晴れ舞台
ガヤガヤワサワサ、ガヤガヤワサワサワサワサガヤガヤ。
鳴り止まない騒音、
どうやって劇を始めたら良いのだろうか?
私はいくつかのパターンを考えてみた。
もっとも良いのが周りのみんなに嫌われずに、しかも劇の流れとしてスムーズにナレーションを入れることだ。
(パターン1)
騒がれていることを気にせず、ナレーションを始める
(パターン2)
ナレーションの前にみんなに静かにするように頼む
(パターン3)
先生を呼んで静かにしてもらうように頼む
私が思いついたのは全部で3パターンだった。
頭の中で実際にそれぞれのパターンのシュミレーションを行う。
もし私がパターン1をやったなら確かに周りから嫌な顔はされないだろう。
しかし、せっかくの劇の出だしがだいなしになってしまう。
それではこれまでの練習が無駄になってしまう。
これだけはイヤだ。
それではパターン2が正解なのだろうか?
パターン2をやった場合、観客のみんなに嫌われるだろう。
なんでお前に命令されなければならないのか、と。
今の楽しい雰囲気が台無しにされた、と。
学校生活において、みんなに嫌われることは大きなリスクだ。
番長ほどのスクールカースト上位にいなければ、イジメの対象になりかねない。
私のカースト順位は真ん中から少し下くらいだ。
いわゆる、普通な地位だ。
パターン2を選ぶなんて正気じゃない。
では残ったパターンであるパターン3しか私にはできないのではないか?
[(パターン3)
先生を呼んで静かにしてもらうように頼む]
確かに効果的だ。
しかし、リスクがないわけではない。
先生に何かと"言いつける"ことは時に生徒の気を逆なでするのだ。
しかし、これくらいなら言いつけたことにならないのではないか?
いや、人によるだろう。
例えば先生に駆け寄り、何事か生徒がささやく様子を見たとする。
そしてその生徒が居なくなった後、先生がこちら(見ていた側)に静かにするように言う。
これは言葉が聞こえていないがために見ていた側に想像する権利を与えてしまう。
中には「あいつなんか言いつけたぜ」と言いだす奴らもいることだろう。
どうしよう。
どれもやばい気がしてきた。
いっそのこと番長に助けを求めてしまおうか?
番長の方に目を向けるとヨシダくんと目があった。
逃げるなと言われた気がした。
逃げるな、かぁ。
どうすればいいの?ヨシダくん。
私はただのカナだよ。
なんの力も地位もない普通の子だ。
この状態でできることは番長のような人に頼ることしかないんだよ!
ヨシダくんが私を見つめていた。
ヨシダくん、あなたに私の何がわかるというの?
私はヨシダくんをにらみつけるように見た。
ヨシダくんの目は純粋な目だった。
私のことを信頼しているような目だった。
信頼か、、、。
私、みんなと劇の練習をするまではみんなのことなんにも知らなかったよなぁ。
きっと今騒いでいる子も本当は私の知らない優しさを持っているんだよね。
私はみんなを信頼していいんだろうか?
みんなの優しさを信じていいのだろうか。
再びヨシダくんを見るとヨシダくんは小さく頷いたように見えた。
霧が晴れた気がした。
…………………
私は舞台袖から歩き出した。
これは完全なるアドリブだ。
一発勝負だ。
どうなるかは私にはわからない。
しかしやってみればどうなるかは分かる。
私はみんなの優しさを信じた。
そしてヨシダくんを信頼した。
きっとみんな静かにしてこちらを見てくれる。
私は舞台に立って深々と頭を下げてお辞儀した。
これは舞台のはじまりの合図だ。
「静かにするように」という意味を持った無言の語りかけだ。
みんなの優しさがこの意味を汲み取ると信じて私はお辞儀をした。
会場のざわめきが次第に聞こえなくなり、完全に音が消えた。
私の語りかけにみんなが応えてくれたのだ。
胸が熱くなって涙が出そうになった。
だけど私は泣くのを我慢してナレーションを始めた。
最高の舞台だった。
私の後にカズくんや番長が続き、私達の劇は幕を閉じた。
演技は完璧で先生から満点をもらった。
「ヨシダくん、さっきはありがとう」
私は呟いた。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
………
第2問はいかがでしたか?
カナは全ての条件を満たしてこの問に答えてみせました。
あなたはカナと同じ状況に陥ったことはありますか?
ぜひこの方法を試してみてください。




