12話
「お父様、あの子は何をやってるの?」
「あやつは今から魔法を覚えようとしているのだよ」
俺は王城の一室にてガイツさんに魔導書の使い方の指導を受けていた。
そこには、先ほどの4人を含めさらに俺の叫び声を聞いて駆けつけたエリーゼ王女様も見えた。
小さいからなのだろう、何事にも興味津々なのだ。
「良いかい?本を開き、その最初のページに手を置いて魔導書自体に魔力を流すんだ」
俺はガイツさんに言われた通りに召喚魔法【亡者】を開き、手を置く。
そして、先ほどの魔力操作の感覚で魔力を流そうとする。
しかし、そうそう上手くは行かずその流れを外に出すことができない。
「流そうっていう感覚じゃないんだ、繋げる感覚と言うのかな、人によって違うから教えようがないな…」
ガイツさんも上手く行かない事に気がついたようだ。
ただ、そのアドバイスは役に立った。
繋ぐ。
だったら流す感覚ではなく、丁度小学生や中学生の頃に理科の実験でやったような電気回路の実験を思いだす。
あれも複数のものを電源から繋げていた。
その感覚。
俺の心臓を電源に、手を導線に、そして魔導書へと魔力を繋げる。
「うぉ?!」
すると、魔導書は薄ぼんやりと光を放ち俺の中に先ほどまでとは違う力が流れてくる。
「まさか、この作業もこんなに短時間で成功するなんてね…
そして、どうやらこの魔法に対する適性があるみたいだね」
どうやら俺は無事にこの召喚魔法について習得できそうだ。
「ずるーい!エリーゼもまほうつかいたーい!」
後ろでエリーゼ王女の声を聞き、振り返るとそこには驚きつつも呆れた顔をした大人三人衆がいた。
その後、無事に空間魔法についても適性を得た俺は、大人達に完全に呆れられつつもガイツさんに魔法についての指南を受けた。
魔導書に魔力を流すことで俺はどうやらその魔法に対する適性を手に入れたらしい。
なんでも、魔導書自体に魔力が充塡されており、その魔力を取り込んだことで適性を得るそうだ。
この取り込んだ魔力は体に馴染み、俺はいつでもその魔法を使うことができるのだ。
そして、肝心なのはここからだ。
魔法はどんな才能を持った人でも初めは初級の魔法しか扱うことはできない。
その適性を得た魔法を何度も使用し経験を積むことでしか、新たな魔法を覚えたり使うことはできないのだ。
火属性魔法を例にすると、初めはファイアボールという火の玉使った攻撃を行う魔法しか扱えない。
それを何度も使い、火属性魔法に対する適性が高まるとファイアーランスや、ファイアーウォールなどの魔法が扱えるようになる。
しかし、召喚魔法はその点において他の魔法とは大きく異なる。
召喚魔法で使うことのできる魔法を増やすには呼び出したモンスターを存在進化させる必要があるのだ。
この世界のモンスターは存在進化というものをすることによって自らを上位種族へと進化させることができるのだ。
この存在進化をさせるまでは同じモンスターを何度召喚しても新しい魔法は何1つとして扱えない。
これが、召喚魔法が嫌われる理由なのだ。
そして、召喚魔法。
これには覚えるべき魔法がない。
これは単純に自分固有の空間を生み出すだけの魔法であり、他の魔法とは一線を画す魔法なのだ。
ものを持ち運ぶと言う点においては便利な魔法ではあるが、攻撃に一切利用できないのに普通の魔法と同様のお値段であれば確かに人気も悪くなる。
こんな事を教えてもらい、俺はその日の魔法の指南を終えた。
その後は王城の中で豪華な夕食をみんなでいただいた。
普段は考えられないような豪華な料理の数々は現代日本の料理の知識を持っている俺をして、驚きにたえないものだった。
まずは七面鳥の丸焼き、それになんと全面に金箔が貼り付けられているのだ。
無駄に豪華。
それ以外の料理にも贅を尽くした物ばかりで俺は終始圧倒された。
流石にいつもこんな物ばかりではないだろうけどファンタジーな世界に俺は夢を感じたのだった。