第二十話
ミハエルは震えていた。彼が騎乗するブラフマーが降り立ったのは、俗にいう第零世代型超大型機人グレートマザーのコックピットブロック、通称コフィン。
「いまそこからだすよ、ギルバート」
通常であれば、超高濃度の源泉にさらされサルベージ不可能な体だが、四年間を解放軍の元で研究に費やしたミハエルは、自身とブラフマーの能力であれば独力でサルベージが可能であると踏んでいた。それに加えて、先日手に入れたドゥルガーの簒奪魔法。これさえあれば、その四年間の研究を投げ捨てても、サルベージ可能だというのがミハエルの出した結論だった。
(聖典から情報を取得、回路変更)
「【カーリー・ドゥルガー/遍く集う星光】」
ブラフマーの手から漆黒の銀河が溢れ出し、グレートマザーのコックピットブロックを包み込む。その時だった、ミハエルの眼前に光があふれ、中から夢にまで見たギルバートが姿を現したのは。
「ギル!」
「……ミハエル?」
「そうだ、俺だよ。会いたかった、ずっと君に会いたかったんだ」
「そうなの、しょうがないひとね……ふふ」
ギルバートはその手をミハエルへと伸ばすと、彼の頭を優しく包み込んだ。
「ああ……」
「ありがとう、ミハエル。私ずっと退屈していたの」
「え?」
「意識はあるのに体は動かせない、それってすごく嫌じゃない?」
「君は……」
「だからありがとう、本当に感謝しているわ」
ミハエルは思わずその手を振り払っていた。悪寒が、直観が彼に告げていたのだ。
「お前は誰だ!!」
「あは!?」
こいつはギルバートではないと……。