一番近くの音
こんな人達と一緒に任務なんて大丈夫なんだろうか。
そんな俺の心配はすぐに解消されることになった。
黒犬さん達はあるツテを使って簡単に町に侵入した。
そのまま夜の町を歩いて、今は地下カジノにいる。
そして地下カジノに着いてからは、二人の雰囲気が一変していた。
鋭い目つきで辺りを警戒し、先程のおちゃらけた雰囲気は少しもない。
というか、別人のようだった。
「坊主。これが仕事だ」
二人が放つプレッシャーと緊迫感に俺が驚いていると、黒犬さんはそう言った。
白いスーツと黒いスーツ。
先ほどと違ってそのデカイ背中は正直カッコいい。
白熱さんはタバコなんか食わえてる。
片手には少し大きめのアタッシュケース。何が入っているんだろうか。
そんなことを思いながら、二階から騒がしい音がするカジノを見下ろす。
手すりにもたれかかり、黒犬さんは話し出した。
「さて、さっきすれ違った情報屋によると、ブツはVIPルームで賭けられているらしい。
すでに自衛軍の奴らも来てるらしいな。
ここのルールに従ってるってことは、無理やり回収できない理由があるはずだ。
とにかく、急がなきゃなんねぇ」
白熱さんはタバコの煙を吐き出して、くるりと態勢を入れ替える。
黒犬さんとは違い、手すりを背もたれにした。
「とりあえず、荒業でブツを破壊するか、穏便な手段でブツを破壊するか。
ブツを回収しに来てる自衛軍となると、おそらく最低大佐クラス。
こいつらを相手にするのは非常に面倒なわけだ。
温厚な手段といえばここのルールでブツを回収すること。正直死音くんがいればイカサマはし放題。
だが……」
白熱さんはニヤリと笑う。
黒犬さんもおそらく笑ってるだろう。ニヤリと、そんなニヒルなサイドエフェクトが聞こえてきそうだ。
「そう、だが、俺達はAnonymous。
ブツはVIPルームで賭けられているが、VIPルームにあるわけではない。
いかに奴らに見つからず、そして隙をついてブツをぶっ壊すか」
黒犬さんは懐のアノニマスマスクをチラつかせた。
「スリル満点じゃないか」
ーーー
明かりは黒犬さんが持つ懐中電灯のみ。
Anonymousの構成員。
俺。黒犬さん。白熱さん。
暗闇の中に、3つのアノニマスマスクがあった。
狭い、という文句は誰も言わない。
本来人の通る道ではないのだから狭いのは当たり前なのだ。
俺達は息を潜め、ゆっくりと天井裏の通気口を這って行く。
「どうだ?」
黒犬さんは懐中電灯をこちらに向ける。
その光で地図が明るく照らされた。
黒犬さんが大金を支払って情報屋から買ったここの地図だ。
俺は音の位置とその距離感を確かめながら、地図を見る。
地図にはこのフロアまでの範囲しか記されてない。
「……VIPルームの辺りから言い争いが聞こえます。多分ここの連中と自衛軍です。
イカサマだとかそんな話してます」
「ふーん。ブツの位置は割れたかい?」
「はい、もっと下ですね。人が集まって厳重に警備されてます。
エレベーターを使うことになりますね」
「ならここから降りないとダメか」
「今なら近くに誰もいないので、降りられますよ。
エレベーター付近に人が二人ほどいるので、そこで戦闘になるかもしれません」
「なら降りよう。
それにしても死音の索敵が万能過ぎてスリルがないな」
「……すいません」
「いや、いいんだ。これからだしね」
俺達はすでに一般人が立ち入れる場所にはいない。
ここまで俺が索敵して、全ての戦闘を回避してきたので、黒犬さんと白熱さんは退屈そうだった。
しかしそれでも黒犬さん達は、あえて危険を犯すことはしない。
この人達は最善手のスリルを求めているのだ。
先頭の黒犬さんは通気口の入り口をガコンと外し、真下の通路に降り立った。
結構高いな。
少し躊躇っていると、後ろの白熱さんが俺を押した。
俺も通路に着地し、白熱さんもそれに続く。
黒犬さんが目配せをしたので、俺は壁に手を当て耳を澄ました。
「……大丈夫です。気づかれてません」
音を消したりできたらいいのだが、それはまだできない。
そもそもそんなことができるかも分からない。
音なんだから色んなことが出来ると思うが、俺はまだ使いこなせていない。
訓練が必要だ。
しかし結構索敵は疲れるな。
聞く音を限定しないといけないのだ。
暴走するといけないので、一応抑制リングは付けてある。外せば多少楽になるはずだが、念のためだ。
辺りの音を警戒しながら、今度は俺が先頭を歩く。
そしてエレベーター付近に来ると、合図をして白熱さんと先頭を交代してもらった。
あの角の先にエレベーターがあるはずだ。
そして二人。おそらく警備だ。世間話をしている。
黒犬さんは、指を二本立て、その指をクイッと曲げる。
その合図を見て、白熱さんは頷いた。
白熱さんは角から先を覗く。
するとすぐに顔を引っ込めて、俺達の方を見た。
そして俺から地図をぶんどると、それをグシャグシャに丸め、白熱さんが手を開いた時には、その地図は灰になっていた。
灰はパラパラと地面に落ちていく。
「すばらしい。偽の地図を掴まされていた。
エレベーターがない」
普通のトーンでそう言った白熱さんに俺はドキッとした。
警備員に見つかってしまう……!
「誰かいるのか?」
案の定、そんな声と共に近づいてくる二つの足音。
俺は焦って構えたが、彼らの命はそこの角を曲がった所で尽きた。
ヒュン、とそんな音を立てて二人の警備の額に刺さったのは、ナイフ。
おそらく、後ろの黒犬さんが放ったモノだ。
白熱さんは、倒れかけた男達の首を掴み、そしてなるべく音を立てずゆっくりと地に下ろした。
ナイフって、あんなにあっさり頭に刺さるのか……。
唖然としていると、黒犬さんは俺の前に出て、灰になった地図を踏みつけた。
「偽の地図をあえて流していたか。
完全に偽の地図って訳じゃなかったみたいだが」
「じゃあこの二人は何を警備してたんですか?」
「部屋の見た目的に金庫じゃないかな。
とりあえず死音くん。誰か近づいてきていない?」
聞かれて、俺は耳を澄ます。
こちらに近づいてきている者はいない。
「ん?」
ふと、何かが下に遠ざかっていく音に気づいた。
ゴゥン、ゴゥン、そんな音だ。
この音は……。
「……エレベーター、見つけました」
「でかした」
「よし、連れて行ってくれ」
黒犬さんは俺の肩を叩いた。
俺は白熱さんの前に出て、案内しようと歩を進める。
しかし、そこであることに気づいた。
いつのまにか言い争いが聞こえなくなっているのだ。
俺は足を止めて、もう一度耳を澄ませてみた。
VIPルームの方向に神経を集中させる。
するとそこからは温厚になった声が聞こえてきた。
『例の物は今部下に取りに行かせている』
『交渉成立だ。今回の件は目を瞑っておいてやろう』
『金は?』
『この中だ』
……なるほど、これはまずい。
「……どうした死音? 何かあったか?」
「まずいですね。自衛軍にブツが渡りそうです」
「……なんだって?」
「カジノ側との交渉を成立させたみたいです」
白熱さんはマスクを一度つけ直した。
「急がないといけないみたいだ」
ーーー
俺達は昇降路の壁を伝って、慎重に下へと降りていた。
黒犬さん達は慣れた動きで降りていくが、俺はついていけない。
下を見下ろすと、真っ暗な闇が広がっていた。
エレベーターに動きはない。
黒犬さんたちに手を借りて、俺はなんとかエレベーターの真上に到着した。
「さて、ここからなわけだ」
息を潜める。
近づいてくる足音。数は……、三人か。
俺は3本指を立てて二人に言った。
「三人です」
「三人か。楽勝だな」
ゴゥンと音を立て、エレベーターの扉は開いた。
そして扉が閉まる音。
……来た。
そしてエレベーターが動き出す。
「死音。俺のイカした能力を教えてやる。これを持っててくれ」
「え?」
黒犬さんからアノニマスマスクを預けられる。
不思議に思ってその顔を見てみると、そこには黒く艶のある毛並みがあった。
目を丸くする。
これが黒犬さんの能力なのか……!
「強化系、暗殺犬。
黒犬のイカした能力さ」
白熱さんはそう言った。
真っ黒な狼男。
一目見た印象はそれだ。
しかし俺がその姿をマジマジと見ることはできなかった。
黒犬さんが動いたからだ。
暗殺犬と化した黒犬さんは、エレベーターの天井をみかんでも剥くかのように、ベリっとはがした。
そして中に降り立ったかと思えば、グチャという音と共に、一瞬で3つの呼吸音が消えた。
「終わったぞ。ブツも回収した」
下から黒犬さんの声が聞こえてくる。
覗いてみると、そこには3つの死体と元の姿に戻った黒犬さんがいた。
その片手には拳大の箱を掴んでいる。
それを見た白熱さんは、俺の手にあるアノニマスのマスクを取って、黒犬さんに投げつけた。
キャッチし、それを再び顔に装着する黒犬さん。
「案外余裕だったな」
上を見ると、昇降路の終着点が見え始めていた。
白熱さんがエレベーターの中に降りたのを見て、俺も同じように降りる。
「さて、これは今のうちにぶっ壊しておくか」
黒犬さんはそう言って箱を開けた。
中に入っていたのは、指輪。
俺はそれが何なのか、すでに聞かされていた。
そう、抑制リングの初代試作品だ。
俺の持つ抑制リングとはデザインが違うが、効力はほとんど同じ。
これが自衛軍に渡ると、”能力抑制”の技術が持ってかれるかもしれなかったのだ。
黒犬さんは、初代抑制リングを白熱さんに手渡す。
そして、白熱さんはその指輪を握りしめた。
しばらくすると、白熱さんは俺に見せつけるように手を開いた。
するとそこにはドロドロに溶けた元指輪があった。
白熱さんはポケットから取り出した透明ケースにそれを流し込む。
そして言った。
「任務完了。
さて、あとは帰るだけだ」
丁度、エレベーターが到着した。
エレベーターを出て、俺達は順調にカジノの出口へと向かっていた。
このまま気づかれずにここを出ることはもう余裕だろう。
VIPルームにいる誰もが、間抜けにも”例のモノ”の到着を待っている。
破壊されたことに気づくのは、もしかすると俺達が街を出てからかもしれない。
奴らは、白熱さんがエレベーターに置いていったアノニマスのマスクを見て、「やられた」と嘆くことだろう。
白熱さんはそんなことをするためだけにスペアマスクを任務に持っていくらしい。
俺は神経を集中させて、音を拾う。
「次の角の先に警備が二人います」
索敵は怠らない。
敵の位置を随時二人に告げて、俺達は着々と出口に近づいていた。
通気口を通っての逃亡は時間がかかりすぎるので、普通に通路を歩いていた。
今度の警備員も虚しく黒犬さんに殺されるのだ。
そう思って俺は先頭をバックタッチする。
前に出た黒犬さんが、先に角を曲がった。
俺と白熱さんはその手前で止まる。
小さな悲鳴と共に、すぐに二人の警備員の呼吸が消え……、いや、一人残っている……?
「ひぃぃ、たすけてください……! な、なんでもします……!」
「だまれ。次喋れば殺す」
黒犬さんのドスの効いた声が角の向こうから聞こえた。
片方の警備員は、すでに死んでいる。呼吸が聞こえない。
だが、なぜかもう一人は生きている。
今まで躊躇なく瞬殺していった黒犬さんが、……なぜ?
不思議に思って後ろの白熱さんに振り返る。
どうしてですか? という問いを視線で問いかけたが、無言で返された。
その瞳に感情は見えない。
すると、角の先から声が聞こえた。
「死音。こっちに来い」
俺?
訳が分からなかったが、俺は角を曲がって黒犬さんの元に行った。
黒犬さんはそこに立っていた。
その前には、腰を抜かして座り込む警備員がいる。
恐怖の表情を顔に張り付かせ、股間はびっしょり濡れていた。
その隣には肉塊と化した警備員。
俺が状況を飲み込めず突っ立っていると、黒犬さんは俺の足元にナイフを放った。
「実はな。お前をシェイドしたのには一応理由がある」
黒犬さんは、半身だけこちらに向けて話し出した。
「ロールのことだ。
ずっとパートナーを拒んでいたアイツだが、どういう風の吹き回しかお前のパートナーになった」
いきなりなんの話だ。
「……」
アノニマスマスクの向こう側には、本気の目があった。
「この警備員。
ここのカジノに雇われた一般人だ。なんの罪もない。
普通に暮らして、普通に生きている一般人。
死音、こいつはお前が殺せ」
「……」
なるほど、言いたいことはわかった。
「俺達が危惧してるのは、ただの高校生だったお前が日和って、ロールが本来ならありえない馬鹿な目に遭うことだ。
ロールは強いが、まだガキだ。大人にしか教えられないことがある。
俺達は悪の組織。
一人のために大勢を殺す。そしてその大勢の中には、無実の、なんの罪もない人達がたくさんいる」
「……言いたいことはわかります」
俺はそう言ったが、黒犬さんは構わず続けた。
「一人のために大勢を殺す。
こんな勧誘文に騙されてAnonymousに入ったお前が通らなければならない道だ。
一人のためじゃなくても。
なんの意味もない殺しを、これからお前にはやってもらわなければならない。
理由なんて必要ない。
殺せ」
俺はガタガタと震える警備員に視線を移した。
後ろの角の向こうからは、煙草をふかす音が聞こえた。
「まだ理由はあってもいいですか?」
「聞いてやる」
「生き抜くために、自分のために、人を殺します。
今はそう考えていたい」
俺は足元のナイフを拾う。
「及第点だ」と、黒犬さんは言った。
ナイフを強く握り、踏み出す。
警備員の瞳からは涙がぼろぼろと溢れ、必死に頭を地面にこすりつけて、声もなく俺に命乞いしていた。
心は痛む?
当たり前だ。
だが、俺は発現時にも人をたくさん殺してる。
Anonymousの悪行は知っていた。
そして、これはAnonymousに入ってから、ずっと考えてたことだ。
その答えがこんなに早く求められても、俺は答えなくてはならない。
どんな曲がりくねった理由があっても答えはイエス。
悪いが、俺の為に死んでくれ。
俺は警備員の首元にナイフを添え、掻っ切った。
その日、俺はマスクに初めての返り血を浴びた。
「おめでとう」なんて言葉を白熱さんに掛けられたのは、一生忘れないだろう。
ただ、感想を言うなら。
人を殺すのは案外簡単だった。
ーーー
「いやっほうううおおおおおお!!! いやいやいや死音くん! こんなに早く任務が終わるなんて思ってもいなかったよ!」
爆走。車がだ。
「あ゛ー! 任務後の解放感はたまらねぇ!! このまま飲みに行くか!?」
「オー! ジーニャス! 死音くんも来るだろォい!?」
任務後の二人の豹変っぷりがこれだ。
俺も人を殺したというのに、なぜか爽快な気分で外の景色を眺めていた。
「自衛軍の馬鹿共の騒ぎ声が聞こえるぜ!!」
「ハッハァ! もっとスピードあげろォ!! オウィェ!!」
もう俺達の街が見えてきている。
飛ばしすぎだ。
「オイオイオイ! 死音くんも叫んでみなよゥ!!」
そのノリを断ろうとしていた時だ。
俺の携帯が振動した。
もちろん、仕事用の方だ。プライベートのやつは家においてきてある。
そして、画面に表示されてあった文字に、俺は背筋が凍った。
『ロール』
「ちょ! ロールから電話がかかってきました! 静かにしてください!」
「なァッ!?」
「嘘だろ!?」
「どうしたらいいですか!?」
いや、無視か? この電話は無視するのが正しいのだろうか?
でも仕事用のケータイにかかってきている。
「白熱! スピード落とせぇ!」
「分かってる!」
キィィィというブレーキ音と共に、速度は急速に落ちていった。
白熱さんは車内に流れていた爆音を止め、即座に静寂を用意してくれた。
安全運転。
時速40km以下だ。
「……よし、出ていいぞ」
黒犬さんがオーケーサインを出す。
俺は心臓をバクバクならせながら電話に出た。
「……もしもし」
『もしもし死音? いまどこ?』
「……寝てたんだけど」
睡眠を妨害されたという、少しの苛立ちを演技する。
だが、次の言葉で俺は絶句することになった。
『ふーん。とりあえず言いつけを守らなかったお仕置きをしなきゃね。任務履歴を調べさせてもらったわ。非公開にしてたみたいだけど』
自分の心臓の音が聞こえる。
やばい。
なんとか落ち着きを取り戻そうとしていると、白熱さんが「あ、終わった」という言葉を漏らした。
白熱さんの視線の先は道。その道の先は街。
いや……人影?
そこにはロールが立っていた。
『この距離ならもう電話じゃなくても聞こえるわよね、死音』
ブツッと電話が切れた。
「やばいやばいやばいやばいやばい! どうする白熱!?」
「終わり。詰み。甘んじて罰を受けよう。
もう”捨て猫”の射程圏内だ」
白熱さんの声は震えていた。
「そうか……、ダメか」
車はそのままロールの近くに止まる。
ロールのそばにはバイクが停められてあった。あれで来たのか。
「三人とも降りてきなさい」
ロールの声が響き、俺達は車を降りた。
そしてロールの前に。
高身長の二人は、すごい威圧感を放つロールを見下ろすのに耐えかねたのか、そのうち正座していた。
俺はすでに正座している。
「とりあえず白熱と、黒犬。
手を出しなさい」
うつむく二人。その姿に任務中のカッコよさはなかった。
「早く出しなさい」
しぶしぶと片手を上げる二人。
何をされるんだろう、そう思って見ていると、ロールは二人の手に触れた。
ボキャァ、そんな音が聞こえ、二人の手が変な方向に曲がった。
「!?」
なんだ今のは!?
「あぎゃぁァ!」
「ぅグゥぅぅ!!」
二人の悲鳴が街道に響いた。
「アジトに帰ったら千薬さんに治してもらいなさい」
ロールはそう言うと、今度は俺に視線を向けた。
蛇に睨まれた蛙とはこのことだ。
俺は動けない。
あんなものを見せられて、ビビらないわけがないだろう。
視界の端で悶え苦しむ二人。
「死音」
「は、はい!」
「そんなにビクビクしないでよ。
一回目だからこれで許してあげる」
ロールは手を振りかぶった。
俺は目を瞑る。
「ッ!」
バシィィン。
何をされるかと思ってビクビクしていると、俺は頬を張られた。
強烈なビンタだったが、たかがビンタだ。
ジンジンと痛む頬を擦る。
「ずりぃぞ……! シオォン……!」
「クソぉ……! 同罪だぞォォ!」
黒犬さん達はそんなことを言う。
だが、ロールに一睨みされるとすぐに腕を抑えてうめきだした。
どうやら俺はこれで勘弁してもらえるみたいだ。
「なんかないの? 普通に心配したんだけど」
ロールは言った。
俺は顔を上げ、その目を見る。
「…………ごめん」
俺は頭を下げて謝る。
ロールは本気で俺を心配してくれてたみたいで、それが伝わってしまったのだ。
なんていうか、素直に申し訳なかった。
おしおきが軽かったという安心より、反省の方が少し大きい。
「パートナーでの初任務、私ちょっと楽しみにしてたのに、アンタが勝手なことしたせいで台無しだわ」
そんなこと言われると胸が痛くなる。
「……ごめん、ホントに」
「ふん……!
……帰るわよ。私の後ろに乗りなさい」
ロールはバイクにまたがって、ヘルメットを俺に投げ渡した。俺はそれをキャッチする。
そして、早く乗ってと言わんばかりにバイクをふかすロール。
腕の折れた黒犬さんと白熱さんに視線を流すと、白熱さんは指を二本立て、その指をクイッと曲げた。
「行け」のサインだ。