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レイドコンテンツ

 ジェネシスの世界に来てから18日目。ベオウルフを結成してから3日目。


 一昨日、シュバルツさんと情報をこよなく愛するアリアさんからの情報で、この世界――ジェネシスではレベルが30になると上級職へとクラスアップが出来ると言う心躍る情報を入手した俺は睡眠時間を更に削って、経験値稼ぎの日々に明け暮れた。


 そして今日……俺は王都のプレイヤー(もしくはジェネシスの世界)の中では初となるレベル30に達成したプレイヤーになった。


 ふぁ〜。ねみぃ……。流石に2日連続の徹夜はキツイや。


 今すぐにでもベットに飛び込んで眠りたい衝動に襲われるも、一応シュバルツさんとアリアさんへレベルアップの報告へ向かった。


 現在俺はチームハウスと言う施設でベオウルフのチームメンバーと共同生活をしている。チームハウスのイメージは学生寮の豪華版って感じかな? まぁ、アリアさんの小言はアレだけど……個室があるので宿屋での暮らしよりかは、かなりマシかな?


 現在ベオウルフにはチームメンバーが118名いる。チーム結成から3日目なのに118名だ。全てアリアさんがスカウトして来たプレイヤーだ。オンラインゲームの世界でもチームの様なコミュニティは先発の方が勧誘が容易だったとは言え……驚異的なスカウト能力と言えるだろう。


 トンッ! トンッ! トンッ!


「失礼しまーす! ブリッツです」


 シュバルツさんの待つ執務室のドアをノックすると、程なくして


「うむ。入っていいぞ」


 シュバルツさんの威厳ある声がドアの向こうから聞こえて来る。


「失礼しまーす!」


 部屋の中に入ると豪華な机に腰を掛けているシュバルツさんと、その斜め後ろで秘書のつもりなのか、直立不動しているアリアさんの姿が確認出来た。


「あ!? アリアさんもいたんですね。丁度良かったです。ついさっきレベル30になりました!」


「ほぉ。流石だ! ベオウルフが誇る勇者……ブリッツよ!」


 え? 俺勇者なんだ!?


「は、はぁ……」


 返答に困った俺は何となくの相槌を打つ。


「して……ブリッツよ。どのクラスにクラスアップするのかはもう決めたのか?」


「はい。義賊になろうかなと」


 アリアさんから貰った書物の情報によるとクラスアップ先となる盗賊の上級職は……


 トレジャーハンター

 洞窟攻略を生業としている。道具を巧みに扱い、冒険に役立つ各種スキルを身に付ける

 生命力◯精神力◯腕力◯耐久△敏捷◎魔力△神力△運☆

 暗殺者

 背後から忍び寄り致命的なダメージを与えるアタッカー

 生命力◯精神力△腕力◎耐久△敏捷☆魔力△神力×運◯

 忍者

 素早い動きで敵を撹乱する。忍術を扱うこともできる

 生命力◯精神力◯腕力◯耐久△敏捷☆魔力◯神力×運◯

 義賊

 ハイスペックな盗賊

 生命力◯精神力◯腕力◯耐久◯敏捷☆魔力△神力△運☆

 踊り子

 味方を元気付ける踊りでパーティーを支える

 生命力△精神力◯腕力◯耐久△敏捷◎魔力◯神力△運☆

 罠師

 罠を駆使して敵を撹乱する。様々な道具を作成できる

 生命力◯精神力◯腕力△耐久◯敏捷◯魔力◯神力◯運☆)


 以上の六種類であった。


 正直、忍者とアサシンにもかなり心惹かれた。義賊の決め手となったのは、俺の得意武器でもある短剣と弓を装備出来るクラスは義賊のみであったと言う点だ。


「そうか……義賊か。うむ! ブリッツよ! お主が義賊になる事をこのシュバルツが認可する!」


 ……え? シュバルツさんの認可いるの?!


 この世界ってクラスチェンジ出来ないのに……。


「はぁ……ありがとうございます」


 まぁ、認可してくれたので一応お礼は伝えた。


「シュバルツ様! 今回のブリッツの件を宣伝する事で更なるメンバーの拡充が図れます!」


「うむ。了解した。メンバーの拡充についても引き続きよろしく頼むぞ」


「え? アリアさん。まだメンバー増やすんですか?」


「ん? 当たり前でしょ?」


「いや……もうすでに118名ですよ? と言うかこの短期間でよくそれだけの人数をスカウト出来ましたね?」


「ふふっ。この世界に選ばれし王であるシュバルツ様のユニークスキルの情報を公開したらスカウトは容易よ。むしろ、選定している立場よ」


「あ!? なるほど!」


 シュバルツさんは確かにこの世界に選ばれた王なのかも知れない。

 何せ……"ユニークスキルを二種類保持している"唯一のプレイヤーだからね。しかもユニークスキルの名称が"王者の加護"と"王者の防壁"だもんな。確かに選ばれし王なのかも。

 ちなみに、王者の加護とは所属しているチームメンバー全員のステータスを10%向上させる。このユニークスキルの恩恵を餌にしてスカウトしてるのかな? もう一つのユニークスキルである王者の防壁は所属しているチームメンバーの人数に応じてシュバルツさんの防御力が高まるらしい。


 まぁ、チームメンバーの人数がシュバルツさんの強化に繋がるのであれば……チームメンバーの拡充は必須なのか。


 増えゆくチームメンバーの謎について納得出来たので、二人に挨拶を済ませて俺は自室へと戻ろうとすると……


「ブリッツ待って!」

「はい?」

 アリアさんに呼び止められた。


「少し試したいことがある。明朝9:00にチームハウス入り口前に集合ね」


「了解です」


 試したいことって何だろ?


 ダメだ……眠すぎて思考回路が停止している。


 俺は仮眠を取るために今度こそ自室へと向かったのであった。




 ◆




 ふぁ〜。よく寝た。


 今何時?


(23:20です)


 ……え?


 うわっ!? 寝過ぎた……。軽い仮眠のつもりが12時間以上寝ちゃったよ……。


 こんな時間だけど……どうしようかな? 今から冒険者ギルドに行ってクラスアップしようかなぁ……。


 悩んだ結果、目も冴えてたので冒険者ギルドへ向かう事にした。


 夜更けだというのに冒険者ギルドにはそこそこの数のプレイヤーが詰めかけていた。顔見知りのプレイヤーと軽い挨拶を交しながら3階にある女神の間へ向かった。


 女神の間に入ると薄毛の男性職員――ハイルさんとも軽い挨拶を交わして中央に鎮座してある女神の像に触れた。


 んー……クラスアップは二回目だけど、やっぱり緊張するな。


(汝はどのクラスを望みますか。

 汝は、"トレジャーハンター"、"暗殺者"、"忍者"、"義賊"、"踊り子"、"罠師"から選ぶことができます。

 汝がなりたいと思うクラスを強く念じなさい)


 壮大な女性の声が響く。


 "義賊"になりたいと強く念じた。


 女神の像と端末が強く光始める。


(おめでとうございます。汝は、"義賊"としての道を歩くことを認証されました。この希望溢れるジェネシスの大地にて、汝の冒険に幸が多くあらんことを)


 女神の像と端末の光が消え、女神の声も聞こえなくなった。


 俺は端末のステータスを確認してみると



 名前:ブリッツ

 クラス:盗賊(LV30)

 サブクラス:未設定


 生命力:448

 精神力:213

 腕力 :213

 耐久 :184

 敏捷 :329

 魔力 :155

 神力 :126

 運 :358


 攻撃力:427

 防御力:495


 所持金:27,390G


 装備品

 左手:炎の刃

 右手:黒鉄の短剣

 頭:黒鉄の鉢がね

 腕:黒鉄のリストバンド

 体:魔楼の軽鎧

 足:源平のすね当て

 装飾品:シーフズリング

 アクセサリー:

[盗賊スキル]

 アタックスティール

(攻撃を命中させた対象のアイテムを盗む)

 軽業

(敏捷が高まる)


 おぉ! ステータスが大幅に上がった!!


 しかもアタックスティールって……便利過ぎるだろ!!


 クラスアップの結果には大満足だ! ヤバイ……テンションが上がりすぎる!? このままアタックスティールの効果を試しついでに経験値稼ぎに行くしか!?


 意気揚々と女神の間を飛び出し、経験値――モンスターの待つ王都の外を目指して冒険者ギルドから出ると……


「おい! ブリッツどこに行くのだ?」


 ……え?


 偶然冒険者ギルドに居合わせていたアリアさんと鉢合わせた。


「こ、こんばんは! アリアさん! こんな時間に珍しいですね?」


「明日の準備をしていたのよ。ブリッツ明日の約束は覚えてるわよね?」


「勿論! えっと……」

「明朝9:00よ。遅刻は厳禁ね」

 アリアさんはニッコリと笑う。


「はい!」


 一気にテンションが爆下がりした俺はチームハウスへ戻り、明日に備えて就寝した。




 ◆




 翌朝。

 久し振りに充分な睡眠時間を取れたせいかスッキリとした朝を迎えた。軽いストレッチをして体をほぐすと、約束の時間に合わせてチームハウスの玄関へと向かった。


 チームハウスの玄関を抜けて外に出ると、すでに50名近くのチームメンバーが待機していた。


 多いな? こんな人数で挑めるレイド(多人数用)コンテンツなんてあったかな?


「おはよーっす!」

 首を傾げながらも見知ったチームメンバーに挨拶を交しながら、チームメンバーの群れの中へと溶け込んだ。


 程なくしてチームハウスの玄関からシュバルツさんとアリアさんが姿を現した。


「ベオウルフの同士諸君! おはよう!」


「「「おはようございます!」」」


 シュバルツさんが挨拶をすると、全員では無いが多くのチームメンバーか挨拶を返す。


「本日はこれよりベオウルフがクラン……もとい! チームとして初となるレイドコンテンツに挑む!!」


「「「おぉー!?」」」


 周囲からはレイドコンテンツと言う聞き慣れた単語に感嘆の声が漏れる。


「皆はリザードマンキングなる個体を知っているか?」


 ……リザードマンキング? あのべテス湿地帯にいる討伐推奨レベル36の巨大なリザードマンの事か?


 周囲のメンバーも俺と同じモンスターを想像したのか、ざわつく。


「静まれ!!」

 ざわつくメンバーにアリアさんが一喝する。


「ふむ。この様子だと皆も知っている様だな。これより我らベオウルフはリザードマンキングを討って出る!!」


「な!?」

「流石に無理じゃね?」

「レベル36じゃなかっけ?」

「ってかこの人数で挑めるのか?」


「皆が困惑する気持ちは分かるが……勝算はある! アリア! 説明を頼むぞ」


「はっ。静まれ! 今から私より今回のレイドコンテンツについて説明するわ。今回はここに集まったベオウルフの中でも選ばれし勇士60名でリザードマンキングを討つのよ! 今回はレベルが20を超えたメンバーのみで選定されているわ」


 へぇ……一応選定基準あるんだ。


「皆も知っている通り討伐推奨レベルはあくまでソロで戦う事を想定して設定されている数値よ。今回の討伐対象となるリザードマンキングのレベルは36だけど、パーティー推奨レベルなら33。小隊推奨レベルなら30まで落ちるわ」


 パーティー推奨レベルは四人パーティーでの平均レベルを現し、小隊推奨レベルは三パーティーの集合体……すなわち十二人の平均レベルを現している。


 一人なら36。四人なら33。12人なら30。……60人なら? 確かにレベルが20前後でも勝てそうな気はするな。


 しかし……それだと問題が一つ生じる。


「質問してもいいか?」

 全身をフルプレートで固めた男性が挙手をする。


「バンズね? 何かしら?」


「アリアさんの理屈で勝算があるのは理解した。しかし、60人で倒しても経験値を得れるのは……最大でも小隊単位のマックス人数である12人じゃないのか?」


 バンズが俺の懸念していた内容を質問してくれた。


「そうよ」


「それだと……48人が無駄骨になるんじゃねーの?」


「ふふっ。浅慮ね。確かに今回の戦いで直接恩恵を得られるのは12人だけよ。でもその12人は莫大な恩恵を受けて成長するわ! つまりベオウルフはチーム単位で急速に成長出来るのよ!」


「し、しかしそれ――」

「そして! その成長したメンバーが残りのメンバーをPL(パワーレベリング)するのよ。どう? これなら納得出来ないかしら?」


「そ、それなら……」


「私達はチームよ! 選ばれし王であるシュバルツ様の元に集いしプレイヤーが集まって出来たチームよ! 私達が優先する事は何かしら? 個人の成長? 違うでしょ! チームの……ベオウルフの成長よ!」

 怯むバンズをアリアさんが捲し立てる。


「ふっ。落ち着けアリア。バンズよ……チームの成長はいずれ個人の成長に繋がる。俺はお前達に約束したはずだ! ベオウルフにいる限り必ずお前達にトッププレイヤーとしての地位を約束すると!!」


「は、はい。す、すいませんでした……」


 圧倒的な威圧感を醸し出すシュバルツさんに押されてバンズは納得する形に収まった。


「ふっ。気にするな。お前達を導くのは王の宿命を課された俺の役目よ」


「シュバルツ様! ありがとうございます! 他の者は質問は無いのかしら?」

 アリアさんはシュバルツさんに深く頭を下げると、再度集まったチームメンバーの顔を見渡した。


 あんな後に質問出来るアイアンハートは誰も持ち合わせていなかったようだ。


 皆が静まった事を肯定として受け取ったのか、アリアさんは早速パーティー編成を指示。簡単な作戦会議を終わらせると、シュバルツさんを先頭にベオウルフのメンバー総勢60人でリザードマンキングの待つべテス湿地帯へと向かうのであった。







ごめんなさい……。

色々あって何かめっちゃスランプです。゜(゜´Д`゜)゜。

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