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第八十話 突破された炎の壁

 瞬間、餓鬼たちよりも大きな気配が炎の壁を突き抜けて、俺の作り出した餓鬼たちの足止め用の高さ二メートルほどの石壁に激突し、破壊した。


 しかもそれは一か所ではなく次々と巻き起り、合計十枚近くあった餓鬼の足止めようの石壁は、すべて炎の壁を抜けてきたこん棒や石斧などの武器を持った大鬼たちの手によって破壊されてしまったのだった。


 炎の壁を突き抜け、石の壁を破壊し、まず最初に姿を現したのは、直径一メートルほどのこん棒を手に持った体長六メートルほどの灰褐色の肌に、これでもかというほどに盛り上がった筋肉をした数体の餓鬼王と、牛の頭に黒茶色の毛深い肌をした筋骨隆々のムッキムキの人間の体躯をした体長四メートルほどの石斧を手にした牛鬼に、頭の部分以外が牛鬼に酷似してる馬頭の馬鬼という餓鬼洞の底の方に住み着き、日々の糧として餓鬼を貪り食っている大鬼たちだった。


 そして餓鬼王や牛鬼や馬鬼に続けとばかりに、大鬼たちの後を追うようにして、炎の壁を強引に突破してきた腐餓鬼や餓鬼たちが、一斉に村に雪崩込んできたのだった。


 こうなったらもう撤退どころじゃねぇっくそっどうする!?


 俺がこの状況を打破する手を考えながらも、少しでも時間を稼ごうと、集石で即席の石壁を作ったり、地面に手をついて、火線から立ち上らせることのできる炎の柱などで、大鬼たちを(あぶ)ったりしていたのだが、さして大鬼たちの侵攻を止める時間稼ぎにはなっていないようだった。



「玲ねぇ!」


 村に大鬼たちが餓鬼を引き連れて雪崩(なだれ)込んできたのを目にした六花が、焦りの混じった声を上げる。


「くっ」


 だが玲子は苦鳴を漏らすのみで六花の問いに答えられない。


 なぜなら現状どうあがいても、陰陽師たちを助けながらこの状況を乗り越える術が玲子には思いつかなかったからだ。


 そんな玲子の考えを見抜いたかのように、六花に肩を借りていた安国が声をかけてきた。


「六花様、玲子様。我らを置いていってくだされ」


「そんなことできるわけないじゃない!」


 安国の言い分に六花は即断する。


「我ら一同お二人の足手まといにはなりとうございませぬ」


「足手まといなんかじゃ……」


「いえ、我ら一同明らかに六花様と玲子様。お二方にとって足手まといになっておりまする! 我らお二方の足手まといには決してなりとうありませぬ!」


「だから足手まといじゃないって言ってるでしょ!」


 六花が何度も反論してくるために、安国は玲子に向かって声をかける。


「玲子様! どうか。どうか我らを置いてお逃げくだされ! 我らを助けるために六花様と玲子様のお二方がこのような場所で命を落とす羽目にでもなれば、我ら一同死んでも死に切れませぬ!」


「玲ねぇっ玲ねぇはもうそんなことしないよね! もう二度と仲間を見捨てるようなことしないよね!」


「安国の言う通りだ。現状安国たちを連れて行けば、私たちもその巻き添えで間違いなく死ぬ」


「玲ねぇ……」


 玲子の返答を聞いた六花が落胆したような声を上げる。


「だが、お前たちを助けるという六花の想いに従った時点で、もう私にお前たちを見捨てる選択肢はない。お前たちはおとなしく私たちに助けられていろ」


「玲ねぇ!」


 玲子が安国たちを見捨てないとはっきりと言い切ったとたん。六花は満開の花が咲いたような屈託のない笑顔を浮かべて玲子のことを見つめる。


 屈託のない笑顔を六花に向けられた玲子は、少しばかり恥ずかしいのか。頬を朱に染めると、恥ずかしがっているのを誤魔化すように、六花にげきを飛ばした。


「わかったなら、もっと早く歩け六花!」


「うん!」


 玲子にげきを飛ばされた六花は、再び屈託のない笑顔を玲子に向けると、今にも大鬼や餓鬼たちに蹂躙されようとしているこの場には不釣り合いなほどの声で、元気よく返事を返し、陰陽師に肩を貸しながら歩く速度を速めた。

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