第四十六話 二幕開幕 現世邂逅 月
いよいよ第二幕 現世邂逅編がスタートします!
現世邂逅編 第一話、本編第46話 月です!
ここは……?
気がついたら俺は、真っ暗な闇が広がる洞窟にうつ伏せで転がっていた。
俺は頭を振りながら、暗闇の中地面に手をついて何とか立ち上がった。
立ち上がった俺の視界の先には、真っ暗な闇が広がっていた。
だがよ~く目を凝らすと、ぼんやりと洞窟の奥の方を優しい光が差しこんでいるのを見ることができた。
それはとても懐かしい感じがした光だった。
俺はその光に誘われるままに、歩みを進める。
光に近づくにつれて、俺はその光の温かさに気付く。
俺は光の温かさを、もっともっと感じていたいと思って、さらに光へと近づいていった。
そして我慢できなくなった俺は、光の中へと歩を進めていた。
俺は暗い暗い洞窟の中から一歩外へと踏み出した。
「つ、き……か」
未だに言葉を発音するのが苦手な俺は、片言の言葉で久しぶりに見る月を見上げながら、郷愁を感じさせる声音で呟いていた。
俺が懐かしげに目を細め、夜空に浮かぶ月を見上げていると、この場で俺が感じている懐かしさをぶち壊す度量の、明らかに俺を敵視している殺気だらけの四十代ほどの男の怒声が響き渡った。
「餓鬼道から湧き出たる悪しき鬼を縛り上げよ! 『呪縛符』!」
殺気と共に向けられた呪縛符が、怒声と共に俺を襲う。
俺に向けられて放たれた呪縛符は、俺の体に触れるや否や常人には見ることもかなわぬ不可視の鎖となって、俺の体を縛り付ける。
「よしっ捕らえたぞ! 今だっ止めを刺せぇ!」
俺を捕らえた男が再び声を上げる。
男の上げた声に呼応するように、呪縛符で捕らわれた俺に向かって呪術を解き放とうというのか、今度は三十代位の男の術式詠唱の声が聞こえてくる。
「オンバサラタンカン、アビラウンケンソワカッ火呪火炎!」
術式詠唱が終わると共に姿を現したヒョロヒョロとした体格の、三十歳ほどの神社の神主の着ているような黒装束を身に着けたリーゼント頭のグラサン男が、俺の前に飛び出して術を放ってくる。
男が放った火炎は、俺に向かって真っすぐに火線を引いて迸り、呪縛符によって体の動きを封じられて、身動きの取れない俺の体にまともにぶち当たって、俺の体を炎に包み込んだ。
俺の体を自分の解き放った火炎が包み込んだのを確認した男は、当然ながらやったぜ! と声に出して嬉しそうにガッツポーズをとる。
だが、餓鬼や死人ならいざいらず、曲がりなりにも俺は、餓鬼祠の主たる獄炎鬼を力でねじ伏せて生き残った火吹き人だ。
だからこの程度の炎で、そもそも俺をどうこうできるはずがなかった。
しかも、俺の属性は炎。陰陽道の火術式の火炎とは相性が良すぎる。
というわけで、俺にまともにぶち当たり、俺の体を包み込んだ火炎を放ったどこぞの術者のおっさんには悪いが、俺ノ—ダメージってか。進化したてで腹が減ってたんで、火炎いただきましたっごちそー様です。
俺は俺に火炎というご飯をくれたどこぞのおっさんの術者にお礼を言いつつ、火炎を平らげた。
ちなみに火炎を喰えるかどうか。ということについては、実際のところ俺も確信を持ててなかったが、今まで進化してきた進化体が皆が皆、炎をご飯としていたので試しにやってみただけだ。
だがこれで、俺たちとは敵対する陰陽術の炎をも食せて、腹を満たせるってことがわかった。
はっきり言って、これは戦略的に言ってでかい。
なぜなら、敵が火術や火スキル持ちを相手にした場合。戦闘中に相手の術やスキルをわざと食らって回復しながら戦えるからだ。
しかも、相手が火術や火スキル特化だった場合。俺の負けの目が完全に消える。この優位性はかなりでかい。
しかも今までと同じように、炎を喰えるということは、妖怪や餓鬼や死人に火をかけ、その炎もまた同じように食すことができるということだからだ。
これでしばらくの間は、俺の食糧事情は安定することになった。
何とかかんとか書き上げました。
遅くなって申し訳ありません。m(__)m
7,8,9,10,11日。間は毎日連載します。
その後はまだ書けてないので不定期です。m(__)m