第四十二話 獄炎鬼⑮ 進化先と人間道
進化条件を満たした俺の頭の中に、聞きなれたナビゲーターさんの声が響いてきた。
レベル上限に達しました。
進化しますか?
俺はもうろうとする意識の中で、はい いいえ という項目の中ではいを選択した。
進化項目が写し出されたのだが、すでに目を開くだけの余力がなかった俺は、ナビゲーターさんに駄目もとで頼んでみた。
進化項目の読み上げを頼むと、俺が心の中で頼むと、わりとあっさりとナビゲーターさんは、進化項目の読み上げを了承してくれた。
進化項目の音声読み上げを開始します。
あとで気が付いたことだが、多分この音声読み上げ機能がある理由は、目が見えない。もしくは目がない妖怪が進化をするためだろうと推測できる。
だが今の俺にそんなことを考えている余裕はなかったので、ただ流されるまでに、進化項目の音声読み上げを聞く。
炎大獅子 純粋なる炎獅子の進化系(無機物)
炎獅子の時の取得スキルの威力が、約二倍近くにはね上がり、強力な炎スキルを取得する。
炎獅子の最終進化系
炎の渦 完全に無機物と化し、ある一定以上のランクの有機物のスキルを除いた攻撃を無効化できる。
そして自らのいかなるスキルであっても、物質に触れることができず、また物質を破壊することができない。
ただし、攻撃スキルの使用や自らの体に触れた生ある有機物は燃やすことができる。
そして、つねに強力な炎の渦を発動している状態であるため、生ある者とは決して共存できない孤高なる存在。
追記
完全な無機物になるために、この先の進化先が竜炎や獄炎などの完全な無機物に固定される。
火車 火でできた車輪。閻魔大王の乗り物の車輪になっていると言われている。
車輪には物理的な攻撃力と火による無機物的な攻撃方法の両方が備わっている。有機物と無機物の間の子(あいのこ。つまり、ハーフ)のような存在。
ナビゲーターさんによって、三つほど俺の進化項目が読み上げられた。
進化項目を読み上げられながらも、すでに俺の意識はもうろうとし、闇に落ち始めていたために、俺は進化先を選べずにいた。。
俺が進化先を選べずにぼ~っとしていると、ナビゲーターさんの声が、再び俺の頭の中に鳴り響いた。
人間道に入ったために新たな進化先が加わりました。
人間道?
人間道。人が死に餓鬼や死人に生まれ変わる道や祠、もしくは、大穴のこと。
俺の疑問の呟きに答えるかのように、ナビゲーターさんが説明してくる。
新たな進化項目が、写し出されるが、俺は目を開くことができず、さらに意識まで闇に落ち始めていたために、先程のようにナビゲーターさんの音声読み上げが開始された。
火の玉人無機物進化をとげた炎系の種族が人間道に入った時に進化できる個体。
人の形をした炎。触れるだけで相手を炎に包み込むことができ、相手に体を重ねることで、相手の体が燃え尽きるまで意のままに操れる。
火吹き人。 人に憧れた一定以上の力を得た炎系の種族が、無機物をやめ、人の形を保ち、人間道に入った時にのみ進化できる殊進化個体。
レベルが上がれば人間のように極めて繊細に四肢を動かせるようになり、固体差はあるが、レベルや修練次第では、人の言葉すら話せるようになる。
有機物に触れられる代わりに、無機物特性を失う。
追記
進化時ランダムで、複数のスキルを失う代わりに火吹き人のみ扱えるランダムスキルを得る。
人という単語と、有機物に触れられるという項目に強く興味が引かれた俺は、進化先を決定した。
火吹き人に進化しますか?
はい いいえ
二つの項目が目の前に浮かび上がり、俺は、迷わずはいを選択した。