スターライン戦線2
シュバルツ帝国の軍隊の階級は、元帥を筆頭に、将官、佐官、尉官、准士官、下士官、下級兵と分けられる。また、37の部隊が存在しており、50名以下で形成されるのを小隊、そこから100以下を中隊、それよりも多い人数で形成される部隊を大隊と呼んでいる。さらに、中でも常人以外をかき集められて作られたのが特別小隊である。
特別小隊は4つ存在し、第1、第2と区別する。1,2は、主に戦場での応援。3は、本国の守護。4は、敵国での情報収集に徹している。小隊は、それぞれ2名の佐官を筆頭に、約40名ほどの人数で構成される。そして、その常人以外の基準であるが、亜人であるか、魔術行使が行えるか、超能力の類が行えるかという基準で行われる。また、基準として尉官以上の階級者が所属している。ちなみに、アイクの階級は少尉である。
「はあぁぁぁ・・・」
我が上官、バルド・レイリーフ中佐は深々とため息をついた。あの後、男の遺体をハール軍事行動支部局の職員へ引き渡し、アイクは中佐に事の説明をした。案の定生け捕りにできなかったことに頭を悩まされている。
「確かに昨日、貴様は休暇中であり、本来職務を全うする義務などない。さらに敵国スパイの撃退と聞くと素晴らしい功績だ」
「お褒めの言葉、もったいなく存じます」
当然褒めてなどいないのだが、皮肉めいた口調でアイクは返す。
「一応・・・・言い訳を聞いておこうか?」
さて、困った。当然、生かそうなどとは思っていなかった、などと口走れば即座にその巨体を以って一括されるだろう。正直、目の前に座るそれは先の狼男より怖い。
「奴はウルフでした。それに加え偽装式の拳銃に不覚を取ってしまいました。そのため、自分には生け捕りをすることは不可能と判断し、殺傷行為に至りました」
おや?完璧かもしれない。
「・・・解剖の結果、狼男は8分の1ハーフだった。仮に、肩を負傷していたとしても、十分殺さずに無力化することはこうだったはずだ。いや、可能でなければとっくに戦場でのたれ死んでいる」
そうでもなかった。
「まあいい。事の次第は後々の戦場で取り返せ。それよりも肩の方は大丈夫か?」
「はい。シャーロット医務官の回復能力で、傷はほとんど完治しております」
おやおや?思った以上にやさしい。まあ、直属の部下が休暇中にケガして帰ってきたのだ。流石にこの鬼上官も気遣って・・・・・いや、悪い予感がする。
「そうか、では喜べ。嬉しい話がある。我が第二特別小隊は、スターライン戦線の援護に向かうとこになった!どうだ少尉?待ち望んだ功績を得られるチャンスだぞ?明日にはハールを断つ!準備するがいい」
ニヤニヤとバルド中佐はアイクの顔を見る。スターライン戦線とは、シュバルツ帝国の隣国、フラン共和国との国境沿いで行われている戦線だ。ちなみに、昔その地帯の夜空では線状の星の群れが見えたことからついたそうだが、今では煙幕で全く見えない。今帝国が行っている中で1番大規模な戦いであり、正直生き残れるか怪しい。
「ええっと、実はまだ、肩の方が痛みまして・・・」
「先ほど、ほとんど完治と聞いていたが?」
しまった、そのための確認か!
「しかし、何故第2隊が?我らの戦力はほとんどが、中佐と少佐に偏っています。それよりも、尉官らが”優等生”で結成されている第1隊の方が妥当なのでは?あの規模の戦線であれば・・・」
正直、我が第2特別部隊よりも戦場で功績の多い尉官を固められた、第1特別部隊の方が明らかに戦力として優秀だ。第2体の戦力の偏りは大きい。佐官2人の戦力は、他尉官40名が一斉に攻撃してやっと打ち取れるか否かのレベルだ。まあ、少佐の方は戦闘履歴が少なすぎてあまりわからないのだが・・・
「ああ、それなら第1隊の招集もかかっているそうだ」
「へ?ちょっと待ってください。まさか、そんなにも戦況は厳しいのですか!?」
第1、第2の両方共だと!?スターライン戦線が始まったのは先週の話だ。一体、この短期間で何があったというのだろうか・・・
「いや、まだそんなに厳しいというわけでもない」
「?」
「ただ、実は先日オーガ隊の半数近くがスターライン戦線に向け進行中との情報が入った」