第五十九話 空腹
餓鬼洞のあった場所から下り、慣れない二足歩行で俺が人里付近まで移動するころには、四半日程度の時が流れていた。
無機物の火の玉や炎獅子の四足歩行に慣れてたから、有機物で肉体のある火吹き人の二足歩行に不慣れな俺は、何度も足をもつれさせ、倒れたりしながら移動していたために、それだけの時間がかかったのだ。
まぁおかげである程度二足歩行には慣れたし、獄炎鬼とやり合ったときに消耗していた体力なども、時間がかかったおかげであらかた回復してはいた。
ただ問題なのは、四半日も休まずに歩きづめだったこともあって、進化したてで腹がものすご~く減っていることと、ずっと体重のほとんどないような無機物生活を送っていたというのに、いきなり体が有機物化したせいで、獄炎鬼や筋肉ハゲダルマたちとの戦闘中は気にもならなかったのだが、戦闘が終わって移動を開始してから体が物凄く重く感じることだった。
というか、腹が減っているなら、途中で餓鬼でも焼いてその炎を喰えばって話になるんだが、なぜか俺が移動している間。肝心の餓鬼の姿を一切見なかった。
しかも餓鬼の変わりの食料となりそうな死人も、腐餓鬼も餓鬼王の姿さえも一切目にすることがなかった。
そのせいで、進化したてで腹が減っているにもかかわらず、今の今まで俺は先ほど戦った志度の炎を喰らう以外で、自分の腹を満たすことができなかったのだ。
ああ~くそっ腹減った! 腹減ったぞ畜生! だれだよ、炎を食えるからしばらく飢え死にしないとか。食糧事情が安定するとかほざいた奴は!
俺は怨嗟の念を込めて、過去に無責任なことを考えた自分を呪いながらも、とりあえず餓鬼がいなければ普通の食い物でもいいと思って探しながら歩いてみるも、あるのは葉っぱばかりなり、獣と思わしき足跡もたまにあるが、山にあるはずの食べられる木の実も獣も一向に出会うことがなかった。
そう言った事情もあり、仕方なしに俺は腹が減り重たい体にむち打ちながらも、ここが人間界なのか? それとも先ほどまで俺がいた地獄なのかを判断するために、この世界の情報を少しでも集めると共に、自分の腹を満たせる食料を探そうと、重い足を一歩、また一歩と前に出し歩き続けたのだった。
予定では、五話ほど余裕があったので、その間に先のお話を書く予定でしたが、自分のミスにより、時間軸に差異が生じたために、全部書き直し、もしくは修正することになったために、先のお話が書けていません。
なので、お話が書け次第投稿となりますことご了承ください。m(__)m