第五十二話 火吹き人VS比婆&志度②『土壁雪崩』
バガアァァァアンッ!!
交差された俺の腕にぶち当たった巨大な土壁は、轟音を響かせながら砕け散った。
ふ~今のはちょっとビビったぜ。とはいえ、きちんとガードを固めてさえいれば、獄炎鬼を倒せるほどの力を持った火吹き人の体は、あれぐらいの土壁がぶつかった程度では、かすり傷一つ負わないようだった。
が、問題なのはこの後だった。
頭上から振り下ろされた土壁が俺に激突し、土壁が砕け散った瞬間、俺はみぞおち辺りを何か固い鈍器のようなもので殴打されていたからだ。
完全に相手を弱者と決めつけて油断していた俺は、まともにみぞおちを殴りつけられたために一瞬口から大きく息を吐き出していた。
「ガハッ!?」
くそがっ油断した! 俺は強者になったせいで緩んでいた警戒心を再び引き上げると、鳩尾を殴りつけてきた物に視線を向ける。
俺の鳩尾を殴りつけてきたのは、先ほど俺の頭上から振り下ろされた土壁に似た厚さ20センチ横幅50センチ長さ1メートルほどの土壁だった。
どうやら比婆っていう土壁使いが、俺の注意を頭上に向けさせた後に、すぐさま次の土壁を作り上げ、それを前面に押し出しながら俺の鳩尾付近を狙って叩き込んできたようだった。
こなもんすぐさま払いのけてやる!
俺は右手に『炎熱拳』を発動させて、鳩尾に叩きつけられた土壁に触れて土壁を溶かし始める。
俺の『炎熱拳』に触れられた土壁は、すぐさま解け始めるが、比婆はそれを予想していたのか、気合の声を上げながら俺に向かって次々に、先ほど俺の鳩尾に叩きこんできたものと同じぐらいの大きさの土壁を繰り出してきた。
「連層術式土壁雪崩!!」
比婆の作り出した『土壁雪崩』は、俺の『炎熱拳』で溶かされることなどお構いなしに、比婆の体を起点に、タンスの引き出しの要領で上下に段々と俺の体を押し続ける。
くそがっ『炎熱拳』じゃ土壁の処理がまにあわねぇ! そう思いながら俺は呪力を高めると、呪力によって温度変化の起こる常時発動型の特性スキル『炎の壁』の熱を土を溶かせるぐらいに上昇させる。
土を溶かせるぐらいに温度が急上昇した『炎の壁』は、俺の期待通りに俺に向かってひっきりなしに襲い掛かってくる『土壁雪崩』の土壁に触れると共に、『炎熱拳』よりは遅い速度だったが触れた土壁を確実に溶かして無効化いった。