悪意の紡ぎ手
少年は戦っていた。
その少年の敵は人々の希望にして"世界"半分の絶望。人々に救いを与える者達"勇者"一行。
気負いも感慨ない。
何時もの様に記憶する価値も無い連中だ。
襲ってくる連中を叩き潰し、終わらせる。
少年に出来たのは、少しの護身程度の剣術と"ある種"の魔法、勇者一行から見ればはなで笑う程度のもの。しかし、勇者一行は"それら"に確実に、明らかに追い詰められていた。
「貴様ッ、何者だ…何故俺達相手に…」
敵は言い切る事が出来なかった。
突如として現れた少年がハウンドと呼ぶそれに勇者の体は鎧ごと引き裂かれ、噛み砕かれたからだ。
「こいつ、ただのスライムの癖にッ…」
戦士は煌めくスライムが攻撃しようとしている事に気付き、防御の為に盾を構える。しかし、煌めくスライムの様なそれの攻撃は一撃で盾だけと言わず鎧ごと戦士の体を防御や回避を許さずに"貫通"した。
スライムの柔軟な体が硬質化して形作られた槍が釣り上げられる様に持ち上がる。最早、戦士の手足に力の無い、屈強な筈の戦士の体をスライムはぞんざいに投げ捨てる。魔法使いが慌てて魔法を唱え始める。
煌めくスライムを倒し、戦局を好転させようとするが…