第四十九話 疑問
なるほど。このステータスから見て、比婆天善っていう禿マッチョは、結界術式と、多分だけど不可視の結界壁を利用した近接格闘術を得意とした防御型で、志度竜二っていうヒョロヒョロリーゼントは、火術オンリーの攻撃型ってとこか?
二人のステータスやスキルから予想するに、この二人の戦闘スタイルは、結界術が得意な筋肉マッチョが結界術で敵を足止めし、ヒョロヒョロリーゼントが安全の確保された遠距離から、火属性の攻撃スキルで攻撃を仕掛けるといったことをするのだろう。
餓鬼や腐餓鬼などといった雑魚相手ならば十二分に通用する戦術だ。
だが残念ながらお前らの相手にしてるのは、餓鬼洞が生み出した獄炎鬼を力押しで溶かし倒した火吹き人に進化した俺だ。
その俺を相手にするのに、この二人のステータスだといくら連係しようが話にならない。
比婆と志度。もとい禿マッチョとヒョロヒョロリーゼントのステータスを確認した俺は、そう結論付けた。
と、同時に気になっていた項目を注視する。
俺が気になった項目は、種族だ。
種族人間って……地獄に人間なんているのか?
いや、待て。よく考えろ。俺は確か人間道を通ってきたはずだ。で、獄炎鬼の自爆に巻き込まれた。
そして、地獄にある人間道や餓鬼道には、人間界につながっている小さな穴が定期的に開き、それを人間界では地獄門と言うと、誰かに聞いたことがる。
だが確かその穴はとても小さく、力の弱い餓鬼や死人ぐらいしか通り抜けられないとも聞いたことがある。
また力の強いものがその穴を無理やりに通ろうとすれば、何者かがはるか昔に張った狭間の壁と呼ばれる結界壁によって弾かれて、二度と這い上がれない地獄の奥底に叩きこまれる。と言われている。
だが餓鬼や死人より遥かに強い力を持った俺は、今現在ここにいる。
多分地獄門を通ってだ。
だとしたら、獄炎鬼の大自爆によって地獄の門が無理やり開かれて、俺のような力の強い悪鬼の類が人間界に来れたのかもしれない。
だが、いまいち確信が持てない。俺が人間界に来た。という。
それにごく稀に、本当にごく稀にだが。生きている人間が地獄を訪れた話もいくつか存在している。
だとしたら俺のいるここは地獄なのか? いや、あの程度のステータスの人間が、地獄に来れるとは到底思えない。
だとしたらやはりここは人間界なのだろうか?
次第に俺は、堂々巡りする思考に没頭していった。