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第百二十九話 亜竜の最後と目的達成

 姿かたちからして、もしかしたら竜種かもしれないとは思っていたけど、マジで竜種かよ。まぁ竜種といっても亜竜なんだけど、亜竜とはいえ竜は竜。それなりの力を有しているはずだ。


 俺は川を渡る際川の中に地亀や鰐亀がいるとは全く思わず油断して、先ほど危機的状況に陥ったことを反省し、目の前に現れた竜種に対して一切の手を抜かず全力で立ち向かうことを決意する。


 双頭亀竜に進化した鰐亀に対して、全力で立ち向かうことを決めた俺は、未だ進化したての体をうまく動かせずにいる双頭亀竜を見据えると共に、天に向かって両手を掲げた。


 獄炎鬼を葬った『集石』と『火線』の融合スキル『溶岩石』だ。


 俺は『集石』で巨大な岩の塊である直径十メートル近い岩石を生み出すと共に、ありったけの呪力を込めた『火線』で熱する。


 一気に決めるぜ。これで終わりだ鰐……否、双頭亀竜!


「『よ、う・がん。せ…き』」


 俺は頭上で育てていた『火線』で目いっぱい熱した煮えたぎる巨石を、進化したてで新しい体に不慣れで、うまく自らの体を動かせずに地団太を踏んでいる双頭亀竜に向かって解き放った。


 俺の解き放った『溶岩石』は、頭上から真っ逆さまに亜双頭亀竜に向かって落下していく。


  獄炎鬼を葬った『溶岩石』だ。進化したてで動きが鈍い今、これをかわすことは不可能に近い。これで決まりだ! と俺が心の中でほくそ笑んでいた。


 だが俺の思惑通りにそううまく事は運ばない。


 なぜなら、双頭亀竜が頭上から落下してくる『溶岩石』に向かって、双頭水竜の吐息(ブレス)×二を吐き出してきたからだ。


 双頭亀竜の吐き出して来た吐息×二は、俺の繰り出した必殺の一撃だと思われていた『溶岩石』のちょうど中心部あたりに激突して、『火線』によってこれでもかと熱せられていた『溶岩石』を(えぐ)ると、温度差による小さな水蒸気爆発を起こし、双頭亀竜の頭上で白煙を上げながら真っ二つになって、亜竜の左右に半々に分かれながら川に向かって落下して川の水を蒸発させる。


 その後普通ならば川というものに流れる水は、次から次へと押し寄せてくるものなので、いくら『溶岩石』が川の水を蒸発させようとも、川の水が枯渇することなど起こりうるはずがなかったのだが、『溶岩石』によって蒸発した川の水は、新しく流れてくる川の水によって補填されることはなかった。


 なぜなら俺が『溶岩石』が双頭亀竜によって、破られるのを察知した瞬間に、『集石』を使って、双頭亀竜の背後に水をせき止める巨大な石の壁を築きあげていたからだ。


 まぁ石の壁と言っても、即席に作ったために、今にも水の圧力によって崩壊寸前になっているほどの弱いものだが。


 だがそれで構わない。なぜなら俺は鑑定の結果。陸上での双頭亀竜が武人死人程度によって、狩られるほどに弱体化することを知っていたからだ。


 当然俺がこの絶好の機会を見逃すはずもない。


 俺は新たに『集石』を使って先端の尖った胴回り四,五十センチ、長さ三メートルほどの巨大な大槍を作り出すと共に、『溶岩石』が川に着弾したせいで起きた水蒸気の発する白煙を目隠し代わりに身を隠しながら、双頭亀竜の背中目がけて思いっきり跳躍する。


 そして白煙に身を隠して跳躍すると共に、手にした大槍に『集石』と『火線』の融合スキルである『溶岩石』を超えるほどの密度で、先端部が超高温になるように『火線』を発動させて、大炎槍(だいえんそう)を生み出すと、そのまま全体重をかけて、双頭亀竜のゴツゴツとした岩のように硬いが、周囲の水分が蒸発し、水中補正が発生せずに火耐性がかなり落ちている双頭亀竜の硬い甲羅を溶かし切りながら、体の中心部に向かって突き刺したのだった。


 たまらないのは、双頭亀竜である。


 『溶岩石』が川に落ちた影響で川の水が白煙を上げながら蒸発し、視界が遮られた中、いきなりマグマほどに熱せられた灼熱の大槍を最も頑丈で外部からの攻撃に無警戒な背中の甲羅から突き刺されたのだ。その驚きようは尋常ではなかった。


「ギヒャアアアッァァアアアッ!?!!!?」


 大炎槍を背中に突き刺された双頭亀竜は、どこから出しているのかわからない断末魔のような絶叫を響かせると、物凄い勢いで大炎槍を背中に突き刺す俺を空中に振り払って、なりふり構わず暴れ出した。


 そうして暴れ出した双頭亀竜は、大炎槍の発する灼熱から逃れようとガムシャラに暴れたせいもあって、俺が『溶岩石』を破られた時に築き上げ、川の水の侵入を防いでいた元々対して強度のない石の壁を一瞬で破壊する。


 すると、今まで侵入を阻まれていた川の水が、水が枯渇していた領域へここぞとばかりに一気に押し寄せて来て、灼熱の熱を発する炎の大槍を背中に突き刺された双頭亀竜の体を一気に包み込むようにして飲み込んだ。


 瞬間、灼熱の熱を纏った大炎槍を背中に突き刺されていた双頭亀竜の巨大な体は、破裂寸前のガス風船のように一瞬で弾けて、爆風と衝撃波を辺りに撒き散らしがら爆発四散したのだった。


 そう、灼熱の熱を帯びていた大炎槍を背中に突き刺したまま、大量の川の水を一気に浴びたために、双頭亀竜の背中に突き立っていた大炎槍が、川の中に小さなクレーターを作り出すほどの巨大な水蒸気爆発を巻き起こしたのだった。



 そして爆死した双頭亀竜が暴れたために、背中から空中に放り投げられていた俺は、その巨大な爆発の巻き起こす爆風をもろに喰らって、川の上流に向かって吹き飛ばされていた。


 が、俺はあわてず騒がず、定まらぬ視界の中で人間の住居が点在していると思われる向こう岸によく見知った姿を目にとめると、それに向かって『炎呪縛の鎖』を投げ放って目的のものに巻きつける。


 俺の目的のものは、餓鬼が橋を渡って人間たちの住む住宅街にたどり着いたために、河川敷にまで姿を現し始めた餓鬼たちだ。


 そう俺は餓鬼たちの姿を目的地である俺が渡ろうとしている反対側の河川敷に見つけたために、『炎呪縛の鎖』をまとまって歩いていた数体の餓鬼たちに巻き付けていたのだ。


 そして俺は餓鬼たちに巻き付けた炎の鎖を勢いよく手繰り寄せて、俺と餓鬼たちとの立ち位置を入れ替える。


 簡単に言えば炎の鎖を引く勢いを利用して、鎖でからめとった数体の餓鬼たちを軸に、俺の居場所を河川敷にいる餓鬼たちと入れ替えたのだった。


 そうなると当然炎の鎖に巻きつかれていた餓鬼たちは、俺の代わりに川の中へと落下していくことになり、俺を対岸に渡らせるという大仕事をやってのけた哀れな餓鬼たちは、海の藻屑(もくず)ならず川の苔屑(こけず)となり消えていったのだった。


 こうして目的地にたどり着いた俺は、気配探知を発動して、この近辺に目に見える餓鬼以外の敵がいないことを確認すると、俺より先に橋を渡り、人間たちの暮らす住宅地に侵入していると思われる餓鬼たちを掃討するために、人間の住んでいると思われる住宅地へと向かったのだった。

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