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建安3年(198年)呂布の娘・呂姫との出会い

 私は藤田恵美ふじためぐみ、外科医であった母に憧れ医大に合格し、無事卒業して女医にはなれたものの医療の製薬会社との馴れ合いなどのその実態に失望し、病院をやめ、鍼灸や温熱療法、びわの葉療法などの東洋医学を学んでいました。


その日、私はびわの葉療法を行っている道場へ向かうために、車を運転していました、川の土手沿いの道を走っていると、突然ハンドルとブレーキが効かなくなりました。


「ど、どうして?」


 私の乗った車はガードレールを突き破り川へ転落、車に閉じ込められ、私の意識は暗闇に飲まれていったのです。

・・・

 目が覚めた時にぼやけた視界に写ったのは全く見知らぬ木の天井でした。


 そして狭く固い寝台の上に横になった私を覗き込む男性の顔がありました。


「うむ、よかった、目覚めたか」


 えーと、誰でしたっけこの方は……ああ、思い出しました。


「ご心配をおかけしました父上、もう大丈夫でございます」

・・・

私の名前は夏侯月姫、夏侯淵の妾の娘として生まれた私は、正妻に疎まれ父上や正妻のいる屋敷とは違う粗末な屋敷で母と一緒に暮らしています。

父夏侯淵の正妻は曹操の妻の妹ですが、母は身分が低かったのが原因でしょう。

劉備の妻である甘夫人と糜夫人のように正妻と妾の仲が良い例もありますが、どちらかと言うとそれは少数でしょうね。


 飢饉の中で夏侯淵は自分の幼い子を捨てて、死んだ弟の娘を養育したという話になっていますが、実はその娘は実の娘では有ったのですが、妾の娘だったのです。

私は病弱な母を助けるために華佗に弟子入りをして医学を習っていました。


 しかし華佗は診察中に女性の体を必要以上に触ったと訴えられて投獄され処刑されたのでした、

鍼灸などの手技を行うさいには仕方ないとは思うものの、真実はその訴えた女性と華佗本人しかわかりません。

しかし、それは結局のところ曹操の侍医である華佗の名声を妬んだ他の医者による陰謀であったことがわかったときは既に華佗が死んだあとでした。


「神医といわれた方にしては情けない罪状ではありますけどね……

 自分より技術のある医師がいることがそんなに目障りですか……」


 華佗の死後、華佗を貶めて侍医になったもののそのものには曹操を治すことができず、陰謀がバレて処刑され、最終的には華佗の弟子である私が曹操の病状を見ていました。

頭痛の発作を治める鎮痛の薬を懐に忍ばせて、発作が起きたら彼に飲ませるようにしていました。

今曹操に死なれる訳にはいきませんからね。


「お前はよく気が利くな、成人したら俺のもとに来い

 なんなら何か一つ願い事を聞いてやるぞ」


 まだ未成年で親族の娘に手を出そうとするのはどうなのでしょう。


「では、いまその権利を使わせていただきます。

 私は私が認めた男と結婚したいのです。

 どうか認めていただけますか?」


 曹操はハハと笑い


「うむ、よかろう、だがろくでもないやつなら俺が許さんぞ」


 そういって私は成人したら早々で曹操の後宮に入れられることを逃れたのです。

因みに現在の居住地は豫州沛国譙県ですね。

・・・

「崖から落ちたのでしたね、たしか」


「うむ、そうだ、あまり危ないことはするな」


「申し訳ありません」


 私がうつむきながらそういったあと父は言いました。


「あまり来れずにすまんな」


 私は首を横に振りました。


「いえ、あまり来られても正妻様の

 私達へのあたりがきつくなるだけかと思いますので」


 父は苦笑いをしていました。


「で、今から呂布の一族が処刑されるが、来るのであろう」


 ええと、そんな話になっていたのでしたか。

となると今は建安3年(198年)ですね。

特に処刑される姿を見たいとは思いませんが、いっておいたほうが良いのでしょう。

この時代の処刑というのは庶民のうっぷんを晴らすための娯楽の一つでもあったのですから。


「はい、参りましょう。」

・・・

 最初に曹操の前に引き出されたのは、陳宮でした、彼は呂布の軍師として活躍していましたが、もともとは曹操の下にいたのです。


「お前ほどの男が、何故この様な事になったのか?」


 曹操が陳宮に聞きました。

それに対して陳宮は呂布を指して


「この男が私の言う事を聞かなかったためにこうなったのだ

 そうでなければきっと立場は逆であったろう」


 と答えたのです。


「なるほど、お前らしい言い草だ」


曹操はその言葉に頷いていいました。


「お前は仕えるべき主を間違えたというわけだ。

 ならば、我もとに戻り、前のように俺に仕えよ、公台」


 だが陳宮はそれを断りました。


「今更だな、早く殺せ」


そう言ってうつむきました。そこへさらに曹操は


「残された老母や娘はどうするつもりだ」


と尋ねると、陳宮は


「天下を治める者は人の親を殺したり、

 祭祀を途絶えさせたりしないものだろう。

 何れにせよ我が母と、娘のの生死は貴方の手中にあり、私にはない」


その言葉を聞き曹操は説得を諦めました。


「わかったお前の母の面倒は俺が死ぬまで見てやるし、

 娘は良縁を見つけて嫁がせることにする」


「感謝するぞ、孟徳」


 曹操は、陳宮の姿を見送り、刑場にて陳宮は首をはねられました。

そして曹操は約束通り陳宮の老母ら家族を引き取って厚遇し、娘も嫁ぐまで面倒を看たのです。


陳宮の首が置かれた台の上には、高順の首がすでに掲げられていました、高順は主君たる呂布への忠誠を最後まで貫いて処刑されたようでした。


 次に、引き出されたのは呂布でした。

彼の体は、太い縄できつく縛られていました。

呂布は


「せめてもう少し緩めてくれんか縛り方がきつすぎて痛い」


と言う言いましたが、曹操はせせら笑い


「悪いがそれは無理だ、虎を縛るのにきつくしないわけにはいかないからな」


 と答えたのです。


呂布が


「では、孟徳、お前が頭を悩ませていたのはオレ一人だろう。

 その俺がお前のもとに降伏したなら、

 俺たちにかなうやつはいないということだ。

 孟徳が歩兵を率い、俺が騎兵を率いれば、

 もはや天下の平定は容易だ」


 といったのです。

曹操もそれに少し心を動かしたようでした、彼は有能な人材をかたっぱしから取り込むことが好きですからね。

しかし、劉備が曹操に諌めるように行ったのです。


「孟徳殿、彼の仕えた丁原と董卓の運命をお忘れかな?」


曹操は少し残念そうにいいました。


「ふむ、玄徳の意見ももっともだ」


 兵士たちが脇を固めて、呂布を立たせ、刑場に引きずろうとしました。


「ちょ、ちょっと待ってくれ、一番信用できねえのは玄徳お前だろうが!」


劉備は曹操に聞きました。


「果たして私と彼とどちらの言葉を信じるのですか?」


 萎れに対して曹操は


「うむ、いささか惜しいが玄徳の言うことは最もである」


「くそ……ならせめて俺の妻や娘だけは助けてくれ、頼む」


その言葉に曹操はうなずきました。


「わかった、お前の妻子に面倒は私が見る」


 呂布はその言葉を聞くと諦めたのかうなだれ、刑場に上がり、

絞殺されたのでした。


私はその言葉を聞いて父に聞きました。


「呂布の娘はどうなるのですか?」


 父は首を傾げ


「ふむ、確か呂布の娘はお前と同じ年だったな。

 孟徳殿が面倒を見てそのうち誰か

 適当なものに下賜されるのではないかな」


 それは可愛そうです、私と同じ年齢で私と同じように勝手に

嫁ぎ先を決められてしまうなんて。


「孟徳様にお願いして、その娘を私の侍女として

 働かせることはできませんでしょうか?」


「ふむ、まあ私が言えばできぬことはないと思うが」


「では何卒お願い致します」


 私の必死な様子に父も心を動かしたのでしょう。

父が曹操に掛け合って、呂布の娘を私に侍女として使えるようにすすめてくれたのです。

後日彼女は私の家にやってきました。


「貴方が私の命を救ってくださたっとか。

 ありがとうございます。」


 呂布の娘は間近で見てみてもごく普通の女の子です。


「いいえ、救ってくださったのは孟徳様よ。

 今日から一緒に住むことになるしよろしくお願いしますね。」


 彼女はペコリと頭を下げました。


「はい、こちらこそよろしくお願いいたします」


そしてその夜私たちは同じ寝台で一緒に寝たのでした。

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