王都
ジェネシスの世界に来てから5日目。
俺は"王都ラベンドール"を目指して疾走していた。
なぜ、そんな事になったかと言うと……昨日の夜の出来事だ。
相変わらず昼夜経験値稼ぎに勤しみレベルも15になった日の夜。
ふぅ……最近はここら辺の敵の経験値じゃ物足りなくなって来たな。ねね? もっといい稼ぎ場ないの?
(マスターのレベルは10を超えております。北にある"王都ラベンドール"を目指して、辿り着いたら冒険者ギルドで冒険者登録を行う事が推奨されております)
へぇ……冒険者ギルドなんてあるんだ。登録するとどんなメリットがあるの?
(冒険者ギルドに登録すると、様々な恩恵を受ける事ができます。代表的なモノは、クエストの受注とクラスアップとなります)
……え? この世界にクラスアップなんてあるの?
(はい。レベル10を超えた開拓者様のであれば、冒険者登録をすれば冒険者ギルドに設置されている"女神の間"にてクラスアップの処理が可能となります)
うぁ……そういう大切な事はもっと早く言ってよ! ちなみに、どんなクラスになれるの?
(八種類の基本職から選択が可能です。マニュアルより該当項目をお答えします。
戦士
多くの武器を扱い、強靭な腕力で敵を粉砕するアタッカー
生命力◯精神力×腕力☆耐久◯敏捷△魔力×神力×運△
闘士
信じるものは己が肉体、無手にて素早く敵を葬るアタッカー
生命力☆精神力×腕力◎耐久△敏捷◎魔力×神力×運△
騎士
強固な装備を身に纏い、仲間を守る盾
生命力◎精神力△腕力◯耐久☆敏捷×魔力×神力△運△
僧侶
神秘の力にて、味方を癒すヒーラー
生命力◯精神力◯腕力◯耐久◯敏捷△魔力△神力☆運△
魔術師
強大な魔力の力にて、敵を殲滅するアタッカー
生命力△精神力☆腕力×耐久×敏捷△魔力☆神力△運×
盗賊
冒険に役立つ様々な特技を習得する万能職
生命力◯精神力△腕力◯耐久△敏捷☆魔力△神力△運◎
狩人
弓にて、敵を討つサブアタッカー
生命力◯精神力△腕力◎耐久△敏捷◎魔力△神力×運◯
従者
仲間の支援を何よりもの生き甲斐とする支援者
生命力◯精神力◎腕力△耐久◯敏捷◯魔力◯神力◯運△)
おぉ!? 結構種類あるんだ! ちなみに、この基本職の中で短剣と弓が得意なクラスとかある? 実は、その後短剣以外の剣や槍なども購入してみたが、最初の馴れもあるのか……どれもしっくりとこなかった。唯一気に入った武器は遠距離攻撃も可能な弓位であった。
(短剣は全てのクラスが装備可能となります。弓矢は戦士、盗賊、狩人が装備可能となります。短剣の扱いに秀でているクラスは盗賊。弓矢の扱いに秀でているクラスは狩人となります)
へぇ……なるほどね。敏捷至上主義の俺としてはインスピレーション的に惹かれたのは闘士か盗賊だけど、武器を考慮したら盗賊かな?
んじゃ、明日から王都目指してレッツラゴーだね!
こうして俺は王都を目指す事になった。
◆
王都へ目指す道中ではファンタジー世界では定番のゴブリンやコボルトと言った亜人種タイプのモンスターも出現したが、レベル15となった俺の敵では無かった。また、俺以外の開拓者とも数名出会ったがレベルは精々6〜10と低く、実力が釣り合わなかったので挨拶だけな留めて王都への旅路を急ぐ事にした。
暁の村を発ってから徒歩で5日目。
俺の目の前に大きな城壁が立ち塞がる。
ついに王都ラベンドールへと到着したのであった。
王都は四方を高い城壁に囲まれており、歩んできた街道の先は立派な門へと繋がっていた。門番が目を光らせる王都へと続く門には多くの人々が行き交っていた。馬に引かれた馬車に乗っている者もいれば、大きな鳥や蜥蜴などの動物に引かれている馬車も見える。
行き交う人々の流れに沿って城門を通り抜けると、暁の村とは比べる事も失礼な程の規模の街並みが広がっていた。王都の街中を行き交う人々を見ると人間以外の種族だろうか、長い耳が特徴的な整った顔立ちの人々や、引き締まった肉体で背の低いおっさん、猫耳……猫耳!? いや……猫耳だけじゃなくて犬耳や狐耳などを生やした人々……まさしく"ファンタジー世界"であった。
ねね? ……あの人ってエルフ? 長い耳が特徴的な整った人々を見ながらナビゲーターに尋ねる。
(はい)
おぉ!? ってことはあのおっさんは……今度は引き締まった肉体の背の低いおっさんを見る。
(はい。ドワーフです)
じゃあさ! あの猫耳の男性は?
(獣族です。ちなみに、となりの女性はハーフリングです)
おぉ!? あれって子供じゃないんだ!?
ねね! あれって全員ジェネシスの現地の人? それとも同じくジェネシスに喚ばれた人?
(両方存在しております)
へぇ! へぇ! へぇ! ジェネシスって初期種族もバラバラなんだ!?
目の前に広がるファンタジーの世界を一通り満喫した俺は当初の目的でもある冒険者ギルドへと向かうことにした。
ナビゲーターの指示に従って辿り着いた冒険者ギルドは女神をモチーフにした看板を掲げた5階建ての砦のような立派な建物であった。入り口の大きな扉は解放されていたので、そのまま中に進むと1階には多くの様々な種族の人々が詰め掛けており、熱気に包まれていた。
うぉ!? これって全員俺と同じくジェネシスに喚ばれた人?
(はい。カウンターにいる職員以外は全て開拓者です)
うっひょー!? 凄いな!
冒険者ギルド内を包み込む熱気に若干押されながらも、詰めかける人々を掻き分けて冒険者登録が出来るというカウンターへと突き進んだ。
「開拓者様、いらっしゃいませ。こちらは冒険者ギルド王都支部となります。まずは、こちらのカウンターで登録のお手続きをお願いします」
黒髪ロングのインテリジェンスな感じのお姉さんが対応してくれた。
「えっと……冒険者登録をしたいのですが、どうすればいいんですか?」
「登録は、こちらの台の上に端末をかざして頂ければ完了となります」
職員のお姉さんは笑顔で親切に教えてくれた。登録というからには色々な書類の書き込みがあるのかなと思ったが、端末をかざすだけという非常に楽な対応であった。
お姉さんの指示に従って台の上に端末をかざすと
端末は光り輝き、端末には新たに"ギルド"というアイコンが増えた。
「おめでとうございます。当ギルドの登録が完了致しました。ブリッツ様は"Eランク"の冒険者として登録されました。今後ギルドでのクエストを果たして頂ければより上位のランクに昇格致します。是非とも、多くのクエストを受けてジェネシスで快適な生活をお送り下さいませ」
一応"ギルド"のアイコンを押してみると
冒険者ランク E
ギルドポイント 0
受注クエスト なし
所属チーム 未所属
と記載されていた。
「クエストは、あちら右手奥のカウンターで受注可能となります。また、クラスアップを行う場合は3階にある"女神の間"にお進み下さい」
「ありがとうございます」
クエストカウンターや、ギルド入り口付近に設置されている掲示版も気にはなったが、とりあえずは当初の目的であるクラスアップを果たす為に階段を登って3階にある"女神の間"を目指した。
辿り着いた"女神の間"は石のレンガに囲まれており中央には大きな女神の像が設置されている神秘的な部屋であった。
キョロキョロと部屋の中を見渡していると、女神像の前に佇む少し髪の毛が寂しくなった年配の男性が声を掛けてきた。
「開拓者様。いらっしゃいませ。私はクラスアップの儀式を担当するハイルと申します。こちらでは、一定のレベルに到達した開拓者様のクラスアップをお手伝い致します。クラスは一度決めますと、二度と変更ができませんので、悔いのないよう慎重にお決め下さい」
薄毛の男性――ハイルは一息に定型文の様な挨拶をして来た。
「開拓者様。クラスアップを行いますか?」
肯定の返事を返すと
「それでは、こちらの女神の像に触れてなりたいクラスを念じて下さい」
俺は緊張しながらも女神の像に触れると……
(汝はどのクラスを望みますか。
汝は、"戦士"、"闘士"、"騎士"、"僧侶"、"魔術師"、"盗賊"、"狩人"、"従者"から選ぶことができます。
汝がなりたいと思うクラスを強く念じなさい)
頭に突然、ナビゲーターの声とは違う、壮大な女性の声が響く。
俺は"盗賊"になりたいと強く念じた。
女神の像と端末が突然強く光始めた。
(おめでとうございます。汝は、"盗賊"としての路みちを歩くことを認証されました。この希望溢れるジェネシスの大地にて、汝の冒険に幸が多くあらんことを)
女神の像と端末の光が消え、女神の声も聞こえなくなった。
俺は端末のステータスを確認してみると
名前:ブリッツ
クラス:盗賊(LV17)
サブクラス:未設定
生命力:260
精神力:90
腕力 :106
耐久 :58
敏捷 :186
魔力 :74
神力 :58
運 :154
攻撃力:236
防御力:162
所持金:7,390G
装備品
左手:精錬の刃
右手:
頭:鉢がね
腕:精錬のリストバンド
体:精錬の胸あて
足:精錬のすね当て
装飾品:
アクセサリー:
[盗賊スキル]
スティール
(対象のアイテムを盗む)
解錠
(対象の宝箱の鍵、罠を解除する)
盗賊基礎魔法習得
(盗賊が扱える魔法を習得できるようになる)
おぉ!? 敏捷が凄く上がった! 運も凄く上がった! 他のステータスも耐久以外は軒並みアップ!?
後は気になる点は……新スキルのスティールかな? これって、敵からアイテム盗めるんだよね?
(はい。成功率は対象とのレベル差によって異なりますが、素材や装備を盗む事が出来るスキルです)
ふむ……コレクター心をくすぐるな!
ねね? この"盗賊基礎魔法習得"ってスキル何だけど、どうやったら魔法を習得出来るの?
(魔法屋にて魔法書を購入することにより盗賊の基礎魔法が習得できるようになります)
へぇ……この世界では魔法は購入するのか。
うーん……何から手を付けようかな? これだけ大きな街だから武器屋も覗きたいし、魔法屋とか言う施設にも興味があるし、せっかく盗賊にクラスアップしたから敵とも戦いたいし……クエストとか言うのも一度は見とくべきだよな……困ったなぁ。
あれこれと思考しながら階段を降りて再び冒険者ギルドの一階へと辿り着き、ふと目の前にあった掲示版に目を向けると……
――!?
『シュバルツ様の情報求む!! アリア』
『"ベオウルフ"の同士よ再び集え!! アリア』
不意打ちの様な形で衝撃的な内容が書かれた二枚の張り紙が目に入ったのであった。
次話は4/18(月)を予定しておりますm(_ _)m
ジェネシスオンラインver.1.02を読了済の読者様へ
次話以降から物語が加速して……20万字を目安に時系列が追いついて完結になればいいなぁと考えております。今回は物足りない内容だったかも知れませんが、お時間があればお付き合い宜しくお願い致しますm(_ _)m