第百二十五話 川の上の戦い③ 川の中に潜むもの③
俺が鑑定を発動している間にも、鰐亀は俺の乗っている石の柱に突進してくる。
まずいっと思った俺は、とっさにこの柱に飛び移る一つ前の柱に向かって、跳躍する。
俺が跳躍するとほぼ同時、俺がいた石の柱は鰐亀の体当たりによって、一瞬でなぎ倒されていた。
くそっマジかよ!? にしても、これだけの石の柱を一発でなぎ倒すって鰐亀の野郎。どんだけのパワーがあんだよ!? 俺が驚きを通り越して呆れていると、俺の足場の柱が揺れる。
他にも奴のようなのがいるのかと思った俺が、石の柱を見つめると、そこには、先ほどまで石の柱を倒そうと体当たりしていた地亀たちが、今度は強靭な顎力を利用して、石の柱に噛みつき噛み砕こうとしている光景が目に入ってきた。
こいつら体当たりで駄目だと思ったら、今度は噛み付きかよ。
俺はとっさに石の柱に手をついて『火線』を走らせて地亀たちに向かわせるが、やはり、というべきか。
俺が石の柱を通して地亀たちに向かわせた『火線』が来ることを、視認したか気配で察した水面にいる地亀たちは、一斉に水中に顔を引っ込めて水底深くへと潜り込んでしまう。
そのせいで俺が地亀たちに向かわせた『火線』は、水面とぶつかっただけで、いつものように火柱すら上げることができずに鎮火されてしまう。
くそがっやっぱ水面下の戦いは、主力スキルがほぼ火系スキルの俺に圧倒的に不利だ。
しかも俺の放った『火線』が不発に終わったのを水面下から見ていたのか、地亀たちが水面上へと浮上すると共に、これ見よがしに石の柱に再び食らいつき。噛み付きで柱を破壊し始めた。
このままだとまずいと思った俺は、今度は『集石』で『火岩石の弾』を作り、地亀に向かって放り投げるが、地亀が甲羅の中に頭を引っ込めて防御姿勢をとるだけで、俺の投げた『火岩石の弾』はあっさりと弾かれて、水中へと沈んでいった。
くそっ『火線』も『集石』もダメならどうしろってんだよ!? つうか俺のスキル水面下の敵に対して、弱すぎないか。
という疑問を抱きつつも、水の上で戦うのはまずい気がした俺は、戦術的撤退をするために、さらに後ろの石の柱に飛び移って、そのまま先ほど地蜘蛛たちを一掃した河川敷にいったん引いて、対策を練ってから再び川を渡ろうと思ったのだが、俺が石の柱に飛び移る前に、飛び移る予定の石の柱が、俺の行動を先読みした鰐亀によって落とされてしまう。
俺の行動を先読みした鰐亀に先手を打たれたことで、俺はちっと舌打ちし、いら立ちつつも、すぐさま『集石』によって、新たな石の柱を作り出すが、鰐亀は俺の行動を読んでいたのか、新たにできた石の柱を狙ってすぐさま突進すると、あっさりと石の柱をなぎ倒して破壊してしまう。
そしてもちろんその間にも、地亀たちのスキル『噛み付き』によって、俺の乗っている石の柱の根元などが噛み砕かれていて、俺は何の抵抗もできずに水面へと落下していったのだった。