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日常

「お!?」


 パソコンが受信した一通のメールに目が止まる。


 俺の名前は本田(ほんだ) (さとし)。今年3度目となる2年生を迎える22歳の大学生だ。(よわい)22にして世の中の仕様を理解してしまった。


 小学生の頃は何もしなくても、年月と共に大人になって社会人になれると思っていたが……


 中学生、高校生、大学生となるにつれて、世の中は競争社会である事を学び、運動神経然(しか)り勉学然り……人には持って生まれた才能があり、どれだけ努力しても追いつけないモノがある現実を知った。


 俺はこのままどこかの会社の歯車としての人生を終えるのだろうか? いや……その歯車にさえなれるのか?


 そんな俺に救世主が現れた!


 その救世主とは……オンライゲームだ!


 元々ゲームが好きだった俺は大学生になり一人暮らしを始めてからとある雑誌で見かけたオンライゲーム……LO――ラストファンタジーオンライン――を始めた。


 LOとは登録者数1000万人、同接アカウント100万人を記録した国内最大規模のMMO(大規模多人数参加型オンラインロールプレイングゲーム)だ。


 LOの素晴らしさを語るなら、繊細で圧倒的な映像、多岐に渡るクラスシステム、無数に存在する装備品……など言い出せばキリはないが……一番の魅力はプレイしているユーザー数だろう。


 オンライゲームは家庭用ゲーム機のオフラインのゲームと違って、共に助け合い、時に競い合うプレイヤーがいる。


 そして、これが一番肝心な事だが……オンライゲームの世界では必ず努力が報われる。時間を費やして敵を倒せば経験値……そしてレベルと言う目に見える形で反映される。多少なりの運も絡むが、何度も難解なコンテンツに挑めばより強い装備品が手に入る。


 より高いレベルになり、より良い装備を手に入れれば……他者からの羨望を浴びれる。


 つまり! オンライゲームは努力は必ず報われる世界なのだ!!


 そんなオンライゲーム……LOの世界の虜になった俺は学生の本分も忘れ、日夜LOへとログインしていた。


 そんなある日。

 今日も大学の授業をサボってLOへログインしようとパソコンを立ち上げると、一通のメールを受信していた。


「本田 悟様



 あなたの願いを叶えます



 初めまして。株式会社GODと申します。

 この度、本田 悟様は弊社が新しく手掛けるオンラインゲーム 《ジェネシスオンライン》のβテスターに当選されました。

 ジェネシスオンラインは、ユーザーの皆様が望まれるリアルで自由で壮大な世界をご提供させていただきます。

 βテスターの抽出には過去にオンラインゲームの世界で一定以上の実績のあるユーザー様のみを選ばせて頂きました。


 本田様にもご満足頂ける世界をご用意致しましたので、是非ともご参加のほどよろしくお願い致します。


 ご参加して頂けるようでしたら、下記のURLをクリックして公式サイトよりユーザー登録の申請をお願い致します。


 http://genesis-online.com


 株式会社GOD」


 お!?


 ジェネシスオンライン? 株式会社GOD? 聞いたことが無いな。


 新作のオンライゲーム?


 なんだろ? 気になるけど……今はLOにログインだ!


 後で調べてみようと頭の片隅に記憶だけして、俺は馴れ親しんだLOの世界へログインした。




 ◆




 LOの世界での俺の名前は"ブリッツ"だ。気心の知れた友人(フレンド)は、時々"プリッツ"と呼んでからかうが……"プ"じゃなくて"ブ"だ。そこは間違えないで欲しい。見た目は茶髪のショートヘア。少年っぽい幼い顔立ちにキャラクターのクリエイトをしてある。

 プレイスタイルは敏捷特化のアタッカー。重たい一撃よりも手数で攻める感じだ。現在LOではレベルはすでにカンストしており、"ベオウルフ"と言う名前のサーバー最大手のクラン(コミュニティー)に所属している。


 ログインをすると昨日ログアウトしたクランハウスにいた。俺はログインすると直ぐにフレンドリストを確認する。誰がログインしていて、何をするかを決めるためだ。


 フレンドリストを眺めているとチャットウインドにチャットが流れる。


「ブリッツ! おはよう。今日は遅かったな」


「シュバルツさん。おはようございます。少し寝過ぎました」


 PCのモニターを見ると、一組の男女のキャラクターが映る。チャットの発言者はシュバルツさん。俺の所属するクラン"ベオウルフ"のリーダーだ。白銀に輝く重装な鎧を身に纏った金髪セミロングの騎士と言うより、皇帝の様な出で立ちの男性のキャラクターだ。


「昨日は遅かったしな。しょうがない」


「シュバルツ様! そうやってブリッツを甘やかさないで下さい!」


「あ!? アリアさんおはようございます」


 新たなチャットの発言者はアリアさん。"ベオウルフ"のサブリーダーだ。シュバルツさんの熱狂的な心棒者で皮肉とかでは無くシュバルツさんを様付で呼ぶ少し? 変わった女性だ。シュバルツさんと同じく白銀に輝く鎧を身に纏った赤髪の女性キャラクターだ。


「時にブリッツよ。ジェネシスオンラインと言うゲームを知っているか?」


「ジェネシスオンラインですか? 今朝方βテスト当選のメールが届いてましたよ」


 ひょっとして、見に覚えは無かったがシュバルツさんが勝手に応募したのだろうか? ……いや待て。シュバルツさんって俺のメールアドレスも本名も知らないよな?


「そうか! やはりブリッツも選ばれし者であったか!」


 ……??


「選ばれし者ですか?」


 シュバルツさんは物事を大仰として言う事が多い。選ばれし者とは、βテスターの抽選したという事だろうか?


「うむ。選ばれし者だ。詳しくはアリア説明を頼む」


「はい! 了解しました!! ブリッツはジェネシスオンラインのβ

 テストに選ばれる条件を知っているか?」


 βテストに選ばれる条件?


「抽選ですか?」


「本気? 相変わらず浅慮ね」


 俺はいつも貴方のその態度こそ本気? と心の中で思ってますよ。

 慣れとは恐ろしく、アリアさんのそんな態度はいちいち気にならなくなっていた。


「浅慮ですいません。答えを教えて下さい」


「ジェネシスオンラインのβテスターは過去にオンラインゲームの世界で一定以上の実績のあるユーザー様のみが選ばれるのよ。その実績はLOだけに留まらず、ありとあらゆるオンラインゲームが対象になってるわ」


「ふむふむ」


「私の掴んだ確かな情報によると、あらゆるオンラインゲームのトッププレイヤーにβテスト当選のメールが届いてるわね。ネットの世界ではジェネシスオンラインのβテストが届いている=確かなトッププレイヤーの証と見られるみたいね」


 へぇ。その確かな情報の情報源って……某掲示板か誰かのブログでしょ? と言いたいが、言えばどうなるかは目に見えてるので俺は感心して体を装った。


「それで、お二人はジェネシスオンラインのβテストに参加するのですか?」


「うむ。そのつもりだ。LOでは直近で大規模なアップデートも予定されてはおらぬ。暫く、プレイを休止しても我らの確固たる地位は揺らがないだろう」


「なるほど」


「アリアとブリッツを含めて……俺の把握してる限り我がベオウルフからは103名のプレイヤーにジェネシスオンラインのβテストの当選メールが届いている。ジェネシスオンラインの世界でも我らは再び集いベオウルフを結成する。そして、あらゆるオンラインゲームのトッププレイヤーを押し退け、かの世界でも覇を唱えるのも一興であろう」


 103名か……。ベオウルフの所属人数はクランの上限人数である600人だから、単純に考えて……6人に1人が当選してるのか。ベオウルフはLOきっての廃人クランだ。入隊試験もあれば……数日ログインしないだけで除隊させられる事もある。所属するメンバーは全員が一騎当千……という名の廃人だが、それでも6人に1人なのか……。


 ってか……俺もジェネシスオンラインのβテストに参加するの決定なの? 挙句にベオウルフへの加入も確定なんだ? まぁ、何やかんやで居心地は悪くないからいいんだけどね。


「はい! このアリア……ジェネシスオンラインでも誠心誠意シュバルツ様に尽くさせて頂きます!!」


「了解です!」


 恭しく答えるアリアさんとは対象的に、俺は軽く返答した。


 その後、シュバルツさんやアリアさんを含めたベオウルフのメンバー60名とレイドパーティーを組み、LO高難易度のレイドコンテンツをクリアした。


 うん。リーダー(シュバルツ)とサブリーダー(アリア)の性格に多少なりの癖はあるけど、やっぱりトッププレイヤーが集って挑むレイドコンテンツは最高に楽しいな! ……経験値やアイテム収集の効率もめっちゃいいしね!




 ◆




 ジェネシスオンラインβテストサービス開始当日。


 携帯のアラームで目を覚ました俺は寝ぼけ眼でPCを立ち上げる。


 ふわぁ〜……ねみぃ。


 結局昨日も遅くまでLOの世界に没頭してしまった。ジェネシスオンラインについての予備知識はほぼ0だけど……何かあったらネットサーファーのアリアさんから聞けばいいや。


 PCが立ち上がるとマウスを操作してメールソフトを立ち上げて、メールの送受信ボタンを5分置きにクリックする。


 お!?


『本田 悟様



 あなたの願いを叶えます



 ブリッツ様をジェネシスオンラインに迎え入れる準備が完了致しました。


 ジェネシスオンラインに来られる準備が整いましたら、あなたの願いを心に込めて、下記のYESをクリックして下さい。



 YES



 株式会社GOD』


 えっと……ログインしたらまずはベオウルフのグループチャットが登録してある携帯電話のSNSを立ち上げればいいんだっけ?


 正直言えば……序盤はソロで世界観を楽しんで経験値稼ぎを心置きなくしたいんだけどな。


 えっと……なになに? 願いを心に込めてYESをクリック?


 意味はないだろうけど、折角だから……


 楽しいゲームでありますように!!


 俺は願いを込めてYESをクリックした。


 この日を堺に俺の世界は日常から非日常へと変わった。


※評価、感想を甘口から辛口まで大募集です。面白い、つまらないでも一言でもいいのでご感想お待ちしております。

※一応確認はしてますが、誤字脱字が非常に多い作者なので発見したら感想かメッセージでご報告頂けたら幸いです。

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