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第七十四話 餓鬼

 「玲ねぇっやっぱりあたしも一緒に戦うよ!」


 俺と一戦やり終えて、肩で荒い息をする玲子に六花が駆け寄り、心配そうに声をかけた。


「問題ない」


「けど」


 明らかに疲労の色のにじむ玲子の姿を見た六花が食い下がろうとするが、玲子はかたくなに拒絶の言葉を口にする。


「問題ない。と、言っている。とにかく六花。お前は安全圏まで離れていろ。そしてそこで、悠々と私が悪鬼を調伏する姿でも見物していろ」


 それだけ言うと玲子は、六花を安心させるように余裕の笑みを浮かべる。


 玲子の自分を気遣う笑顔を目にした六花は、もう何も玲子に言い返せないのか、ただ何もできない自分の力のなさを歯がゆく思いながら、啖呵を切った。


「玲ねぇわかったよ。玲ねぇがそこまで言うならあたしはもう何も言わない。けど、それだけ偉そうなこと言ったんだからっ悪鬼なんかに負けたら絶っっ対に許さないんだからねっ!」


 自分にはっぱをかけてくる六花の精一杯の声援を受けて、玲子は口の端を笑みの形に歪めると、強い意志のこもった瞳で俺を見据えながら、コクリと頷いたのだった。


 その時である。一陣の風と共に、この場にいる誰もが気付くほどの異臭が漂ってきたのは。


 俺と玲子たちが、匂いの方へ視線を向けると、いつの間に現れたのか俺がこの村を見渡した小さな高台に餓鬼の姿があった。


「何であんなところに餓鬼いるの!?」


 本来この場にいないはずの餓鬼の姿を目にした六花が驚きの声を上げる。


 六花の声を聞いた玲子が、六花を落ち着かせるように説明する。


「落ち着け六花。この近辺には餓鬼洞という場所がある。そしてそこでは時折自然に地獄門が開くときがある。多分そのせいで、地獄門を通った餓鬼が人里付近にまで降りて来たのだろう」


「でも玲ねぇ。地獄門から現れる餓鬼って、あんなにたくさんいるものなの?」

 

 現れた餓鬼たちの姿を見て六花が疑問の声を上げる。

 

 確かに六花の指摘する通り、この場に現れた餓鬼の数は、一体や二体ではなく。軽く十体は超えていた。


 いや、餓鬼の姿を確認しながらも、時間経過とともに餓鬼の数は、まるで羽虫や(あり)などの大群で行動する虫のように、どんどんとその数を増やしていった。


 今やその数ざっと数十体。いや下手をしたら百体近いかもしれなかった。


「私としたことが、奴らがここまで数を増やし、近づいて来るまで気づかないとは、不覚だ」


 それは俺にも言えることだ。六花たちはともかく、はっきり言って玲子の技量から、玲子が油断できない相手だと思って、ちっとばっか玲子に意識を向けすぎた。


 その結果として、迂闊(うかつ)にも俺は、奴らのように力の弱い者たちに対しての警戒を怠ってしまった。


 まぁ元々奴らのように力の弱い者たちなどは、ある程度注意していないと、気配探知には引っかかっても、気配探知や俺の野性の勘ともいうべきものが、警報を上げることがない。


 なぜなら、今現在餓鬼の立ち位置は、燃やして食べる俺のご飯という立ち位置であり、決して俺の命を脅かすほどの本能レベルで、警報を鳴らす脅威ではないからだ。


 そのため俺も玲子同様餓鬼の存在に気付かずに、ここまで餓鬼たちの接近を許してしまったのだった。

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