絡を入れてきた。
「よし、そのまま待機。それと話したいことがあるから、マキシムは来てくれるか」
「了解、すぐ向かいます」
その言葉通り、走って1分ほどで中家のところにマキシムがやってきた。
「腹話術は使えるか」
「ええ、昔娘をあやす時に。今も時折、病院へ慰問を行う際の出し物として使っています」
「なら話は早い。これから作戦を立案する。ぜひそうしてもらえるとありがたい」
「了解です」
マキシムは、すでに唇が閉じたままのように見えた。
「さて、発破は合図だ。こちらの突入合図と同時に、発破をして鉄板を突き破り、そのままマーシャルで地下の周辺を制圧できるか」
「可能です。むしろ、マーシャルはそのような都市型ゲリラ戦にも向いているので」
暴動はどこにでもあり得る。
いわんやテロという状況では、建物の内部を制圧する必要だってある。
テック・カバナーではそういった状況も考慮に入れて設計していたようだ。
「中家隊長、地底を発見。深さ10メートル、奥に扉があります。レーザーは鏡ですでに無効化。地下に降りますか」
「頼む」
中家へ報告をした兵士の一人が、中家の回答をもってすぐに引き返していく。
重大な話があるだろうからということでイヤカムは使わなかったようだ。
「扉の向こうにはおそらくスイッチがある。地上がすでに電力途絶だというのに、レーザーがつきっぱなしということは、別系統の電力供給があるはずだ。お前ならどこに作る」
「そうですね、少なくともこの近くには作らないでしょう。隔絶されて、かつ誰にも見られないようなところ。それでいて、安全に供給が継続できるようなところ」
「この近くにそんなところがあるか。できればそこからの電力供給を断ちたい」
「いえ、この周辺はジャングルで、地盤は固く、適しているところはないと考えます。強いて言うなら、この岩盤の中に、発電システムを取り入れるぐらでしょうか」
「となると、やはり地下に降りないといけないようだな」
中家は嘆息した。




