表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

悪意の紡ぎ手3

僧侶は諦めた表情をした。

逃げることも、戦うことの出来るレベルを超えている事に気付いたのだろうだから…少年は引導を渡した。そうして歌う様に言った。

「ようこそ、そしてさようなら勇ましき者達…To nobles Welcome to to the ABYSS(高貴な者達よ。深淵にようこそ)」

彼等が敗れた理由はいくつか並べられる。

最も大きな理由は少年がここに居た事。

そんな些細な事だがその些細な事が彼らにとって致命的だった。

他の理由としては彼が伴っていた"物"の正体に彼らは最期まで気付く事が出来なかった事。

少年が伴っていた"物"はこの世界に生きる物に似通い過ぎていた。

その姿を言葉にするなら狼、スライム、黒山羊である。

どれもこれも、此処までこれる冒険者なら目を瞑っていても千匹位倒せる筈だった。

事実彼らもそう考えた、勇者と違い、彼等の仲間の戦士や、魔法使い、僧侶は異界の訪問者では無かった。

それ故に、見た目の差異を簡単に"受け入れて"しまっていた。

勇者は異界の訪問者だったが、この"世界"に戦いや、人々との交流の中で"世界"に順応していた故に考えすらしなかったが、それ故結果は予測とは異なり、勇者一行は見るも無残な亡骸を晒している。彼らは運が無く、そして現実は非情だった。

「あ、あはは、あはははははは。何だよ何だよ。この程度かよッ。使いてぇ呪文が有ったってのに脆過ぎるな。くくくく、残念だったなぁ、おい、自分の無力さを呪えよ。まぁ、もう聞こえないだろうけどな」

もう敵となる者が居ない事に気付いた少年が狂った様に嘲う。

「さてさて、暇潰しも出来たし、とっとと帰るかな。テイン、リリ、ゴート」

今まで狂った様に笑って居たのが嘘の様にぴたりと笑うのを止めて、それらに声を掛ける。

「はい、主上、お戻りになられますか?」

気が付くと三人の男女がいた。

「主上、ご無事で何よりです。ですが主上は普通の状態では楽勝というのをした事もないのですから無理はなさらぬ様に」

蒼い髪の青年…テイン・ハウンドドッグが諫める様に言った。

「主さま、主さまっ♪大丈夫ですか。お怪我はございませんか。剣をお預かりしますね、疲れてはいませんか、お館に戻りましたら、主様の為、すぐにお食事の用意しますね〜」

美女…リリ・ノーバディーが甘やかす感じに言う。

見た目は美人というより、可愛らしいのだが、身体中が返り血で血塗れである時点で色々と推して知るべしと少年は考える。

例え、誰かが万難を乗り越えて、リリの元にやってきたとしてもその人の為に諦める様に少年は説得するだろう。

理由は…好きだから…と言う訳では一切無く、敵でないだろう…人間…に限らないが…が、喧嘩やらなにやらで『ミンチよりひでぇや』するのを看過する訳にはいかないからだ。

少年も、戦闘中はかなり好戦的ながら、非戦闘中は割と常識的なのである。

「ご主人〜、お〜い怪我無いかい〜。何も無い所で怪我するのがご主人だからね〜。勝負も付いてた様なもんだしあんな事〜するもんじゃないよ〜」

のんびりとした口調の現れた三人のうちで最も年若そうな少年…ゴート・ストレイシープが言う

「黙らないとお前等で新しい魔法の実験するぞ?」もはや自分達以外に誰も生きている存在が居ないとはいえ、自分の恥やら、身内の過保護ぶりを大暴露するつもりはなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ