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be quiet  作者: 真咲 タキ
日常編
3/11

練習

他の方にも紹介して頂けたら幸いです。

 劇の練習を始めてから4日が経った。

 私達は終礼後、クラスに集まり劇の練習をしていた。

 台本にはナレーションのタイミングが書き込まれ、カナの手元にはナレーターのせりふが長々と書かれている。

 そう長々と、ナガナガト。

 カナの台詞を和訳するとこうだ。


「ある街に1人の少女がいました。その名はアンナ。アンナには2人の意地悪な姉と1人のいじわるな叔母がいました。彼女達はアンナにばかり汚れ仕事を押し付け、いつも街にくりだし遊んで暮らしています。これはアンナの復讐の物語です。どうぞお楽しみください」

「アンナはこうして王子殺害の罪を姉達にかぶせることに成功し、幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」


 時間にして合計30秒の出番だ。

 しかも登場は物語の最初と終わりだけだ。

 ダメだ、どう考えても短い、、、。


 いや、はじめから分かっていたことじゃないか。

 なんとか現実を受け入れて練習に集中する。


 台詞の暗記をしながら周りをぼんやり見ていると、思いのほかカズとエリカが好演技を見せ、見事なまでに犯人であるアンナ(役者は番長)のアシストを決めている。


 どうやら、ネズミに魔法をかけるマジックプレイにはまっているようだ。

 カズはカズを好きになる魔法でもエリカにかけているのだろうか。


 ヨシダくんは、うん、なんか棒よみで英語の台詞を繰り返している。

 お経でも唱えているようだ。

 まあ殺される王子の役だし自分にお経の一つや二つ唱える権利があってもいいだろう。



 しばらくすると番長が清々しいほどの笑顔を浮かべて言った。


「それじゃあ、いっぺん通しでやってみようか。まずはカナから、、、3.2.1」


 番長は1まで数えると右手で体の前の空間を縦に切り裂いた。

 始まりの合図だ。

 私はツラツラと淀みなく英語を話した。



 …………



 通しは順調に進んでいた。

 番長が姉達を陥れる台詞を話し、姉を演じるアナスタシアとレベッカが怒りの表情を浮かべ、番長にすがりつく。

 兵士に変身したネズミが姉達を押さえつけ、姉達を牢屋に運んだ。


 そして姉達は牢屋で命を絶った。

 死んだのは王子だけではなく姉達もだったのだ。

 少し過激な仕返しだが、因果応報とも言えなくはない。




 最後に天国にいる王子はどうしてこうなったのだと嘆くはずだった。

 しかし、最後の最後にヨシダくんがやってしまった。


「Why.....わいデイでゅどー such a thing?」


 おもいっきり噛んだ。

 というか舌が回っていない。

 あと少しで完璧だったのに。


 本当のしめは私なんだぞ。

 私はボソッと呟いてしまった。

「チッ、あと少しだったのに」


 そしてメンバーが集まり、最後に私の台詞を言おうとした。

 事件は起こった。


「あれ?ヨシダくんは?」

 アナスタシアが尋ねた。


 確かにヨシダくんの姿が無くなっていた。

 台詞を話し終えた後、ヨシダくんは天国背景セットを部屋の隅に運びに行ったはずだった。

 何かあったのだろうか。


 よく見ると教科書の入ったカバンが消えている。

 もしかして家に帰ってしまったのだろうか。


 まさか、私のつぶやきって聞こえてた?!

 まさか、まさか、まさか、


「ごめん、みんな私ヨシダくん探してくる」


 私は駆け出した。

 いつもボッチのヨシダくん。

 いつも静かなヨシダくん。


 小さなつぶやきだけで家に帰っちゃうほど脆い子だとは思わなかった。


 謝ろう。

 ヨシダくんに謝ろう。


 階段にたどり着き、私は二段飛ばしで階段を駆け下りた。

 階段を降りると、下駄箱のそばにあの小さな背中が見えた。



「ヨシダくん!」


 ヨシダくんが顔を上にあげ、私を見た。







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