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不幸な勇者様  作者: 夜猫
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第十一話『闇の女王』


「この先が隠し部屋?」


ブラッドが集めてきた情報を元に捜索していくと、分かり難い場所に入り口を見つけ出した。

罠がないか、ブラッドが入り口を入念に調べる。


「大丈夫。罠はなさそうよん」


「ホントに!?」


「間違いないわん」


「じゃあ、開けてみて」


心配性ね、と入り口に向かうブラッドから、ミュトス達は結構な距離を取る。

見つけた取手を引くと、いきなりガスが噴出した。

ガスを吸ってしまったブラッドは、その場にバタンと倒れてしまった。


「やっぱり……」


「罠解除に関して、こいつの『間違いない』は信用出来ないからな」


「痛い目遭いまくり」


ブラッドは盗賊という職業の割に、罠解除が下手である。

罠を見つけられずに、ドアや宝箱を開けた瞬間に罠が発動する事が結構あるのだ。

倒れているブラッドを、サラが回復させた後、ミュトスが少し説教してから、全員で隠し部屋に入っていった。

中に入ると、かなり複雑な魔法陣が目に飛び込んできた。

これが噂の移動用の魔法陣だろう。

そのすぐ横に、ボタンが二つ付いた台が置いてある。

これが操作する為の装置なのだろう。

ブラッドが聞いた話によれば、片方のボタンだけが光っているという話だったのだが、今は二つ共光を放っている。


「二つ共、光ってるみたいだけど……」


「ホントに、勇者に反応してるのかしらん」


「マジ……?」


だったら、この移動用の魔法陣は何処に繋がってるの、とミュトスは疑問に首を傾げる。

勇者に反応する装置なんて聞いた事がなかった。


「どうする?」


「うーん」


ゴードンの言葉に、ミュトスは頭を捻らせた。

この魔法陣の先に何が待っているかわからない以上、ミュトスは簡単に決断出来なかった。

そんな時、ニーナがヒョコヒョコと装置に近付いていく。

ミュトスはそれには気付かず、どうすべきが悩んでいた。


「えいっ!」


「え……?」


ニーナの声と共に、ミュトスの視界がいきなり変わる。

何が起きたのかわからなかった。

先程まであった壁や天井はなくなって、青空が広がっていた。


「何が起こったの?」


「どうやら、ニーナがボタンを押したらしいな」


「ニーナ、押したぁ」


ゴードンの言葉に、ニーナは悪びれる事なく、嬉しそうに手を挙げた。

ミュトスは苦笑しながら、次からは気を付けて、と言い含めておく。


「ちょっと!あそこに人がいるわよん」


「ホントだ……」


ブラッドの指差す方向に目を凝らすと、豪勢な椅子に肘をつき、頬杖をついた少女がこちらへ視線を向けていた。

黒を基調としたヒラヒラとしたスカートを履いた可愛らしい少女だ。

少女は、ミュトス達が自分に気付いた事がわかったらしくニヤリと笑う。


「勇者よ、五千年も待ったぞよ」


不似合いな大きな椅子からピョンと飛び降りると、少女はミュトス達に向けて、声をあげる。


「あなたは……誰?」


「我は、闇の女王。五千年前に世界を征服した女じゃ」


「……ッ!」


その言葉に、ミュトス達は絶句する。

まさか、目の前にいる少女が、伝説に名高い闇の女王だと言うのだから、言葉を失うのも無理はない。


「恐怖しているみたいじゃの?」


「まさか、本当に闇の女王がいるとは思わなかったわん」


冒険者達の噂で、そんな話があったのだが、ミュトス達は話半分で聞いていた。

今の実力で倒せるような相手ではない。

ミュトス達はそう感じていた。


「さて、それでは始めるとしようかの」


「ち、ちょっと待って」


「何じゃ?」


少しずつ近づいてくる闇の女王に、ミュトスは慌てて制止する。

闇の女王は、取りあえず足を止めると、制止を求めたミュトスに対して首を傾げる。


「えっと……今から何するの?」


嫌な予感しかしないと思いながら、ミュトスは闇の女王に質問してみる。

闇の女王はニヤリと笑って、ミュトスにビシィと指差す。


「勿論、勝負じゃ」


「……ッ!」


その言葉を聞いた瞬間に、ミュトス達は戦闘態勢に入る。

闇の女王の一挙手一投足に気を付ける。


「ほう。戦いを選ぶんじゃな?」


いいだろう、と闇の女王は不適に笑う。

そして、一歩足を踏み出した。

その威圧感に、ミュトス達は無意識に後退りしていた。

こんな化け物を倒せるのか、と弱気に感じていた。

見た目とは全く違う雰囲気に逃げ出したい思いを飲み込んで、ミュトスは真っ直ぐに闇の女王を睨み付けて、前へと足を出した。

それを見た闇の女王は、一瞬驚いたような表情を見せた後、すぐに楽しそうに口角を上げる。


「面白いのぅ。我の事を知って、尚前に出るとは」


ならば、我に勝ったら良いモノをやろう、と闇の女王は続ける。

良いモノが何なのかわからなかったが、ミュトスは負けたらどうなるか、の方が気になった。


「案ずるな。負けても命までは取らん」


ミュトスの不安を読み取ったのか、闇の女王は世界征服者には似つかわしくない優しい笑顔で答えてくれる。


「ホントに?」


「嘘は言わん。じゃが……」


「?」


「事故は知らんぞ。だから、死ぬ気で頑張れ」


凶悪な笑みを浮かべた闇の女王は、まさしく闇を統べる者に相応しい表情だった。

ミュトスは背筋に悪寒が走る。


「いくぞ!」


そうして、闇の女王との戦闘が始まった。


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