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第九十七話 炎の壁の中からいずるもの

 炎の壁? 一体どういうことだ? 俺は発動してない。つーか『火線』を使って作り出した覚えすらないんだが?


 俺が突如として目の前に現れた炎の壁を見ながら考えを巡らせていると、炎の壁の中からゆっくりと人影が進み出てくる。


 炎の壁の中から姿を現したのは、忍び装束のような黒衣に身を包み。どことなく志度と似た雰囲気を持ち、短めの黒髪を針のように逆立たせた。背丈が低く鋭い目つきをした少年だった。


「玲子たちはてめえのことを、悪鬼でなく人に仇なさぬ鬼と判断して見逃すことにしたようだが、俺はよ。悪鬼だろうが鬼だろうが、人の世に出てきた時点で、人間の敵で、俺の敵だと思ってるからよ。ただ人に仇なさなぬ鬼ってだけで情けをかけてやるつもりはねぇ。だから、さっさと死ねや」


 玲子と同じ。いや、それ以上の速度を出して俺の前方にいた少年の姿が俺の目の前から掻き消える。


「オンバサラタンカンッアビラウンケンソワカッ志々度流火竜(かりゅう)術式二の型。『火竜爪(かりゅうそう)』!」


 声が頭上付近で聞こえると共に、俺の頭上から、三爪に分かれた長さ二,三十センチほどの炎の爪が振り下ろされる。


 炎による攻撃なら、ダメージを受けるどころか吸収できる攻撃であるために、ほんの一瞬、俺は『火竜爪』による攻撃をわざと食らおうと思ったのだが、なぜかこの炎からは、俺が今まで喰らってきた炎と違った嫌な感じがしたので、俺は反射的に本能に従い。とっさにかわすことに決めた。


 幸いなことに、玲子と戦っていたおかげで、素早い動きに目が慣れていた俺は、頭上から振り下ろされた炎でできた火竜の爪を、何とか一歩後ろに下がって薄皮一枚でかわすことに成功していた。


 薄皮一枚。ということは、『火竜爪』は俺の常時発動スキル『炎の壁』に触れていることになるわけだが、さすがに俺と同じ火系列のスキルだけあって、『炎の壁』に触れても燃え上がったりはしないようだった。


 だが、俺の纏っていた常時発動スキル『炎の壁』に、『火竜爪(かりゅうそう)』が接触した瞬間、『炎の壁』の一部。『火竜爪』が接触した部分が切り裂かれ、削り取られてしまう。


「ガッ!?」


 俺の『炎の壁』が、同じ炎の属性である『火竜爪』によって、削りとられたのを感じ取った俺は、予想外の出来事に、驚きの声を上げて、つい少年を見つめてしまう。


「あ~なんだ。てめえの纏ってた『炎の壁』みてえな奴が、俺の『火竜爪』に切り裂かれて驚いているようだがよ。てめえのちゃちな炎で、この俺の『火竜爪』が止められる分けねぇだろうが? てめえと俺とじゃ格が違うんだよ。格が」


 炎の壁を削られて驚きの声を上げている俺に対して、『火竜爪』で俺の炎の壁を切り裂き、部分的に炎の壁を消失させた少年が、俺を見下したような馬鹿にした口調でまくし立ててくる。


「つーか、もしかしててめえ。餓鬼洞辺りでじゃれ合った志度の鼻たれ小僧の炎をあしらったぐらいで調子ぶっこいてんじゃねぇだろうな? あのよう一応言っとくが、てめえは志度の火術を喰らって、軽くあしらったようだが、真の志々度流火術はあんな餓鬼風情に使うようなもんと比較にならねえぜ? なぜなら、志々度流火術は炎を操り。炎を喰らい。炎を焼き払う。史上最強の竜の名を冠した火竜術(かりゅうじゅつ)なんだからよ」


 つまり、こいつの言っていることが本当なら、こいつの炎は俺の炎を喰らい焼き払えるってことか? いやいくら陰陽師とはいっても、ただの人間に鬼や妖怪の類の上級と呼べるほどの力を持った俺が出す炎を、喰らったり焼き払えたりするはずがねぇはずだ。と思いながら、俺は少年を見つめ返していた。 

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