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親友と善人足り得る嘘吐き
「親友です」
「知ってる」
「お前の理解者です」
「知ってる」
「けれども、選択は異なってます」
「知ってる」
「つまんねーの」
「ああ。僕はその限りでしかありえない」
「それこそ私は知ってる。お前のその繊細も」
「繊細?僕は粗雑な方だけど」
「お前は粗雑じゃなくて、繊細に粗雑を演じてるだけなんだよ。わざわざ心削って粗雑になるぐらいなら、まだ単なる繊細で心を痛めてる方がマシだ」
「その自然な繊細すら心を削らずには出来やしないんだ」
「知ってる」
「はは」
「わははは」
「おっと」
「オイ」
「うん?」
「財布落としてるが」
「これは、いいや。拾ったら幸せになる財布」
「ほう。じゃあ、はい」
「この手は?」
「今、私がこの財布を拾ったな」
「ああ」
「私が幸せだな」
「はい」
「今、お前に渡すな」
「その通り」
「お前も幸せだ」
「……はは、ははは。」
「わははは」
「知ってる」
「ああ、知ってる」