幽霊の正体
犯人探しは手詰まりだった。
番長曰くここには私たちしかいないらしい。
「わかった」
エリカが声を上げた。
「犯人はペットのイヌね!」
エリカはニコリと笑って言った。
番長もニコリと笑って言った。
「エリカ、私は喘息持ちでイヌは飼えないんだよ。それにここには私たちしかいないと私は言ったじゃないか」
どうやら番長は喘息持ちらしい。
私はひそかに驚いた。
番長は完璧超人ではなかったのだ。
よく見るとヨシダくんが小さな目を大きく見開いて驚きを表現していた。
番長の「ここには私たちしかいない」発言は動物を含めてのものだったのだ。
そう、ここには私たちしかいないのだ。
つまり、リビングの入り口の扉の前に誰かがいたはずはないのだ。
もちろん、トイレや風呂場に隠れている人もいない。
となるとアレは現象として起こったと考えた方がいいだろう。
番長の言葉を思い出す。
ヒントがあるとしたら番長の言葉の中だ。
(「構わないよ、確かに犯人はそこにもあるかもしれないが見てもわからないはずだ」)
見ても分からず、そこにあるもの。
1.透明なもの
2.見えても当たり前すぎて気づかないもの
このどちらかが、アレの正体だ。
廊下には何か物があっただろうか?
視界に入って見え、そこにあって当たり前のものが。
いやなかった。
では答えは1だ。、、、っそうか。
あの2人が帰ってきたタイミングを考えればそれしかない。
私はアレの犯人を特定した。
ヨシダくんがこちらを見ていた。
…………
一階のリビングにみんなは集まっていた。
番長がもういいだろうというように頷いて口を開いた。
「では答え合わせをしよう、犯人は、、」
番長が間を伸ばして周りを見る。
私は立ち上がって言った。
「フジワラさん、これが犯人だね」
私は手を握り番長の前に突き出した。
「どれだい、見せてごらん」
番長が握った手を開くように促す。
私は握っていた手の平をひらいた。
手の中は空だった。何も入っていなかった。
「うん、正解だ」
番長が頷いた。
「これが正解?犯人はいなかったということですの!?」
レベッカが驚きの声を上げた。
「うーん、少し違うかな、だってここにあるでしょう、、、空気が。これが犯人だよ!」
私は言った。
「その通り、犯人はこの家の中の空気だったんだよ」
番長が語りはじめた。幽霊の正体をあばくために。この家に着いた幽霊を成仏させるために。
「まず1階には全部で4つの空間がある
・リビングのある空間
・トイレの空間
・風呂場の空間
そして廊下と玄関がある空間だ。
今回例の現象のカギとなる空間は4番目の空間、つまり"廊下と玄関がある空間"だ。
エリカとカズはこの空間を通って玄関にたどり着き、コンビニにおやつを買いに行った。
実はこの時、エリカが今回の現象の条件を整えてくれたんだ。
条件とは<僅かに開いたリビングと廊下をつなぐ扉>だ。
そして帰宅時、玄関のドアをカズが勢いよく閉めた。
この時、幾らかの外の空気がドアを閉じる勢いで"廊下と玄関のある空間"に流れ込んだ。
はじめより急に大きくなった空気は、廊下からリビングに向かって移動した。
ここまで言えばもうわかるだろう。
<空気>に押されて扉が閉まったんだ。
つまり犯人は空気だ」
番長の回答にみんなは息を呑んだ。
そして私を見た。
なんか恥ずかしかった。
こうして幽霊事件は幕を閉じ、私たちのパーティーはお開きになった。
キッチンは?
と思った方はいますか?
番長の家のキッチンはリビングの奥についています。
リビングのある空間の中にあるわけです。
次回は2018年3月7日投稿




