3話
「ふぅ、ついたか」
俺は背に背負った背負子を地面に下ろす。
ここが俺が目的としたポイント。街道から少し入ったところにある薬草の群生地。街道から外れて森の奥に入ることはモンスターに襲われる危険性があるためほとんどの人は街道を歩く。
それに加えてこのウェルティア王国は小さな国で大した人口も無く冒険者の数も少ない。この森で得られる実入りも少なく基本的には誰もこの森に寄り付かない。
森と、一口に読んでしまっているが正しくは深緑の森と言うのが正式名称だ。由来は見ればわかるのだが森の木々全てが深緑色の葉を年中つけているのだ。
これが魔法的な要因かどうかは今の俺には分からないがこの世界にはこう言った不思議な場所がたくさんあるらしい。
「おっ!もう生えて来たのか早いなぁ」
俺はこの群生地を見つけてから全てを取り切らないように1日15束のみと決めて取っているが未だに100は下らない数の薬草がそこかしこに生えており、なおかつ俺が刈り取ったところも残してあった根の部分から成長して行き再び採取できるようになっているのだ。一度刈り取ってから再び生えるまでに2、3日必要だがそれでもかなり早いと言えるだろう。
この薬草は元の世界でいうならヨモギのような外観をしており匂いもヨモギそっくりだ。
なんでも怪我をした部分にこの葉をすり潰した汁をかけると怪我の治りが早くなるらしい。
実際に使ったことは無いがこのヨモギもどきが俺の貴重な収入源であるので日々感謝しながら刈り取っている。
「さて、っと帰りますか」
俺はいつも通り薬草を背負子に詰め込み、また本を手にまた来た道を戻る。
すると、
「いたいよぉ〜、うぇーーんっ」
「おい!早くなんとかしろ!」
「王女様に怪我させちまうなんて、俺達の首が飛ぶぞ!」
いつもの門のあたりで何やら騒ぎがか起こったみたいだ。何やら豪奢な馬車が止まっていて門番の兵士と馬車の御者の人だろうか?カチッとした服装をした人たちが声を荒げて騒いでいる。
特別関わる必要もなかったがどうしてもこの門をくぐらないと俺は帰れないわけだから、仕方なく騒動の渦中の門に向かいいつも通り素通りさせてもらう…
「おい!そこの薬草の坊主!止まれ!」
「はい?なんでしょうか?」
あー、やっぱり捕まるのね、なんともめんどくさい。さっきの話聞こえる限りだとこの国の王女様がらみでしょ?かなりめんどくさいじゃん。
「坊主、お前の背中に背負ってる薬草を俺たちによこせ。王女様の緊急事態だ!早く来い!」
「はい、分かりました。って、ぅぉっとと…」
俺は腕を無理やり引かれて馬車の中に連れ込まれる。
「いたいよぉ〜」
馬車の中では俺と同い年くらいの女の子が膝を擦りむき血を出していた。その痛みで泣いている彼女が、おそらくこの国の王女様なのだろう。
「坊主、緊急事態だ、後で国から金が出るから今すぐその薬草を全て俺たちに渡せ!断ったらどうなるか分かるな?」
俺は内心なぜ命令される必要があるのか、と反感を持ちながらも権力のある人に逆らってはいけないと素直に薬草を取り出して、男に渡した。
男が薬草を手に取るとそれを煩雑にちぎりやがて細かくされていく。細かくなった薬草を握り王女様の膝の上でその汁を搾ると、その汁が王女様の膝に垂れる。
緑の液体が垂れた部分から徐々にその擦りむいたと見られる傷口が治っていく。
「あー、いたくなーい」
王女様もなんとか泣き止んでくれたようだ。
なんだか俺は酷く疲れを覚えた。




