10話
「その、召喚魔法【亡者】と空間魔法とは、そんなに悪いものなのでしょうか?」
俺は、目の前で顔をしかめる4人を見て、質問する。
「そうだね、これらの魔法は一般的に不遇とされる魔法の最たる例の2つと言えるだろうね」
俺の質問にファーガスが答える。
「うむ、これらの魔法は癖が強くてな、この2つの魔法の共通点はいずれもそれ自体では攻撃ができんという事だ」
「攻撃ができない、ですか?」
ファーガスに続いて説明してくれたレインさんに俺は質問を重ねる。
「まず、召喚魔法とは魔力を使ってモンスターを召喚する魔法でね、自分で攻撃することはできずその召喚したモンスター頼みってことなのさ」
ガイツさんも答えてくれる。
「で、空間魔法ってのはこうして魔力で自分固有の空間を築くことができるんだけど、荷物持ちに便利な程度で攻撃には向かないんだよね」
ソフィアさんが見本と言わんばかりに目の前で空間魔法を発動して見せてくれる。
すると、手元に30センチ代の穴が空き不可思議な空間が広がっていてその中に手を突っ込むと中から一本の立派な剣が出てくる。
ゲームでいうアイテムインベントリー的な利用ができるわけか。
つまり、この2つはあくまで補助的な魔法であって攻撃には向かない。
というわけだ。
「なるほど、で、そちらのお値段わ?」
「え?まさか、この2冊を買うのかい?」
ファーガスが驚いて声を上げる。
「はい、ものはなんでも試しです。今はどの道にしてもモンスターなどと戦うのは危険ですからね、もう少し大きくなるまではこの魔法で魔素の許容量を増やすことなどをしておこうかと思いまして」
俺の返答に大人4人が一様に考え始めた。
これは、俺の本心3割魔導書を買うための建前が7割と言ったところから来る発言だった。
少し成長が良いからと言ってもまだ3歳なのだ、武器を得たからと言って戦うには危ない。
それでも魔法は使って見たい。
この2点のバランスをうまく取ったのが先ほどの俺の発言だ。
何やら話し合っていたが、どうやら大人達の間でも意見がまとまったようだ。
「ありがとうございました!!」
店員の声が店内に響き渡った。
俺は結局2冊の魔導書を購入した。
レインさんが何やら店員を奥に連れ込んで話をしてくれたおかげで1冊で定価5Gだった魔導書が2冊で5Gと、実質1冊がタダというかなりな値引きをしてもらった。
「カイル、この魔導書はただ読むだけでは効果はないし、この魔法に対して素質があるとも限らない、それは分かっているんだね?」
ファーガスは最後まで俺がこの魔導書を買うことに反対だった。
そもそも俺がこの年で魔法の道に進むのも反対らしい。
「まぁ、カイルも子供だからこう言ったことに憧れがあるんだろうさ、それに俺たちが手の届く範囲では守って行くことに決まったじゃないか」
ガイツさんがファーガスを宥めてくれる。
「これでカイルも魔法使いになったわけだからな、しっかりと精進しておくことだ」
レインさんは俺が魔導書を買うことに最初から賛成だった。
「ところでカイル、お前は魔導書の使い方を知らんだろ?
俺の家がちょうど近くにあるから、そこでこいつらに教えてもらうといい」
「ありがとうございます」
俺は頭を下げてお礼を言う。
このまま、解散して家に帰ったところでファーガスはなんとなく教えてくれなさそうな気がしたからだ。
そして、俺たちはレインさんを先頭にして歩いってレインさんの家に向かったのだが、俺はそこで度肝を抜かれた。
到着した先は昨日、訪れたばかりのあの白亜の城。
イスト城だったのだ。
「お、お父さん、レインさんってこの城に住んでいるんですか?」
「ふふ、カイル、今に分かるかるよ」
ファーガスはニヤニヤ笑いながら答える。
城門の手前でレインさんがマスクを外して門番さんに声をかける。
すると、門番は大した確認もなしに俺たちを通す。
「さぁ、カイル、ようこそ俺の城へ!」
振り返ったレインさんの顔は昨日のあの国王様だった。