第三十四話 獄炎鬼⑦ 決死の鬼ごっこ
特大『獄炎火球』が爆ぜた瞬間、爆ぜた階層で大爆発が巻き起こり、下層に空いた穴から俺のいる階層まで、押し出されるようにして一気に熱風がせり上がってきた。
相変わらずなんちゅー威力だよ⁉ スキルで階層の地面に穴を開けて、下層と道をつなげるわ。
今度は穴を空けた階層の地面を貫通して、その下の階層にまで通じる穴を空けて、二階層抜きとかするわ。
悔しいが『炎の爪』や『炎の牙』でコツコツと壁を削って穴を埋めたりする俺の穴堀りスキルとは、比較にならねぇな。
……やっぱ力の差がありすぎる。
うん。これは、逃げまくってレベル上げて進化するしかないわ。
マジで。
俺は、決意を新たにすると、獄炎鬼が特大『獄炎火球』で開けた穴の中に飛び込んだ。
そうして、『獄炎火球』で穴を開けて俺を追う獄炎鬼と、一発でもまともに攻撃を受けたら死刑確定の俺との決死の鬼ごっこが開始された。
俺が下層とをつなぐ通路や獄炎鬼の『獄炎火球』が開けた穴に飛び込み穴の中の新たな階層にいた大量の餓鬼たちを攻撃スキルや自分の体を使った燃え移りで焼き尽くしていると、獄炎鬼が俺に狙いをつけて、上層から俺のいる下層に向かって、何発もの『獄炎火球』を吐き出してくる。
俺がそれをかわしながら、階層にいる餓鬼たちを焼き尽くしまくっていると、
今度は獄炎鬼が多量に吐き出した『獄炎火球』が獄炎鬼のいる階層の地面を破壊して、俺のいる下層の天井を崩壊させながら、獄炎鬼自体が下層に落下してきて、俺に攻撃スキルを浴びせかけてくる。
そうすると今度は俺が、通路や獄炎鬼のスキルの開けた穴を通り下層に逃げ込みそこにいた餓鬼を焼き尽くす。といったこのコンボ(繰返し)が、すでにもう何度も繰り返されていた。
いくら素早さで勝っているとはいっても、獄炎鬼の攻撃スキルの一撃でもまともに喰らえば俺の炎は焼き尽くされる。
そのため獄炎鬼との鬼ごっこの中で俺にかかるプレッシャーは半端なかったが、幸いなことに獄炎鬼は体がでかすぎて、階層と階層をつなぐ通路を通ることができなかったために、獄炎鬼の階層移動手段が俺を狙い『獄炎火球』を何度も階層の地面に激突させて、階層の地面を破壊し、地面。つまり、下層の天井ごと下に落下するしかなかったので、比較的安全に、俺は餓鬼を相手のレベリングをすることができた。
そうして俺のレベリングは思いの外うまくいき。俺の経験値もそれなりにたまり、あと一歩で俺が進化できるところまで来たときだった。
この餓鬼洞の階層に、本当の終わりが見えてきたのは。
そう、それは俺がいつものように、獄炎鬼が巨大な口から吐き出した『獄炎火球』の空けた穴に飛び込んだ時だった。
穴の中に本来あるべきはずの足場となるべき地面が存在しなかったのだ。1
そして足が降り立つべき地面が存在しないということは、たとえ無機物であるといっても、俺の体は重力の法則にしたがって、餓鬼洞の穴の中に落下していったのだった。