三顧の礼はなかったけど孔明は配下になりました
私が張飛に孔明のことを話したら、張飛から話を聞いた劉備は興味を持ったみたいで、既に仕官して来ている徐庶から話を聞いたみたいですね。
まあそれはいいのですが、劉備が孔明に会いに行くのに関羽と張飛に他に私も連れて行く事になったみたいです。
「なんで私まで行くことになったんですか?」
疑問に思った私は張飛に聞いてみました。
「そりゃお前言い出しっぺが責任持ってついて来るのは当然だろう?」
なんて言っていますが、実は私と一緒にいたいだけじゃないかという気もします。
ま、たまにはそばに居てあげないとすねますし、そう思ってるなら嬉しいかな、なんてね。
諸葛と言う家系は士大夫の家柄で、父の諸葛珪も結構高い地位を持っていました。
ただし彼は孔明が幼い頃に死んでいますが。
士大夫と言うのは一種の特権階級で貴族のようなものでしょうか。
士大夫の家の子供は、幼いころから高度な教育を受け、国家のために働くことを期待されていました。
因みに孔明や魯粛は元は陶謙が治めていた徐州に住んでいました。
陶謙は前半生は有能な軍人で北方で烏丸や鮮卑と戦ったり、涼州の韓遂の反乱を鎮圧したり黄巾賊をいち早く武力で鎮圧したりしていました。
しかし、曹操と敵対した頃には権力に狂っており、結果として曹操の父や弟を殺して徐州の大虐殺を招いています。
孔明は、その虐殺から母や姉や弟共に徐州から逃げ出して荊州に向かい、叔父の諸葛玄を頼ったのですね。
その諸葛玄もゴタゴタに巻き込まれて殺されますが、その時結構な額の遺産を孔明たちに遺してくれたので、その後孔明は働かずに暮らしていたと言われています。
孔明は個々の学問を細かく覚えるよりもあらゆる学問の概要を押さえることに重点を置きました。
この時代は専門の学問を修めるのが普通だったので孔明は全く評価されませんでしたが、学友の崔州平と徐庶だけは彼の才能を見抜いたと言われています。
彼には妻がいて地元の名士・黄承彦の娘ですが、黄承彦の妻は蔡瑁の長姉であり、蔡瑁の次姉は劉表の妻でもありましたし、孔明に並び立つと言われた龐統も親戚ですね。
さて、劉備は易者を呼びつけ、諸葛亮孔明に会える日を占ってもらい、吉日を選んで孔明の庵へ向かいました。
劉備、関羽、張飛と後ろに私にを載せた馬でポックリポックリと孔明のいる庵へ向かいました。
諸葛亮の住む庵は竹林に囲まれ、小川があり、水車が廻っているところにありました。
そして劉備が庵の門を叩くと、下男らしい男が中から現れました。
「関羽・張飛・夏侯夫人、
絶対に失礼に当たることのないようにしてくれよ」
「うむ、わかっています」
「勿論わかってるぜ」
「分かりました、私たちは余計な口を
挟まないようにした方がいいですね。
「うむ、そうしてくれ」
そして劉備は下男に言いました。
「新野の劉備が先生にお目にかかりたくて、まいりました。
そうお伝えください。」
下男は軽く頭を下げて言いました。
「分かりましたしかし少々待ち下さい。
先生にお伝えします」
そして彼が中にはいってしばらくするとやがてスラリとした長身の男の人が出てきました。
劉備、関羽、張飛は3人揃って挨拶をし、私も慌ててそれに従いました。
孔明らしい男は微笑んで挨拶を返しました。
「私につかえてくれた徐庶の話を聞いてこちらまで参りました。
新野の劉玄徳ともうします」
「これはこれは劉玄徳殿。
このようななにもないところへわざわざ
足を運んでいただくとは、申し訳ございませんでしたな。
どうぞ、皆さんお入りください。」
「では、失礼致します」
私たちは庵の中に案内され孔明の奥さんらしいかたが私たちにお茶を入れてくれました。
なるほど、お金持ちであるというのは本当のようですね。
「さて、劉玄徳殿。
貴方が気にしておられるのは曹操と劉表についてでありましょう」
劉備は頷きました。
「うむ、2年前には信じられぬことだが曹操は袁紹を
討ち滅ぼすのはもうそう遠くないと思う。
そして北方を統一した後にここに攻めてくるだろう。
だが劉表殿は今のうちに袁紹に協力し曹操の
裏を突いて攻めることはしないようだ」
孔明もうなずきました。
「そうでありましょうな。
劉表の戦力は主に蔡瑁・蒯越・蒯良などの地元豪族ものであって
彼の直属兵は少ない。
故に劉表の意のままに動かぬのです。
そして劉表は孫権とも対立しているので迂闊には動けません。
しかも劉表の後妻の蔡夫人は、劉琮を産んでおりますから
蔡瑁は外戚でもありますな。
そして蔡瑁と曹操は旧知の間柄。
彼等は劉表に曹操への降伏を進言しているそうですな」
この言葉に劉備は驚いたようでした。
「なんと?!」
孔明は冷静に言葉を続けます。
「劉表はもはや高齢で病気がち、もはや余命は長くないでしょう
そうなれば彼等は劉琮を傀儡に仕立て上げ、曹操へ降伏し
その時に長男劉琦とあなた方を曹操への手土産とするでしょう」
ふーむ、ただの病気であればともかく老化は私にもどうにもならないですね。
劉備は孔明に聞き返しています。
「つまり、蔡瑁などから見れば我々は目障りな存在ということですか」
「ええ、しかし、劉表の手前表立っては言えない。
彼等はただの豪族ですからな」
「では、我らはどうすればよかろうか」
劉備の問いに孔明は
「今の荊州は人がいない訳はありません。
しかし、流れ込んで来た人間などには戸籍がない。
なので、劉表に進言し、在住する人民を調べ戸籍につくようにさせ、
田畑をたがやさせるとともに軍隊を徴集させるように
すればよいでしょう。
そうすれば直属の軍が編成できましょう。
また、蔡瑁に宴席に呼ばれたら警戒した方がいいでしょう。
その場で貴方を暗殺するつもりであるでしょうから。
その時に逆に蔡瑁や蒯越・蒯良を打ち取り、
荊州の軍権を握ってしまうのです」
劉備が困ったように言いました
「しかし、それでは劉表殿を裏切ることになるのでは」
孔明は静かにいました。
「ならば曹操を裏切らずに曹操とともに戦っていればよかったのです。
貴方は誰かの庇護下に入り、その誰かが没落しそうになると裏切って
他の誰かのもとに走り続けている。
では曹操から逃げてここに来たのちは
劉表の元から逃げて孫権の下にでもつきますか?」
孔明の言うことは事実であり本来ならこのあとに劉備が取る行動です。
そして最終的に孫権を裏切ったからこそ関羽は荊州で死んだのです。
「むむ……」
「ここで何もせず、流されるままであるならば
貴方はその程度の人ということでしょう」
「先生の意見はありがたく受け取りました。
蔡瑁や蒯越・蒯良の動きを見て
我らに害を加えてくるのならば
逆にこれを打ち取りましょう。
どうか私のもとで天下万民の安泰のために
働いてほしい」
孔明は暫く考えていました
「劉備将軍の志が何であるか知ることができました。
天下万民お安泰は私の望みでもあります
ならば将軍の望みを叶えるため、
私は貴方に今日より仕えることにいたしましょう」
「ありがとう、そしてこれからよろしく頼む」
「ええ、共に戦いましょう」
こうして孔明は劉備の元へやってきたのです。
そして劉備は孔明の進言を劉表に進言しました。
私は城に戻ってきて徐庶に有った時に不意に思い出しました。
「あ、そういえば徐庶殿の母上はどちらにいるのでしょうか?」
徐庶は首を傾げて答えました。
「豫州で暮らしていますが」
私は真面目な顔で彼に言います。
「では今すぐ母上をこちらに読んだほうがいいと思います。
曹操が貴方の母などの家族を捕らえて貴方を呼び出そうとするかもしれません」
彼はふむと考えたあと。
「たしかにそうかもしれません。
早めに家族をこちらに呼び寄せるとしましょう」
こうして徐庶の母などの家族は荊州へ移動してきました。
「これで彼がここから立ち去る可能性は低くなりましたかね」
劉備のもとに軍師や文官が務まる人間は少ないですからね。
彼がいなくなるのは痛いです。