第14話
「これで残りは地下となったわけだが、どうやって攻撃する」
間違いなくあることは分かっているが、どうやって地下に入るかがまだ分かっていなかった。
中家の言葉に、マーシャルを操縦していたテック・カバナー側の兵士であるブレダが話しかけてきた。
「超音波検査によって、地面の下が判別できます。少なくとも何があるか、あるいはないかについては分かります」
ブレダがイヤカムを通して言うと、マキシムが中家の顔色を伺いつつ、命令を出す。
「では早速はじめてくれ。範囲は庭中。最初は穴の近辺から始め、時計回りに回ること。庭の調査が完了あるいは空洞が発見された場合、即座に報告」
「了解です」
ブレダは技師としてここにきている。
暴徒鎮圧という名目で、マーシャルを開発したのも、ブレダの提案があったからこそだ。
マーシャルの護衛に3人の兵士をつけ、他はまずは上部構造物の調査、そして兵士の発見、捕縛、尋問を実施することとした。
制圧されたという報告を受け、それでも緊張状態を強いられている中家らではあるが、ここで建物の中に入ろうとは考えず、屋外で尋問をすることとした。
ただし、上空からの衛星に悟られないように、テントを使って現地指揮所を装う。
そこに1つの袋が運ばれてきた。
袋の中では罵詈雑言の声が聞こえる。
「猿ぐつわはしなかったのか」
中家が聞いたが、それをしようにもこの兵士は舌を噛むようなことはしないと判断したらしい。
少し甲高い声は、男ではない何かを感じさせる。
「開けろ」
すぐに中家が言うと、さすがに両手両足を縛られた女性が袋から取り出された。
しっかりと括られた彼女は、中家を見るなり呪詛の言葉を投げかける。
「すまんね、呪詛の類は効かないんだ。代わりに君の仲間が一人ずつ死んでいく。それでもいいならやり続け給え」
中家は言うと、拘束している縄を解かせた。
その命令に驚きつつも従ったところ、女性は逃げ出そうとする。
しかし、逃げ出そうにも逃げる場所はどこにもない。
下手をすると、仲間は誰も生き残っていない可能性だってある。
それをようやく理解したのか、あるいは周囲を屈強な男どもに囲まれているのが目に入ったのか。
すぐに逃げ出そうとはせず、中家をただひたすら睨みつけた。
「さて、君は誰かな」
中家はよいしょっと言って、近くにあった壊れた箱を椅子代わりにした。
周りはなおも銃を構え続けている。
彼女が一歩でもおかしな動きをした途端、ハチの巣にされるだろう。
「ブルパップ」
偽名だろう。
中家は思いつつ、それはお互い様だと考え直した。
「ブルパップ、少し聞きたいのだがね。フランシスコ・バーラはどこにいるか知っているかい」
「知らないね。誰だそいつ」
「そうか、知らんのか。ならしょうがないな。女性だし優しく聞こうかと思ったが……」
やおら中家が立ち上がると、近くにいた兵士から銃を借り、そのまま足元へ撃つ。
まだブルパップには届かない、が地面をえぐった衝撃と、巻き上げられた土は彼女へとぶつけられる。
「ま、君らのことだから、数々の拷問には耐えられるように訓練を受けていることだろう。だが、西洋の拷問以外に、各地方ごとに特色がある拷問がある」
そこで呼び出したのは、東部だ。
中家の横に立つと、ブルパップへと紹介をする。
「東部という。彼は特に古代中国の拷問法を数多く研究している。これから君にはそれを味わってもらう。なに、苦痛も過ぎれば快楽に化けるそうだ。そこまで持てば、の話ではあるがな」
任せるぞ、と言い置いてその場を去ろうとする。
「待てっ」
彼女は中家へ言う。
「どうした、中華拷問のフルコースはお気に召さなかったのかな。ならば、和風拷問の定食という選択肢もあるが」
「……言おう、奴の居場所を」
ブルパップが命が惜しかったようにみえる。
苦しそうに言うと、中家はにっこりと微笑んだ。




