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once upon a time : クリック? クラック!
―――― 刻の円環は巡る。
一つの巨大な天輪と、幾多の小さき輪を戯れに交差させながら。
繰り返しと変化。
触れ逢う流れ。
分かたれた路。
その行く末を決定付ける鍵は、誰の掌にも等しく落とされ。
そして誰もが、自らの指にて鍵を握ることを知らず。
ただ天輪の担い手たちは、己が巡りを巡るのみ。
誰もが知っている、誰も知らない連鎖の伽。
―――― これは、刻みの物語。
+ + + + + + +
窓を開け放った。
まだ少し冷やかな、花の香を含んだ柔らかな風が、少女の長い銀糸の髪を梳く。
仰ぎ見るは、緑色の月光を湛えた夜空。
春の、夜。
月明かりの下、馨しき季節の花色をのせた唇に、彼女は笑みを浮かべた。
「みてなさいよ」
古の神々が住まうという、その紺青の天宮に挑むかのように。
―――― 絶対に、負けないんだから。