村の住民の姿
はしだ れんた(主人公)
少女
村の住民
あれから何時間がたっただろうか。
おれはじーっと扉が開くのを待っていた。
何度か住民が俺を殺そうとしにきた。だがナイフを突き立てる寸前で皆喪失したように帰っていく。
そう何十回も繰り返していると、お腹が減った。
飯はでるのだろうか。それで頭がいっぱいになる。
今もなお、腹の虫は鳴いている。
外が少し騒がしい。でも逃亡させないためだろうか窓がついていない。
換気も悪いためここはじめじめしている。
騒がしい声が大きくなる。酔った男住民が3人ほどやってきた。
そのときようやくわかったのだ。やつらの存在を。
酔っているからだろう。耳を隠さずピョコピョコさせている。
こいつらは亜人、獣人。つまり人ではない。
だとすれば今までの行為は納得ができた。
昔に人間が何かをしたのだろう。
「お前らのせいで、お前らのせいで……ペッ。」
やつらは酒の勢いにまかせ唾を吐き、挑発をしてきた。
でも耐えるしかない。きっとここの人たちはこれ以上のことをされてきたのだから。
3人はひどく暴れ続け、酒がなくなると帰っていった。
そしてまた扉が空いた。さっきの人たちかと思った。
だが次にやってきたのは、最初にいた少女だった。
「あの、食事ここに置きますね。」
少女は食事を俺のために持ってきた。
「ありがとう。」と受け取るとすぐに食べ始める。
少女は少し驚いた。
少し見た目に抵抗があるものの、味は悪くない。
「貴方って、この世界の『人間』じゃないよね?」
少女は確信を付いたように言う。
「そうだな。少なくとも、そこまですらすら日本語を話せる外国人は初めてだよ。」
「日本語?」
「俺たちの国では日本語と言うんだよ。」
「私たちと貴方が話せるのは、共用花の葉っぱを食べたからよ。」
と少女は葉っぱを見せる。
「わかったとは思うけれど、私たちは獣人。この葉っぱは獣人の葉。これを食べると私たちと同じ言葉で話せるのよ。」
少女は鼻をフフン!と鳴らしながら言う。
「ひとまずわかった、昔人間がお前たちになにかしたという事もな。」
「そう、知ってるなら話は早いわ。」
「あなた、私たちの傭兵にならない?」
どういうことだ?と言い出す前に少女は過去を振り返るように言った。
「私たち獣人族に人間がしてきた事を教えてあげる。あいつらは私たちを人とすら認めていない。
人間は獣人族を奴隷として扱った。
男は戦争で最前線へ立たされ、逃亡者は射殺
女は疲れた兵士達を癒すために体を強要される。逃げても射殺
子供だからといって容赦は無い。兵士として育てられるわ」
少女は手を握り締めていた。その握り締めた手から血が流れている。
「貴方、この世界ではない人。つまり敵にも味方にもなりえる。ここで味方にするのが吉。できなければ処刑される。」
傭兵になると言い、檻を開けさせて逃げるのも可能だな。そう考えていると
「ちなみに私たちに嘘は通じないよ。獣人族は嗅覚と聴覚は鋭いの。嘘をつくと臭いと心臓音でわかるわよ。」
確かにどこかで聞いたことがある。獣人は獣、耳と鼻が鋭いと。
「でもね、貴方だけは全くわからないの。だから捕まえるのにも時間がかかったし、この世界じゃないと判断した。」
なるほど、つまりここは本当に異世界らしい。
「考えても拉致がない。この世界について情報も少ないし、生き延びれるならそれにこしたことはない。」
俺は立ち上がり少女を見つめた。
「やっぱり、あなたは面白い。」
少女はクスッと笑う。
「私はアルマ。あなたは?」
「俺は橋田蓮太。」
「ふぅ~ん、ハシダレンタっていうのね。でもその名前も今のでオサラバね。」
「?」
「貴方は今から傭兵さんよ。よろしくね傭兵さん。」