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第百二十二話 河川敷の戦い④ 融合スキル『火炎槍(かえんそう)』

 とりあえず気配探知で地蜘蛛たちのおおよその位置は把握できている。あとは効率よく狩るだけだ。


 そう結論付けると、俺はレベル上げとスキルチェックも兼ねて後顧の憂いを少しでも減らすために、河川敷に巣くっている地蜘蛛狩りを開始した。


 まず巣穴に蓋をして、地中に潜っている地蜘蛛たちを狩るために、俺が作り出したのは、『集石』で作り出し、『炎の壁』のせいで勝手に火属性の付与された『火岩石の(ひがんせきのたま)』だ。


 『火岩石の弾』をいくつか作り出した俺は、気配探知スキルで居場所を特定している地蜘蛛たちの巣穴に向かって投げつける。


 俺の放り投げた『火岩石の弾は』、地蜘蛛たちの巣の天井に伸し掛かると、その重さで地蜘蛛の巣の蓋をへこませるがそれだけだった。


 どうやら、炎岩石の弾程度の重さや『炎の壁』のせいで勝手に付与されている火属性程度の火力では、強固な蜘蛛の糸で内部から補強された地蜘蛛の巣の天井(蓋)を、撃ち破ることも焼き切ることもできないようだった。


 ちなみに、巣の天井(蓋)を『炎岩石の弾』によって、ノックされた地蜘蛛が巣から這い出して、『炎岩石の弾』に組みついた後。表情は読めないが、なんだただの岩かといったようなつまらなそうな顔をして、すぐに組みついた岩から離れて巣に戻ったことを報告しておく。



 う~ん。まだあまり使っていないからはっきりとは言えないが、どうやら『火岩石の弾』は、外れスキルなのかもしれないな。俺が実戦での火岩石の弾の破壊力を見てそう頭の中で感想を浮かべる。


 というか、さすがに『集石』で作った岩の弾に自動で付いた火属性程度の火力では、蜘蛛の糸で補強された地蜘蛛の巣の天井は崩せないか。


 なら、もっと貫通力があり、火力のあるスキルならどうだろうか?


 貫通力があるとすると、先端が鋭く尖っている物。とすると、刀か弓矢か槍という選択肢になる。


 遠距離として刀は投げづらいからないとして、弓矢は細すぎるし、俺の指先ではかなり緻密な指先の作業が必要な弓術は無理だろう。


 だとすると残るは近接でも遠投でも使える槍。ということになる。


 そう判断した俺は、すぐさま『集石』を使って胴回り十センチ前後、投擲することも考えて長さ一メートルほどの短槍を作り上げる。

  

 ただこのまま短槍を地蜘蛛の巣に向かって放り投げたところで、地蜘蛛の巣の天井を撃ち破るまではいかないことは、先ほどの火属性が自動付与された炎岩石の弾でも実証済みだ。


 ならばどうするか? 答えは簡単だ。


 地蜘蛛の巣の頑強さを保っている蜘蛛の糸は、基本火に弱い。


 ただし、自動付与される火属性程度の火力では弱すぎて貫通するまでには至らない。


 ならば、自動で付与される火属性などではなく。自ら進んでより強力な火属性を与えてやればいい。


 俺はそう考えをまとめると、『集石』で作り出した石の短槍を握り締めて『火線』を発動させる。


 すると、石で作られた短槍は、幾つもの赤い熱線を走らせると共に、熱を帯びて赤く染まり始めた。


 『集石』と『火線』の融合スキル火炎槍(かえんそう)だ。


 俺は新たに作り出した火炎槍を、気配探知スキルですでに居場所を特定している地蜘蛛に向かって勢いよく投げ放った。


 俺の投げ放った『火炎槍』は、地蜘蛛の巣穴の天井をものの見事に突き刺すと共に、巣穴の中にいる地蜘蛛の体までをも貫通したのか。


 地蜘蛛の巣穴と思わしき縦穴から、炎を噴き上げた。


 どうやらこの様子からして、地蜘蛛の巣穴の天井(巣の蓋)を貫通した『火炎槍』が、火に弱い地蜘蛛本体と、巣穴を補強する蜘蛛の糸に引火したために、巣穴の中から炎を噴き上げたようだった。


 おおっどうやらこの融合スキルは当たりかもしれない。


 地蜘蛛の巣穴を串刺しにして、巣穴から炎を立ち昇らせる『火炎槍』を見て、俺は結論付けた。


 外から放り投げた『火炎槍』で、地蜘蛛を巣穴ごと葬り去ることに成功した俺は、複数の『火炎槍』を作り出すと、それを次々と気配探知で地蜘蛛が巣くっていると思われる地蜘蛛たちの巣穴に向かって投擲していった。



 俺の投擲した『火炎槍』は、二、三割が、的を外していたが、残りの七、八割が地蜘蛛の巣に命中し、中にいる地蜘蛛をそのまま串刺しにしたり、巣穴から追い出した。


 そして巣穴から逃げ出して来た地蜘蛛たちは、俺が遠距離から外れスキルの『炎岩石の弾』や当たりスキルの『火炎槍』を使って、撃墜したのは言うまでもない。


 もちろん俺は、この時もスキルチェックをするために『炎呪縛の鎖』を手から放ち、いきなり『火炎槍』を巣穴に投げ込まれ、驚いて空中に飛び出して来た地蜘蛛に巻き付けて捕獲の練習などを試してみたのだが、六花の時と違い。『炎呪縛の鎖』が自動で纏っている火属性の力を俺が抑えなかったために、巣穴から飛び出して空中で捕獲した火に弱い地蜘蛛の体が一瞬で炎に包まれたのち、ほんの少しばかり力を込めて、地蜘蛛を引き寄せようとした俺の膂力によって、体長一メートルほどの地蜘蛛の体が、体に巻きついた『炎呪縛の鎖』の力に耐えきれずに、あっさりと鎖に切断された。


 このスキルで人を助けるときは、ほんと細心の注意が必要だと、改めて俺自身が認識させられる出来事だったことをここに付け加えておく。


 そうしてあらかた河川敷での地蜘蛛狩りを終えた俺は、当初の目的通り、川向(かわむこ)うで人間たちを襲っていると思われる餓鬼どもを駆逐するために、川幅二十メートルはあると思われる川を渡ろうと、地蜘蛛たちを片付けた河川敷を横切って、川へと向かったのだった。

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