表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

悪意の紡ぎ手4

「全く、どうして魚人族(オアンネス)達から魔導書を回収しようと思っただけなのに、あんな面倒臭い目に僕達がハブッ」

死体が未だ転がる戦場を後にしようとした瞬間に、少年が流れる血に足を取られて思いっ切り後頭部を叩き付ける形ですっ転ぶ。

しかし、見た目には思いっ切り後頭部を打ち付けた様に見えた少年が何事も無かったかのようにむくりと起き上がる。

「あー、びっくりした。痛い筈だった。"肉体の保護"の呪文を使って無かったら間違い無く大怪我してた。」

少年が言った。

「あ〜あ。やっぱりやっちゃったね〜。だから気を付けるんだよってさっき言ったのにね〜。」

ゴートが、のんびりとした口調で言った。

「ええい、打ち所は悪かったが怪我した訳じゃないんだから良いだろうにッ」

少年が言い、

「大丈夫ですか〜。頭痛くないですか?頭擦ってあげますから、早く此方へ来て下さい」

リリが手招きする。

「いや、"肉体の保護"あったから大丈夫だし、お前も血溜まりの中で正座して慈愛に満ちた表情でこっちに手招きするんじゃない。その光景を見ているだけで、何か人間として大事な物を失ってしまいそうだ。」

少年の言っている事も無理からぬ事だ。

(少なくとも…見た目は麗しい女性が、まだ死体の転がってる血溜まりの中で正座して、こっちに微笑みながら手招きする光景とか、どんなホラーだよ。)

少年は1人考える。

「…?」

本当に意味が分からないのか。

リリがしきりに首を傾げている。

「待って下さいませ〜。今行きますから〜。」

背を向けて歩きだそうとすると、置いてきぼりにされたくないと言わんばかりに立ち上がったリリを見ると戦いの返り血が付いた手足や顔の一部だけでなく、血溜まりのなかで座った所為で身に付けているロングスカートまで、流れ出た鮮血で真赤に染まっていた。

「全く、もうちょい、状況考えような?ほれ、こっちに来いよ。ほら、水場があるからな。ここならちょっと拭いたり、手を洗ったり、出来るだろ。」

そう言うと、少年が持っていた布を水で濡らして、血の付いたリリの頬や手を、優しく拭いてやっていく。

「僕に拭ける所は拭いたから後で館に戻ったら水浴びでもしろよ。」

少年が一通り拭いた後に言う。

「うふふ、有難うございますね〜。」

リリが良い事があったと言わんばかりに声を弾ませ言う。

血溜まりを見なければ、何時も通りの風景と共に少年は3人に連れ、その場を後にした。

暫く洞窟内を歩き、転位魔方陣…父は"ターミナル"と呼んでいる…まで来た所で其処から数秒の時間で皇都パルフィナに戻って来る事が出来た。

「やっと…戻って来れた…てかやっぱりあそこまで行くと遠いなさっさとベッドに横になりたい。」

少年は文句を言いつつ魔方陣を降りる魔方陣は時間を短縮するが疲労は移動した時の数割程度ながら蓄積している。

「よーしゃー、父さん、僕達は帰って来たぞー。僕は休むからなー」

「ん、ソーマか、お疲れ様だったな。まぁ、回収してきたかどうかだけ確認させろ。」

少年と比べても、幾つかしか年の変わらない見た目の年若い青年が階段から降りる様に立っていた。

青年は一体何者なのか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ