第10話
中家らは、悪路を踏破することとなっていた。
それはもうわかっていたことなので、対ジャングル用装備を持ち込んでいる。
それぞれが鉈やロープを駆使して、どんどんと進んでいた。
「よし、休憩だ。5分」
中家が目標まであと少しというところで最後の休憩を入れる。
あとは少し、10分ほど歩けば目標となるバーラのところにたどり着く。
そうなれば、作戦決行をするだけだ。
「今のところ、トラップらしいものはないな」
「ええ、赤外線カメラやモーションカメラの類があるかと思っていましたが……」
ここまで頑丈な要塞だから、攻めてきたとしても問題がないと考えているのだろう。
中家が自説を披露しつつ、北島を手で呼んだ。
「斥候を頼めるか。周辺の状況を知りたい。対人地雷、あるいは堀があるかどうかといったところをな」
「了解です」
あっという間に木の上へと昇っていき、姿が見えなくなる。
ガササッ、ガササッと木から木へと飛び移っているようで、そのたびに騒ぎがする。
が、それもしばらくして聞こえなくなった。
「衛星通信はできるか」
「いえ、妨害されているようです」
それはしているようだ。
「妨害電波が出ているということは、これ以上の支援は受けることができないな……」
中家が考えつつ、突然の音に驚く。
立っていた兵はすぐに銃を構え、音がしてきた方を向く。
「北島です、ただいま戻りました」
その声に銃を下ろし、再び休憩へと戻る。
「どうだった」
「やはり衛星写真とは多少異なっています。見張りはずっといました。装備もアメリカ海兵隊レベルのものを用意しています。真正面からの攻撃では、おそらく負けることでしょう。塀は高さが5mはありますね。塀とジャングルの間がきれいに切り払われていて、空き地になっています。植物が生えてこないように、丁寧にコンクリートを打っていました。見つけ次第無警告で発砲してくることでしょう」
「そうか、ご苦労。休憩してほしい」
「はっ」
北島は敬礼し、他の日本人3人と合流すべく中家の前からいなくなった。
「彼はどういう訓練をしたら、あんなことができるようになるので」
思わず、マキシムが中家に聞く。
「北島は砂賀竜忍術の末裔だ。彼が当主ではないが、当主を守る4人衆と呼ばれるうちの一人だ。おそらく10人の完全武装の兵を相手にしても素手で勝つだろう」
要は、勝負を仕掛けるなという警告だ。
「そうなんですか、やはり忍者はいたのですね……」
それが何か嬉しそうで、楽しそうな顔をしているマキシムだったが、それも数秒。
キリッと顔に戻り、すぐに話し始める。
「アレ、使うので」
「持ってきたのだから使うべきだろう。ジャングルということで、多少のことなら発覚せずに済んでいるだろうが、ここからはそうはいかない。マーシャルを投入する。まずは壁に穴をあけなければならないな」
それは計画にある。
3か所に同時に攻撃を仕掛け、戦力を分散させている間に4か所目を発破。
そこからまずマーシャルを投入し、周囲を無人としたうえで兵を投入。
扉がないため、突入した穴を広げ、そこを橋頭保として制圧していくという計画だ。
何十人いるかわからないが、20人同時制圧可能なマーシャルであれば問題はないという判断だ。
地下への制圧作戦は地上部が完全に完了してから行われることとなる。
なお、陽動作戦として、国防大臣から作戦機を借り、周辺へと爆撃をしてもらうことになっている。
それが合図となり、壁の爆破を行う手はずだ。