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第五十五話 火吹き人VS比婆&志度⑤ 志度の想い

 志度は化け物と共に餓鬼洞に転がり落ち、自分が入口を塞いだせいで悪鬼と共に餓鬼洞に閉じ込められた比婆に聞こえるように、土や岩の瓦礫によって塞がれた餓鬼洞の入口に向かって、比婆に聞こえるよう大声で呼びかけた。


「比婆さん……待っててください❗ 本部に報告を入れてあの悪鬼をちょうぶくできる術者を呼び寄せ次第っ餓鬼洞の入口を開けて、必ず助けるっすからっ❗ それまでの辛抱っすからっ!」 


 志度は餓鬼洞に悪鬼と共に閉じ込められている比婆に声をかけると、懐から一枚の赤い式符を取り出す。


 そして、自分が唯一使える式符を使って、式神をこの場に呼び出した。


「式神、火鳥、(ひちょう)、比奈(ひな)っ!」


 志度が式符で呼び出した式神は、スズメほどの大きさの火で出来た小鳥となり、志度の目線の高さに浮かび上がった。


「比奈、ここであったことを陰陽連の本部のお偉いさんに知らせるっす!」


 比奈(ひな)は、志度の言葉に頷くと、小さな火で出来た翼をはためかせ、志度の頭上を何度か旋回するようにして高度を上げた後、志度の命令を実行するために夜空へ浮かび上がり、陰陽連の本部のある方角に向かって飛び去っていった。


 そして、式神を放った志度は、万が一式神が陰陽連本部にたどり着けなかったときのために、自らもスマホの電波の届かない山を降りることにした。


 そうして、志度が固い決意をして、その場を立ち去ろうとしたときだった。


 餓鬼洞を塞いだはずの土や岩で作られた瓦礫に、火のような赤い火線が走ったのは。


「まさか!?」


 瓦礫の山に走った火線を目にした志度は、火線の走った瓦礫の山から眼が離せなくなっていた。


 数秒後。瓦礫の山に走った火線から火柱が立ち上ぼり、瓦礫の山は火柱の勢いと共に崩壊した。


 そして、瓦礫の山を崩壊させて現れた物を見て、頭に地が上った志度は、感情のままに、後先考えずに術式詠唱を開始した。

 

 なぜならそこには、瓦礫の山を崩壊させ、比婆を肩にかついで餓鬼洞から出てくる火吹き人である俺の姿があったからだった。


「比婆さんをおぉぉっ離せええええっ❗」


 もはや立て続けに爆炎術を二発も撃っている志度には、呪力が残っていなかったが、比婆を助けたいその想い一心で、腹の底。体の奥底から呪力を振り絞り気を失いそうになりながらも、必死の想いで術式を完成させる。


「比婆さんを……離しやがれっオンバサラタンカンッアビラウンケンソワカ! 志々度式爆炎術、『爆炎爆破』!」


 だが残念ながらいくら志度が力を振り絞ろうと、俺との相性は最悪で、志度のすべてを振り絞り解き放った『爆炎爆破』は、俺の体を傷つけ比婆を救うどころか、俺が志度の発動した術式の炎を吸い込んだことで、俺の体力を回復させてしまう。


 だがそれでも、志度は諦めきれないのか、すでに枯渇しかけている自分の呪力を振り絞り術式を完成させようとする。


「オンバサラタンカンッアビラウンケンソワカ! 志々度式爆炎術、『爆炎火球』❗」


 しかし志度の放とうとした爆炎火球は、完成することはなかった。


 そう志度にはすでに、術式を完成させるだけの呪力が残されていなかったからだ。


 しかしそれでも志度は、何とかして俺から比婆を奪い返そうと、ヒョロヒョロの体に鞭打って俺に殴りかかってくるが、力ない拳が俺に触れると共に、呪力を使いすぎてMPを枯渇させた志度は、最後の言葉を紡いで俺の体に伸し掛かるようにして比婆を助けられない自分の力のなさに、涙をにじませながら気を失っていった。


「くそったれ……比婆……さん……すまねぇ……」

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