ダンジョン管理人、今日もレビューに怯える
★☆☆☆☆
雑魚ばかりと思ったら、いきなり強敵が出てきた。
油断した俺も悪いけど、初心者にはおすすめできない。
宝箱も回復薬ばっかり。
しかも帰り道が長い。
管理人は反省してほしい。
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「ぐぬぬっ……。」
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★☆☆☆☆
山盛りクソダンジョン。
クソしかない
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「ぐぎぎっ!?」
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★★★☆☆
管理人のスライム愛を感じる。
女の子の服が溶ける演出、最高でした!
それなのに下着だけは溶けない。
この絶妙なこだわり、イイ!
次回はぜひ、エロトラップも実装してください。
でも、それ以外は普通。
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「やはり……。エロは偉大だな」
俺は腕を組み、しみじみと頷いた。
レビューは嘘をつかない。
もちろん、個人の好みはある。
理不尽な低評価もある。
意味不明な暴言もある。
それでも、多くの冒険者が口を揃えて言うことには、それなりの理由がある。
「つまり、利用者のニーズに応えることが大切なんだ」
俺はメモ帳アプリを開き、キーボードを叩く。
「改善案っと……。
一、宝箱を少し減らし、中身のグレードアップ。
一、ボス出現の演出を見直す。
一、帰り道を短縮。
一、服だけ溶けるスライムの増殖」
世は、大レビュー時代。
魔王様が繋げた『地球』という星の文化は、俺たちの世界を変えた。
冒険者がスマホを数回タップするだけで、ダンジョンの評価が決まり、管理人の査定まで変わる。
そんな理不尽な時代になっていた。
「いや……。エロを強くすると、十八禁規制を食らうんだよな」
俺は、最後の一行を見つめ、小さくため息をついた。
確かに評価は伸びる。
だが、魔王様のオーダーは、初心者向けダンジョンだ。
主な利用者は、学生の冒険者たち。
十八禁指定など、致命的でしかない。
「あいつのダンジョン、それで方向性が完全にキワモノ扱いになったし」
友人のダンジョンのレビューは、大絶賛で溢れている。
ランキングも高い。
一時は、週間ベスト100にも入った。
しかし、今では『大人の社交場』などと勝手なレッテルを貼られ、まともな冒険者は寄り付かなくなった。
さらに、ダンジョン経営の生命線とも言える冒険者によるダンジョンアタック実況も、禁止されてしまった。
そして友人は、減った収益を取り戻すため、さらなるエロ路線へ突き進んでいるらしい。
完全に悪循環である。
「……俺は侯爵家の六男様だぞ。
今でも親戚が集まるたびに肩身が狭いっていうのに、これ以上、笑い者になってたまるか」
ふと、先日の新年を祝う親族会での出来事を思い出す。
『俺のダンジョン、平均★4.3だけど、お前は?』
あの得意げな顔。
『えっ!? ……平均★2.1? マジで?』
見下すような笑み。
『向いてないんじゃない? 管理人なんて辞めて、中ボスに転職したら?』
周囲の親戚が苦笑いを浮かべる中、腹を抱えて笑っていた従兄弟の姿だけが、今でも鮮明に脳裏へ焼き付いている。
「クソ! クソクソクソ! あのクソがあああああっ!」
思わず机を叩く。
「俺は、グレーターデーモン様だぞ!」
キーボードが跳ね、モニターが揺れる。
「悪魔一級免許限定解除! 取得者わずか4%のエリート様だぞ!」
乙女の生き血100%を謳うエナジードリンクの缶が倒れた。
「お前なんて、ただのレッサーデーモンじゃねーか!」
机の上が赤く染まる。
ティッシュを箱から猛烈な勢いで何枚も引き抜き、机の上を拭く。
俺は、冷静になった。
七色に光る、お気に入りのゲーミングキーボードを壊すわけにはいかない。
「……んっ?」
ピコンッ、と通知音が鳴った。
マウスを動かし、更新ボタンを押す。
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★★★★★
ダンジョン初挑戦の私でもクリアできました。
スライムがHだったけど、よく見て戦えば大丈夫です。
ドキドキとワクワクをありがとうございました。
あと、案内役の妖狐のお兄さんが格好よかったです!
あの気だるい感じが最高!
また会いに行きます!
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「そうか、そうか……。」
俺は腕を組み、何度もうんうんと頷いた。
分かるやつには、分かるのだ。
俺様が、どれだけ初心者冒険者のことを考えているかが。
だが、反省もある。
最後の二行だ。
俺は、スマホへ手を伸ばした。
『へーい……。店長、なんすか?』
八コール目で、部下の妖狐が電話に出た。
勤務中だぞ。
思わず出かかった怒鳴り声を飲み込む。
「今日の朝礼で、もっとやる気を出せと言っただろ?」
『まあ……。はい』
「あれは、なしだ」
『……へっ!?』
こいつは、これで正解なのだ。
今見たレビューが、そう言っている。
「あと、有給申請は却下する」
『ちょっ!?』
電話の向こうで、妖狐の素っ頓狂な声が響いた。
「お前は今、ダンジョンの人気コンテンツだ。休ませるわけにはいかない」
経営者として当然の判断である。
『じゃあ、せめて給料を上げてくださいっすよ!』
切実な訴えだった。
確かに、彼の今月の残業時間は三十六時間を超えている。
今朝も歯医者に行きたいと嘆いていた。
「そんなお前にプレゼントだ」
『ごくりっ……。』
期待に満ちた息遣いが、受話器越しに聞こえる。
「やりがい!」
一瞬の沈黙。
『いらねーよ! そんなの! この悪魔!』
電話越しとは思えないほどの絶叫が鼓膜を震わせた。
失礼なやつめ。
ただの悪魔じゃない。
俺は、グレーターデーモン様だ。




