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6話

「遅かったわねぇ、カイル、心配したのよ?」


空が薄暗くなる頃に帰宅した俺を待っていたのは母親からの説教であった。

事情を説明する機会を与えてもらえず懇々と森の危険性と子供が外を1人で歩くことの危険性を説明された。

その間も俺は手に握りしめた金貨のことで頭がいっぱいで話しは右から左へ流れて行く状態だった。


「ふぅ…さて、お目当ての本はっと…」


俺は自分の部屋ではなく父親の部屋に行き本棚に手をかけ、まずは今朝方借りた本を返す。

そして、新たにお目当ての本を取り出す。

これはつい最近見つけた本なのだが俺の金を貯める目標に深い関わりを持つ本でもあった。

『魔法初心者の貴方へ』という題名のこの本は何を隠そうこの世界の魔法について記述された本である。

俺は早速この本を父の部屋の机の上に広げると蝋燭を持ってきて灯を確保する。

この世界には電灯なんていう便利なグッズはないため灯を取る時はこうして蝋燭やランプを使う必要があるのだ。

今はまだ火を灯す必要はないが暗くなればすぐに文字なんて見えなくなる。

ちなみに父親の部屋に勝手に入るのは禁止されているが商会の会長とした朝早くに家を出て行き毎日夜遅くに帰ってくる父はほとんどこの部屋に出入りすることはなく帰ってきても母と共同の寝室に直行することが多いのだ。


「さて、ゆっくり読むとしますか…」


俺はゆっくりとページを開く。

中を開いてまず思ったことは、外観は綺麗に保たれているものの、この本が使い古されてボロボロになっていることだった。


この世界の文字はミミズの張ったような文字でなおかつ謎の象形文字のような形でをしているが発音は日本語という不可思議理論で成り立っている。

日本人である俺としては感謝に絶えないが、読むにあたっては文字を1から覚える必要があり、文字を覚えるだけで俺はいわゆる赤ん坊と言われる時期の大半を過ごしたと言っても良い。


「まず、魔法を使うにあたって貴方は空気中から取り入れた魔素を体内で魔力に変換し体内に循環させる魔力操作の技術を習得する必要があります。って、まず魔素とはなんぞや?」


空気中に魔素なる物質があるのだろうか?

なんとも異世界ファンタジーな感じがしてきたな、実物を見ていないのでイマイチ理解はできていないが…

疑問は後にして俺は本をとりあえず読み続ける。


「魔力操作ができなかった貴方は残念ながら魔法の素養が無かったようですね、大人しくここであきらめましょう。魔力操作ができたそこの幸運な貴方は魔法をこの世界に授けてくださった知恵の女神メディアスに感謝しましょう。」


ふむ、この女神様とやらが魔法をこの世界にもたらしてくださったと。とりあえずファンタジー世界にしてくれてありがとうございます、っと。


「では、ここまできたら魔道書を購入し、貴方の扱いたい魔法を貴方自身が扱うことができるか試してみましょう。ですが貴方が扱いたい魔法の適性を貴方が持っているとは限りません、ここまできた貴方なら根気よく全ての属性を試してみると良いでしょう…魔道書、か、これがなぁ…」


そう、この世界では魔法を使えるようになるためには魔道書とやらが絶対に必要になるようなのだ。

この部分に関してはこの本を読まなくても聞こえてくるいろいろな人々の話からなんとなく知っていたのだが、問題はそのお値段だった。


チラリと市場でのぞいて見た値段はなんと1冊で5万Gもするのだ。

この国で平均的な定食屋さんでご飯を食べるとして一食50G、さらに宿を取るとして一泊素泊まりで100Gで済むのだ。つまり宿無し冒険者が最低限の生活をしていれば1日にかかる金は250Gで済む。

と、言うことは何もしなくても200日は暮らせるのだ。

そんな大金をつぎ込めるのは貴族や大金持ちだけで小市民の域を抜けない俺はこうして子供のうちからチマチマと稼いで魔道書を買おうと思っていたところに、手元にある金貨である。


「これがあれば2冊も買えちゃうよな?ふふふ、俺はなんの素質があるのかな〜?」


俺は手に持った金貨を眺めながら1人ニヤニヤしがら自分が魔法を使う姿を夢想する。

バタン

急に扉の開く音がする。


「おい、カイルなんの話だい?」


俺は不意を突かれてニヤニヤ顔のまま声のした方向を振り返ってしまう。


そこには、夜遅くにしか返ってこないはずの父親が立っていた。


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