第五十三話 火吹き人VS比婆&志度③封印
うしっこれならいけるっ俺が頭の中で声を上げた。
あとはどうやってこいつらを殺さずに捕まえるかだ。
……というか、。よく考えたら俺、捕獲スキル持ってないな。
どうやって捕まえよう?
などと、俺が悩んでいる間にも、自分のとっておきの隠しスキルが破られた比婆が、覚悟を決めたのか雄々しい雄たけびを上げ、鬼の形相をしながら体全体で突撃してきた。
「おおおおおおおおおおっっ!!!」
なっ!? マジかッ!? 俺は比婆の予想外の突撃に、迷う。が、とりあえず俺が地獄門を通って人間界に来ているのか? はたまたまだ地獄にいるのかという情報を集めなくてはならないために、とりあえず突撃してくる比婆を殺さないように、戸惑いながらも呪力を最大限弱めて、『炎の壁』の火力を最小限にした。
とほぼ同時に、比婆が俺の体にたどり着き小型ダンプに追突されるような衝撃が俺を襲った。
さすがの俺も、小型ダンプの衝突と同等の威力のある体当たりをその場で受け止めるほどの馬力を出せずに、そのまま押し込まれて、やっと出てきた洞窟内へと体当たりしてきた比婆と共に転がり落ちてしまうのだった。
「今だっ志度やれえぇぇっ!」
餓鬼洞に転がり落ちながらも、比婆が志度に向かって声を張り上げる。
「けど比婆さん!」
比婆が俺と共に餓鬼洞の中へと転がり落ちたのを見ていた志度が、心配げに声を荒らげる。
「志度ぉっ!陰陽師たるものの役目は何だぁっ!!」
「悪しき悪鬼や妖怪の類から、人間を護ることっす!」
「だったら迷わず悪鬼を封印しっ人々を護りやがれぇっこのくそバカ野郎があっ!!」
「ああっもうわかったすよ!」
志度が自慢のリーゼントを掻きむしりながら答えると、怒声を張り上げて術式詠唱を開始した。
「オンバサラタンカンッアビラウンケンソワカ! 志々度式爆炎術、爆炎爆破!」
志度が両手で印を結び、口から巨大な爆炎を吐き出した。
志度の吐き出した爆炎は、火吹き人である俺や比婆が転がり落ちていった餓鬼洞の入り口の土や石に触れた瞬間、いくつもの小規模爆発を巻き起こした。
だが、これぽっちの爆発の威力で破壊した土や石では、餓鬼洞をふさぐには至らなかった。
そのため志度はもう一度、今度はありったけの呪力を込めて術式を詠唱する。
「オンバサラタンカン、アビラウンケンソワカ! 志々度式爆炎術っ爆炎火球!!」
志度が術式を唱え終わると、志度の前に直径3メートルはあろうかという燃え盛る巨大な火球が浮かび上がる。
そして志度のありったけの呪力を込めた爆炎火球は、志度の意思に反応して、餓鬼洞に向かって突き進むと、餓鬼洞の内部から天井にぶち当たり、巨大な爆発を巻き起こし、洞窟内の土や岩を崩壊させて、餓鬼洞の入り口を封じたのだった。