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第八十二話 ストレス解消

「みんなになにするの!」


 陰陽師たちの異常に気が付いた六花が、肩を貸していた安国をその場に横たえると、田んぼの中で身動きが取れずに、針の山のような岩山に閉じ込められた陰陽師たちに向かって走り出した。


 一方玲子の方はというと、こと戦闘や状況把握に対しては六花より優れているのか、すぐさま俺の行動の意味を理解すると、自分が肩を貸していた陰陽師をその場に横たえて、俺の方を向き視線で頷いてくる。


 そのため俺は、玲子が運ぶ途中で田んぼに横たえた陰陽師と、六花が道に横たえた安国にも、先ほどと同じように大鬼たちが、おいそれとは近づけないような先端を(とが)らせた頑強な地獄にある針の山のような岩山を作って閉じ込めた。


 それを見ていた六花から非難の声が上がる。


「玲ねぇ! 何してるの!」


「これでいい」


「これでいいってどういうこと!?」


「この場に大鬼が現れ、餓鬼が溢れ出した今、このまま皆で逃げ切るのは不可能だ」


「だからと言ってみんなを見捨てて言い訳ないじゃない!」


「いいか六花。あの悪鬼は、私たちがこの場を離れられない理由を断ち切ってくれたのだ。少々尺には触るが、感謝しこそすれ、恨むのはお門違いだ」


「でもみんなが!」


「問題ない。私の気配探知によれば皆生きている」


「へ? でもみんな岩山にされたんじゃ、ない……の?」


「見た目上はな」


「見た目上?」


「ああ、針の山のような頑強な岩山に囲まれた安国たちならば、岩山の中で生きている」


 玲子が六花を説得したのを確認した俺は、次に六花と玲子にも目配せで問いかける。


 お前らも岩山に身を護ってもらいながら、大鬼たちや餓鬼の集団たちから隠れるか? と。


「いや足かせがとれ、後顧の憂いもなくなった今、私たちの足ならば十分に戦いながら逃げ切れる」


 それだけ呟くと玲子は、村の中に雪崩こみ。自分の周りに集まり始めていた餓鬼たちを一刀の元に切り伏せながら、六花と合流するために動き始めた。


「とりあえずあの水車小屋で合流するぞ六花っその後この場から一時撤退し、陰陽連に援軍を要請次第っ安国たちを救出に舞い戻る!」


「うん!」

 

 玲子の声に答えた六花も、玲子と合流しようと水車小屋を目指して移動を開始した。


 そして、玲子と六花が互いに合流しようとしているその間にも、玲子は足の様子を確認しながら、今までの鬱憤を払しょくするかのように、嬉々として自分に群がる餓鬼たちを切り伏せていた。


 どうやらこの様子からして、陰陽師相手に肩を貸して撤退していた行為そのものが、刀を振るい悪鬼を切り裂くことにしか興味がない玲子にとって、多大なストレスを生んでいたらしく、その反動で自分に群がる餓鬼たちを、感情の赴くままに切り伏せているらしかった。


「というかいい加減、撤退するためとはいえ、男に肩を貸す行為自体に嫌気がさしていたからな。これで思う存分戦える!」


 玲子が両の瞳に剣呑な光を宿し、自分の行く手を遮るように群がってくる人の子供ぐらいの体格をした餓鬼たちを、一刀のもとに次々と切り伏せながら、六花との合流地点へと向かっていると、突然玲子の姿が闇に包まれる。

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